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第126回 グローバル市場が製造業に求める価値の変化について

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皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、グローバル市場が製造業に求める価値の変化についてお話をします。この価値の変化、どういうことかと言うと、戦後から現在に至るまで、グローバル市場が製造業に求めてきた価値というのは大きく変化をしています。このことをしっかりと理解をしなければ、いつまで経っても「技術力こそが最大の武器である」というふうな考え方からなかなか脱皮ができずにグローバル市場に展開をして、特に、新興国、アジア新興国に展開をして、なかなか成功できないというジレンマに陥ってしまいます。逆に、このことをしっかりと理解をすれば、今、グローバル市場が製造業に求めているものって一体何なんだろうと、1つ、技術というものは、もちろん製造業ですから根底にはあるんですが、今、この技術力以上に、グローバル市場が製造業に求めるものというのは別にあって、それを理解している企業だけが昨今のグローバル競争に勝ち抜いて、グローバル市場で成功していて、なかなかこの技術から脱皮できない日本企業だけがグローバル市場で大きな成果を出せていないということになっていますので、このグローバル市場における価値の変化について、今日は一緒に学んでいきましょう。

この図を使って説明をしていきますが、これはステージ1~ステージ3までありますけども、ステージ1というのは戦後ですね。戦後、焼け野原の中からわれわれの先人がこの国の奇跡的な経済成長をつくってきたわけですけども。まず、日本というのは何をやったかというと、日本国内でつくったものを日本国内で消費したんですよね、いろんなものを国内で消費したと。そのうち、日本国内でつくったものを欧米に輸出をしていった。当然そのタイミングでは、10年20年前に日本企業が中国企業安かろう、悪かろうとばかにしたように、欧米諸国からも日本企業はさんざんばかにされたんです。あの松下幸之助、パナソニックの松下幸之助ですら「マネ下電気」というふうに言われていた、そんな時代ですから、日本の自動車もそう、日本の食品を食べるなんていうのはあり得なかったし、日本の自動車、そういったものがみんな欧米からは安かろう悪かろうだったと。そこから、時代が進んで、欧米にももちろん認められて、最終的には「Japan as No.1」とまで言わしめたという時代が来るわけですけども、それがちょうどステージ2ですよね。この頃になると、なかなかプラザ合意があって、円の価値が急激に上がって、この頃になると、もう日本で製品や商品をつくっていても、これは欧米に輸出できないということになり、多くの日本企業は中国やASEANに製造拠点を移転していったというのがこのステージ2の話ですよね。

このステージ1もステージ2も基本的には技術力が重要視された時代なわけですよね。つまりは、つくる力が重要視された。もともと欧米がつくっていたものを、日本企業がより小さくより安くよりよくつくることができた。それによって、欧米からその座を奪っていったわけですよね。まさに、つくる力こそが正義の時代、技術力こそが正義の時代、こんな時代がステージ1、ステージ2であると。そして、地球を、マーケットを地球規模で見たときに、ターゲットとなる国というのは、日・欧・米の先進諸国だけだったわけですよね。これが、ステージ1、ステージ2の時代。

これで、日本はJapan as No.1とまで言われて、あの栄光の時代が、80年代90年代があったわけですよね。ここから、あれだけの、欧米からその座を奪ったわけですから、あれだけの栄誉からなかなか抜け出せない、脱皮できないというのが現在、失われた20年30年、言われますけども。このちょうど、ステージ2とステージ3の間でパラダイムシフトが起きた。パラダイムシフトというのは、今までこう思っていた価値が、別のものに変わっていくということをパラダイムシフトと言うんですけど。パラダイムシフトって一瞬で起きたりはしないんですよね。10年とか20年の時間軸の中で、今までAだと思っていたものが徐々に徐々にBに変わっていったりCに変わっていったりと、パラダイムシフトというのは10年20年単位で起きる。これがまさに日本の失われた20年30年だと思うんですが、このパラダイムシフトが起きてどうなったかと言うと、ステージ2で日本は生産拠点をアジアに移しましたから、アジアの企業でもいろんなものをつくれるようになったんですよね。当然、生産拠点を移転するということは技術が流出することになりますから、コア技術は日本にとどめておいたとしても、基本的には技術は流出していくと。また、合弁事業をつくったり、合弁会社をつくったりして、技術が流出をしていくと。もちろん、技術を教えたというのもあって。アジアの企業でもつくれるようになったと。要はどうなったかと言ったら、競争環境が全く回ったんですよね。ステージ1ステージ2は、欧米がつくっていたものを日本がよりよくして奪っていった。その中で今度は中国を中心としたアジアの企業でもつくれるようになってきたので、彼らも競争に参加しはじめていたわけですよね。欧米からその座を奪った後は日本企業だけで戦っていたところに、より安い労働力を活用した、中国や韓国や台湾の企業がそこに参入をしてきて、そして、多くのものが発明から長きにわたり時間が経っているので、目に見える違いがなくなってきた。要は日本製も中国製も、昔の中国製は安かろう悪かろうだったけど、今の中国製は全然いじゃん、これでいいじゃないということで、要は、つくる力よりも売る力のほうが重要視されてきたと。つまりはマーケティングの時代に突入してしまったんですよ。このステージ3で。そして、もう1つ、市場環境も大きく変わったと。ターゲットが先進国だけじゃなくて、プラス新興国が加わった。つまりは、新興国でものをつくるようになりますから。そうなったおお影で新興国が豊かになって、そして新興国が、今までマーケットではなかった新興国がマーケットに加わる。ですから、日・欧・米プラス新興国がマーケットになり、さらに競争環境も変わった。これだけ、競争環境と市場環境が変わってしまったのに、いまだに「技術がすべて」だと、「技術さえあれば世界で売れるんだ」と、この考えではなかなかグローバル市場では勝っていけない。技術というのは、これはプロセスのことであって、最終的にはその技術を生かして何を生み出すのかということが重要で、この生み出したものが消費者やユーザーにとって重要になってくるわけなので、技術が高くてもなかなか認められない、そんな時代が来てしまったと。ですので、グローバル市場が今、製造業に求める価値というのは、つくる力よりも売る力。これを一番象徴しているのが、Appleコンピュータですよね。Appleは、パソコンもiPhoneもiPadも何もかも自分たちではつくっていない。台湾のフォックスコンがそれをつくっている。これを見ると、まさにつくる力から売る力に変わってきたんだということは、もうだいぶ前から分かり得ていた。にもかかわらず、なかなか変われないというのがわれわれ日本企業の現状ではないでしょうか?今一度、この価値の源泉がどういうふうに変わっていったのかということをしっかり知って、これからの企業経営に生かしていく必要があると思います。

それでは、今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。