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第127回 アジア新興国市場 なぜ先進グローバル企業は早期進出の決断が出来るのか

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皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は先進的なグローバル企業が、なぜ新興国などの未開の地に進出をするという決断を早期に下すことができるのかと。なぜ、日本企業よりも早くそういった決断ができるのかということについてお話をします。

一般的に、先進的なグローバル企業は中国やASEANなどのアジア新興国市場に日本企業よりも20年は早く出たというふうに言われています。消費財の分野、業界ですと、1980年代からネスレやユニリーバ、P&GなどがASEANの市場、アジアの市場に出ている、進出している。一方で、日本企業というのは生産拠点としての進出はもちろん早かったんですが、アジア新興国をマーケットとして捉える進出はだいぶ遅れた。マーケットとして中国やASEANを市場として捉えた時期はだいたい2000年代前半というふうに言われています。しかし、本当の意味でこのアジア新興国市場をマーケットとして捉えるということがマストになってきて、そして、マストになってくるということは、人・もの・金・情報などの経営資源を一気に投下をしていきますので、そういったことを始めたのは本当にこの近年だというふうに思います。この20年のギャップ、差というのは、なぜ欧米の先進的なグローバル企業と日本企業の間に存在してしまうのか。ここをしっかりと理解しないと、この後待っているメコン経済圏やインド、そしてアフリカの市場に関しても、やはり日本は出遅れてしまい、アジア新興国と同じ、なかなかマーケットに入って先駆者利益を取っていくということができなくなってしまう。一方で、この理由をしっかり学べば、中国やASEAN、アジア新興国市場で出遅れた失敗を次のインドやアフリカで取り戻せるかもしれない。そんなふうなことを考えながら今日はお話をしていきたいと思います。

同じ企業、同じ人間でなぜ欧米の先進的なグローバル企業は早く決められて、われわれ日本企業はなかなか決められないのか、ということなんですが、アジアでは時折日本のビジネスマンを「NATOだ」というふうに少し小ばかにする言い方がされることがあります。NATO、N、A、T、Oですね、これは「No Action Only Talk」の略なわけですけども、日本企業は結局、Action、行動はしないよね、しゃべるばっかりだよねということを非常に言われて、「日本企業はNATOだ、NATOだ」と。また、昔は、アジア新興国はもっともっと貧困であった時代は、日本企業が行くと、中国なんかもそうですけど、20年30年前なんていうのは横断幕が張られて「熱烈歓迎!」というような、「ぜひ来てください!」と、「私たちの工場見に来てください」「私たちの会社見に来てください」と、こんな歓迎をされたわけですけども、最近では、「もう来ないで」と、「何しに来るの?」と、「どうせ決めないんでしょう?」というようなことを言われるケースが非常に多い。例えば、シリコンバレーと並んで、深センなどは、今、ITテクノロジー系のテンセントを中心に非常に先進的な町になっていますが、そういったところにシリコンバレーの企業を見て回るような、同じようなツアーを組んで日本企業はたくさん行くわけなんですけども、最近はもう、来ても何も決めないで、ただ、勉強して話を聞いて帰っていく。日本企業から何か話をするわけでもなく、ただひたすら聞いて、「すごいな。うわー、こんなのなんだ。すごいな」と言って帰っていく。特段、投資をするわけでもなし、一緒に何か事業するわけでもなしと。「もう、日本企業来ないでくれ」と、「来るんだったら手間なのでお金払ってくれ」と、「ツアー代払ってくれ」みたいなことを言われてたりもするぐらいに決めないと。私も仕事柄、ASEAN、アジアのディストリビューターと会うことが非常に多いんですが、やはり日本のメーカーは、「They are still sleeping.」だというふうに言われたりする。まだ寝ているんだと。結局、日本の自国のマーケットがあまりにもデカかったので、アジア新興国をマーケットとして捉えられずに寝ちゃっていると。Half sleepingとかって、そんなふうに言われて、日本のメーカーを少し小ばかにするというようなのはしょっちゅう耳にします。

じゃあ、問題は、なぜ先進グローバル企業は、そういったアジア新興国市場への進出が早期に決断できたのに、日本企業ができないのかということなんですが、これは私も知ったときに非常にびっくりしたんですが、日本企業というののアジア新興国進出って、だいたい本社にそんなに戦略がないんですよね。戦略がないまま駐在員をドーンと送り出して、「気合と根性で頑張れ」ということで送り出すと。送り出す側も、戦略がないくせに、「失敗するな。成功してこい」と。そして、送り出される側も、日本人は真面目ですから、「よし。成功しないと。自分は期待されているんだ」ということで行くわけですよね。そこで必死にもがくわけなんですが、今まで、国内の事業をやっていた人間が、いきなり海外に、海外の別の国をやっていた人間が行くケースもあるかもしれないですけど、いきなり海外に行って、未開の地に行って、しかも、先進国ではなくて新興国に行って、成功するわけがないんですよね。欧米の先進的なグローバル企業との一番の大きな差は、この失敗をする、成功をするという、この成功しに行く日本企業と、先進的なグローバル企業は失敗をしにいってるんですよね。彼らは成功しに行っていない。成功するつもりなんてさらさらなくて。とにかく誰よりも早く進出をして、誰よりも早く失敗をして、誰よりも早く学ぶということに価値があって、それを繰り返しやらないと成功は待っていないということを彼らはロジカルに理解をしている。だから早い決断ができる。これを知ったときに、私はもう、「うわ、すごいな」と。欧米の先進的なグローバル企業は感情論で仕事をしていなくて、未開の地に初めて行くので、成功する確率なんて低いのが当たり前なわけですよね。そうすると、いかに事前の調査を綿密にやって確度の高い仮説をつくって、その仮説を進出して検証をして、そして失敗をして、仮説をまたずらして学んでということをずっと繰り返しやっていく、これこそが本当の意味での成功を勝ち取る正しい手段であって。ただ、「どうしよう」と、早期に出たら失敗するので、まずは誰かが出るのを見て、そして、「おお、彼らは失敗したぞ」と、「やっぱ出なくていいな」と。誰かが成功したら、それを見て「自分も」と行って自分は失敗してしまう。こういうやり方ではなかなか日本は難しく、今後のアジア新興国だけじゃなくて、メコン経済圏、それから、インド、さらにはアフリカの市場が待っているわけですけども、そういった市場では、ぜひアジア新興国で過ちをおかしてしまった、早期進出ができなかった、先駆者メリットを得られなかったと、後発になってしまったということをクリアして、今一度しっかりと自分たちのこの早期進出ということを考えていただきたい。進出、早期に進出するというのは、成功するために進出するのではなくて、失敗をするために進出するということが非常に重要で、その失敗を重ねて重ねて、最後に成功があるんだと。ただ、失敗すると分かっていて、ドーンと失敗して、うわーっと帰ってきても何も学びがないので、いかに事前の調査をしっかりやって確度の高い仮説を持ったうえで早期に進出をして、その仮説があれば過ちを修正修正して間違った部分をノウハウとして吸収できますので、確度の高い仮説を持って早期に進出をするということが大切だというふうに思います。

それでは、今日は長くなりましたが、皆さんまた次回お会いいたしましょう。