第141回 アジア新興国市場 マーケティングの基本プロセスとは その1
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、マーケティングの基本プロセスについてお話をします。このマーケティングの基本プロセスというのは、マーケティングの父、フィリップ・コトラーが提唱したマーケティングの本当に基本的なベーシックなプロセスのことを指しています。この図の通りなんですが、「R」「STP」「MM」というふうにあって、それぞれいくつかの項目に分かれている。「R」に関しては、マクロ環境分析、ミクロ環境分析、そして、SWOT分析。そして、「STP」に関しては、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング。最後の「MM」に関しては、プロダクト、プライス、プレイス、プロモーションということで、ほぼアルファベットとカタカナで、一体何を言っているのかよく分からない、というのが多くの方の一番最初の印象ではないでしょうか。おそらくこの番組を見ている皆さまも、過去、かつてマーケティングの勉強をされていて、このことはすでにたぶん学んでいる。ただ、実生活の中で、というか、実際の仕事の中で、日本で仕事をするうえでマーケティングの基本プロセスを使うことというのはまずなくて。多くが、たぶん「MM」、4P、別名4Pというふうに言いますけども、この4Pを考えるということはやっても、「R」とか「STP」をやるということはほぼないんじゃないかなと。なぜないかと言うと、日本でやるマーケティングって、どちらかと言うと、過去、先人が築いてきた土台があって、自分たちは商品もあるし、プライスもだいたいこのレンジというのは決まっていて。そして、流通、中間流通もあって、小売もある、B2Cだったらですね。B2Bだったら代理店なのか、ディストリビューターなのか、そして、ユーザー企業もあって、知名度も信頼も、あらゆるものが揃っているうえで、じゃあ、消費者に対してどうやるの?と。B2Bだったら、対ユーザー企業に対してどうやるの?ということになるので、基本的にはこの「MM」しかあまり意識をしないんですね。ただ、実際に、いざグローバルに出るとなると、全く何もほぼないところ、もしくは、進出してからまだ間もないので、非常に脆弱な状態でマーケティングを組み立てていく、戦略を組み立てていく。そうなってくると、このマーケティングの業務プロセスが非常に重要で、私が参入戦略をつくる際に必ず使うのは、このマーケティングの基本プロセス。一方で、失敗している企業にヒアリングをすると、このマーケティングの基本プロセスができていないという企業がほぼ100%。逆に、成功している企業の成功要因をこのマーケティングの基本プロセスに当てはめていると、やっぱり非常に美しい、きれいなマーケティングの基本プロセスの各項目になっているので、これをいかに突き詰めていくかというのが、自分たちの失敗の確度を下げるし、成功の確度を上げて、参入戦略をよりいいものに仕上げていくということができると思います。
この、今お話をした、「R」「STP」「MM」と言っても、いまいちピンとこないので、次のスライドに切り替えますが、このスライドの通り、「R」「STP」「MM」って、ネットで引いていただければ、それぞれが何かという、いわゆるマーケティング的な解説はネットで見れると思うので、今日、私がお話をしたいのは、どういうふうに簡単に解釈をすればいいのか、ということをお話をしていきたいと思います。
まず、「R」からなんですけど、順番は常に「R」から。「R」をやって「STP」をやって「MM」をやるという順番になるんですが、「R」というのは、まだ海外に展開しない、日本にいるときに、これから行こうというときにやるリサーチの略で「R」なんですけども。これって、マクロ環境分析ではどういうことをしなきゃいけない。ミクロ環境分析ではどういうことをしなきゃいけない。これはネットを引けばいっぱい書いてあるので、どうぞそれを見てやってもらったらよろしいと思うんですが。ここで、まず概念としてお話をしたいのが、マクロ環境分析って一体何なの?ということなんですけど、これから自分たちが出ようとしている市場が一体どんな市場なのかということを可視化するプロセスを、このマクロ環境分析と言うんですよね。いわゆる、どういう人口動態なんだと、どういう所得層の人たちがどれぐらいの人口いて、どういうエリアにそれがいるんだと。その国の文化や習慣、商習慣、宗教などはどうなっているんだ、若年層の人口、高齢化はどういうふうに進んでいるんだ、法律はどうなんだ、レギュレーションどうなんだ、そういった、いわゆるこの市場って本当にどういう市場なの?ということを可視化する、これがマクロ環境分析で。まさに、もっとはっきり言うと、この市場は儲かる市場なんですか、儲からない市場なんですか、どれぐらい儲かるんですかということを見るのが、このマクロ環境分析なんですよね。ミクロ環境分析って、分かりやすく言うと、その市場にどんな敵がいるんですか?ということを見るのがミクロ環境分析。要は、先ほど言った、いろんな文化や習慣や経済環境やファンダメンタルズ含めて儲かる市場なのかどうなのかというのがあって。儲かる市場だったら、必ず欧米、もしくはローカルの競合がいるわけで。どんな競合がそこにいるんですかというのを見ていくのがこのミクロ環境分析。競合企業の戦闘能力を数字で測っていく。彼らはどういうような資金力で、どういうようなバックグラウンドを持って、どういう戦略で、どういう販売チャネルで、どう市場を押さえているのかということを可視化していく。どれだけ強い敵がそこにいるんだと。このSWOT分析というのが、じゃあ、その儲かる市場で強い敵がいるところに自分たちが進出したときに、果たして勝てるんですか、勝てないんですかということを見ていくのが、このまさにSWOT分析なわけですよね。これをしっかりやれば、自分たちがその市場に出て本当に勝てるのか、勝てないのか。要は、出ちゃいけない市場というのがあるわけですよね。もちろん、出るべき市場には優先順位を付けていかないといけないので。よくあるのが、ベトナムに出ましたと。「社長、なんでベトナムに出たんですか?」「いやー、ベトナムは、うちはもともと工場があったので出たんだ」と。工場って生産ですよね。販売というのは全く真逆の話なので、生産拠点になるということは安い労働力がそこにあるということですよね。むしろ、市場がまだ育っていない可能性が高いというのが、その生産拠点としてのメリットなので、そこで市場を獲りにいくというのは、実は相反することなので、本当にそれが正しいのかどうなのかというのは、この「R」で本当は見ていかないといけない。じゃあ、タイに出ましたと。「社長、なんでタイに出たんですか?」と。「タイはね、活気があって」って。今、アジア新興国、どこへ行ったって活気はあるので、活気で進出を決めるというのは、これまた間違いなので、しっかりと「R」をしていかないといけない。大企業でもそうなんですが、そういった理由でけっこう進出先を勝手に簡単に決めてしまっているというケースが非常に多い。そして、経営企画室だとか社長室が、もうすでに決まった決断に合わせて「R」をやっていくというようなことが非常に多いので、無理くり決まった方針に「R」を合わせていく。「R」の調査結果を合わせていく。そうではなくて、本当に客観的にフラットで見たときに、この国は進出すべきなのか、どうなんだと。自分たちは出て勝てるのか、勝てないのかということを見ていくというのが大変重要な「R」の要素です。
そして、次が「STP」なんですが、時間が来たようなので、一旦、今日はこれで終わりにして、この続きを次回また「STP」からやっていきたいと思いますので、今日は一旦、「R」の説明で終わりたいと思います。それでは、皆さん、また次回お会いいたしましょう。