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第150回 先進グローバル消費財メーカーから学ぶ3つのKSF その3

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、引き続き、先進グローバル消費財メーカーから学ぶ3つのキーサクセスファクターということで、今日第3回目になりますが、3つ目の主要成功要因についてお話をしたいと思います。

1つ目は、まず早期進出をしたと、そして、先駆者メリットを享受しているというお話をしました。この欧米の先進的な消費財メーカーが早期進出をできる、早期の決断をできる背景には、失敗をよしとする企業文化がしっかりあるんですよと、その風土を見習っていきましょうという話をしました。そして、2つ目のキーサクセスファクターというのは、彼らはアジア新興国市場、消費財メーカーですから最大のターゲットは中間層であるということがもう明確にあって、中間層ターゲティングから絶対にブレない。そして、このターゲットありきで戦略が組まれているので、常に中間層に向けてのProductだし、中間層に向けてのPriceだし、中間層に向けてのPlaceだし、中間層に向けてのPromotionが戦略として打たれていると。だから、中間層を獲得してシェアが上がっていくんだよという話をしました。

3つ目なんですけども、今日お話するこの3つ目は戦略的チャネル構築です。日本の消費財メーカーと欧米の先進的なグローバル消費財メーカーの3つ目の大きな違いは、このチャネル、ディストリビューションチャネル、販売チャネルのストラクチャー、それから中身の大きな違いです。この図は、欧米の先進的な、切り替えてもらって、先進的なグローバル消費財メーカーと日本の消費財メーカーの販売チャネルの違いを表しているものなんですが。日本の消費財メーカーって理由なき1カ国1ディストリビューター制を引くところというのが、企業が非常に多くて。自分たちの会社は20年30年前からここを使っていました。だから、今もここを使っていますと。その20年30年の中に何十人という担当が変わっていて、何が何だか、言ったら引継ぎでの情報以外はよく分かっていない。今のこの30年前に決めたディストリビューターがいいのか悪いのか、もしくは、競合に比べてどれぐらい勝っているのか劣っているのか、自分たちのディストリビューターには何が足りていて何が足りていないのか。そんなことも全く分からないまま、いや、30年前から使っているから、ここを今も使っているんですと。それが劣っているか勝っているか、他社と比べてどうなのか、業界のランキングどうなのか、そんなことは考えたこともありませんというのが、大概の場合。なぜ1社なのか、1社で本当にいいのかということもあまり考えられていなくて、ただ使ってきたからそうなんだと。

一方で、欧米の先進的なグローバル消費財メーカーは、やっぱり、明確にマーケットを2つに分けていて。MTと呼ばれるモダントレード、近代小売に関してはこのディストリビューター、もしくは、自社で直販をするというケースが多いですよね、自社で現地法人がある場合は。ない場合は、MTの得意なディストリビューターを使う。一方でTTに関しては、輸出でなかなかTTをやるというのは難しいので、現地法人がある場合は、やっぱりTTって数ですよね。ベトナムがMTの数が2,000に対して、TTが50万店ある。うち30万店が食品置けますと。インドネシアで一番MTが多い3万5,000店ですよ。そのうちの3万店はアルファマートとインドマレットが3万店あって。一方で、伝統小売って300万店以上あると。フィリピン80万店あると。そうなってくると1社のディストリビューターでディストリビューションを配荷するなんていうのはまず無理で、いかに複数のディストリビューターを使うかということがすごく重要。ベトナムでも、例えば、仮にMTだけを狙っても商売としてはプラスにはなっていかないんですが、現地法人がある場合は。仮にベトナムのような市場を、ハノイ、ホーチミン、ダナンと、上からハノイ、ダナン、ホーチミンとあったときに、マーケットの5割はホーチミン。そして3割がハノイ、1割がダナン、その他が1割という、だいたいこういう構成でなっていたときに、ハノイのディストリビューターをホーチミンで使うとか、ホーチミンのディストリビューターをハノイで使う、これはもう全然戦略としてはもうほぼ間違っていて。いかにその地域地域でディストリビューターを持たなきゃいけないか。また、ベトナムなんていうのは、ディストリビューターはセールス機能を持っていないディストリビューター、デリバリー機能しか持っていないところなんていうのはごまんとあるわけですよね。日本の感覚で言うと、ディストリビューターの機能としてはセールス機能とディストリビューション機能、いわゆるデリバリー機能のこの2つが合わさって初めてディストリビューターになるわけですけども、ベトナムなんかはデリバリーしか持っていないというディストリビューターが大半で、セールスの機能を持っているところなんて限られているわけですよね。そういうことを考えてディストリビューションチャネルをつくっていかないといけない。にもかかわらず、やっぱり日本の消費財メーカーというのは、理由なき1カ国1ディストリビューター制を引いている企業が本当に多い。

それに対して、欧米の企業というのはチャネルストラクチャーがものすごい美しい。例えば、P&Gなんていうのは、ASEANだとどこも6社ぐらい、6社~8社ぐらいを使っていくわけなんですけども、中堅ぐらいのところを6社~8社ぐらい使っていくんですけど、もともと彼らって40~50使っていたわけですよね。その中から精査をして最終的に今8社前後みたいなところに収まっている、P&Gパターンとわれわれは呼んでいますけども。一方で、ネスレ・リーバモデルと言って、ネスレとかユニリーバなんかは、100、200のディストリビューター、デリバリーを含めて使っていくわけですよね。そうやって細かく配荷をしていく。こういうチャネルのストラクチャーが先進グローバル消費財メーカーは非常に美しい。きめ細かにできている。なんでかと言うと、この番組の前回、前々回でも話したように、ターゲットが明確なんですよね。中間層をしっかりターゲットにしていて。そうすると、その中間層にリーチしている小売はどこだという話になるわけですよね。ターゲットはこの国のこの都市のこのエリアに住んでいる、年齢層が何歳~何歳で、どれぐらいの所得がある人がターゲットですというのが決まったら、じゃあ、そのターゲットが行く小売ってどこなんだというのがあって。その小売に置かなきゃ、ものは売れないので、MT・TTを含めてその小売に置くわけですよね。そうすると、今度はその小売に強いディストリビューターはどこなんだという話になるので、初めてここでチャネルがつくられると。

一方で日本企業の場合は、とにかく売りたい。主要所はああいう小売なんだ、ああいうところに売りたいですと。お宅売れますかと。売れます。じゃあ、お願いします。そう、下から決めていっちゃっているわけですよね。ディストリビューターから決めていっちゃっている。だから、チャネルが弱いわけですよね。A、B、Cという小売に入れたい。でも、Aは強いけど、B、Cで強くないとなったときに、ディストリビューターとしてBとCには入れてる実績がないんだとすると、このディストリビューターを何年使ったってBやCにはなかなか到達できないし、何年か使って待っている間に競合がBとCに商品を入れてしまうわけですよね。そうすると、得意不得意をしっかり見極めてディストリビューションネットワークをつくって、極力カニばらせないようにチャネルストラクチャーを組み立てていかないといけない。こういうところにあまり日本企業というのは、今まで過去、投資をしてきていないというのもあって。それが今まさに見直されていて、各社さん、ディストリビューションチャネルの再構築・再診断みたいな話を、依頼を弊社にもたくさんいただきますけども、そういう時期に今きていると。でも、とうの昔にこの先進的なグローバル消費財メーカーはディストリビューションチャネルの再構築・再診断というのをやっているので、やっぱりチャネルが強いというのは1つ大きな要因だと思います。

この3回目、3つ目の理由を今日お話しましたが、来週1度おさらいとして、来週というか次回ですね、またまとめの回を持ちたいと思いますので、今日はこれぐらいにしたいと思います。
それでは、皆さん、また次回お会いいたしましょう。