第183回 【Q&A】アジア新興国で成功するために最も重要なこととは?
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、弊社に寄せられた質問に対してお答えをしていく日ですので、答えていきたいと思います。今日の質問お願いします。今日の質問、はい。「新興国で成功するために最も重要なこととは?」ということで、消費財メーカーからの質問でございます。非常に唐突な質問で、これはたぶん、精神論的な話を聞いているのではなくて、戦略論的な話を聞いているんだと思いますので、ちょっとそっちの観点で回答していきたいなというふうに思います。非常に唐突に聞かれて、「新興国で成功するために最も重要なこととは何なんだ?」と、非常に唐突で、「えっ、そんなこと聞かれても、いろんな観点があるからね」というふうになってしまうんですけど、意外にすんなり、僕は今、入ってきていて。これ、僕、今までいろんな企業の支援をする中、日本企業ってここがもう少しうまくいけば、もっと新興国でも成功するのになとか、ここがこうなっていれば、もっといいのになということを非常に思うので。ちょっと戦略論的な話をすると、たぶん、両方お話しようかな。戦略論的な話と精神論的な話をすると。
まず戦略論的な話からすると、やっぱりこれはもう、ターゲティングと4Pとか4Cがすごく重要で、戦略論、マーケティング論というふうに言ったほうがいいかもしれないですけど、やっぱり新興国で消費財メーカーにとって一番重要なターゲットってもう中間層で、ここから絶対に戦略をブラさないということを、まずカチッと設定をしていくということはすごく重要で。消費財メーカーって、もうこれ100円200円ものを売っていますから、数の原理なんですよね。そうすると、いかにたくさんの人に、いかに早い頻度で、いかに繰り返し、いかに永遠に商品を買い続けてもらうかということがビジネスモデルの最大で唯一の肝で。そうすると、一番のマスマーケット、一番のボリュームゾーンを狙わないといけない、それが中間層で。たとえば、アジア新興国だと、それが30億人に拡大すると言われているわけですよね。アジア新興国だけじゃなくて、インドやアフリカなんていう、この先の市場も考えていくと、非常にこの中間層マーケットというのは重要で。ここからターゲットがずれるからよくない。欧米の先進的なグローバル企業と日本の企業の大きな違いって、ターゲットを設定して、そのターゲットに対して4Pをつくりあげていくのか、もしくは、もう自分たちなりの先進国で、自国で成功した4Pがあって、それをターゲットに当てようとするかという、この違いなんですよね。先進グローバル企業はターゲットを設定して、それに対して4Pを組み立てていく。例えば、ターゲットは中間層です。中間層であれば、中間層の求める商品を、中間層が賄える価格で、中間層が買いやすい売り場に並べて、中間層が手に取りやすい仕掛けをするということが、成功している企業は、戦略としてしっかりできていると。一方で、日本企業の場合は、自分たちはこういう商品で日本で実績があって、自分たちはこういう商品を日本でこういう金額で売っていて、自分たちは日本でこういう小売でこういうものを売っていて、自分たちは日本でこういうプロモーションをしてきたという、この大前提があって、これをあまりいじりたくない、動かしたくない、崩したくないというところから中間層ということを狙っていくので、気付くと中間層が上位中間層とか富裕層にずれちゃっていて。結局、非常にリミテッドな枠から出れなくなっているというのが日系の消費財メーカーの現状で。そこに自分たちはプレミアムなんだと、いい原材料を使って、高い技術力でいいものをつくっているんだから、高くて当たり前だと、市場が追いついてきたから買えばいいんだというような発想になってしまって、なかなかTraditional Tradeとか、いわゆる伝統的な小売の販売チャネルの構築というのが遅れたりするというのが大きな要因としてあるので。やっぱり、このターゲティングと4Pを順番を間違えない。4Pからターゲットじゃなくて、ターゲットから4Pであるということをしっかり考えるということと、あと、4Pと4C、2つの観点で組み立てるということをもう1回やる。成功していない会社って、必ずこの4Pのいずれかに問題が生じているので、これを一旦見直すということをやるべきだと思います。一方で、いわゆるグローバルで活躍しているような10大消費財メーカー、グローバルのですね、ネスレとか、ユニリーバとか、P&Gとか、ジェネラルミルズとか、コカ・コーラとか、ああいう会社は、もう完全にこのターゲティングと4Pが非常に明確。それが世界標準化されていて、世界標準化のベースがあって、それぞれの国で現地適合化されているので、非常に美しいモデルになっているというのが1つですね。これが戦略論とかマーケティング論的な観点でアジアで成功するために最も重要なことだと僕は信じています。
もう1つが、精神論的な話なんですが、やっぱり失敗をよしとする文化というのは非常に重要で、日本企業の場合、本社に戦略がないのに、現地に箱つくって、そこに兵隊のように駐在員を送り込んで、気合いと根性で何とかしろ、走りながら考えろと、本社に戦略はない、おまえらが考えるんだと、このスタンスなんですよね。一方で、権限とお金は、予算は与えないので、何も現地で決められない。なので、アジアではNATOとかってね、「No Action、Talk Only」とかというふうに揶揄されたりするわけですけど。やっぱり戦略が本社にないくせに、人を送り込んで、いわゆる失敗するなと、失敗したら日本に帰ってきて席がないぞみたいな、こういう海外展開をずっとやってきていて。そもそも日本で10年も20年も国内の事業に従事していた人が、海外に出ていきなり成功するわけないし、北米で、例えば、5年6年、もしくは10年やっていた人が、いきなりASEANという全く違う、真逆のマーケットに来て、じゃあ、そこで成功するかと言うと、それもナンセンスだし、同じ海外と言っても、北米とASEANとか、北米と中国じゃ全く違う市場なわけで。そこが非常に違うんじゃないかなと。新興国と先進国というのは違うので。本社が戦略を持っていないのに、属人的にやらせるという文化が非常によくなくて。一方で、先進的なグローバル企業ってどうしているかと言うと、誰よりも早く出て、誰よりも早く失敗をして、誰よりも早く学ぶということが、体質的に整っていて、失敗が価値だって分かっているわけですよね。だって、未開の誰もやったことがない地に入っていって、そこで成功するなんていうことは端からないわけですから、まず失敗をしないといけないと。その失敗を力にするというのは、ただ何も考えずにうわーっとぼけーっと出ていって失敗をして、それが、じゃあ、ノウハウになるかと言ったら絶対にならないので。いかに仮説をつくって、今ある情報で仮説をつくって、その仮説に応じて出ていって、そして失敗をするとこの仮説を調整するということができるので、これがまさにノウハウになるわけですよね。絶対に仮説を持たないといけない。仮説からずれるということが失敗なのかどうかと言うと、僕は失敗じゃないと思っていて、このずれた幅を調整するという行為がまさにノウハウになってくるわけで。これって、今日、明日で買える話じゃないわけですよね。私がなぜこういう仕事を20年近くやってこれているかと言うと、やっぱり長年の蓄積が価値に変わる、バリューに変わる、ケイパビリティに変わるということなので、それを、じゃあ、ゼロからつくっていくというのは、なかなか今の日本の消費財メーカーには厳しいので。これ、今、日本の消費財メーカーがこれをやるとすると、1つ、ゼロからやっていくということも、当然ね、ここから先、30年40年のことを考えたら重要なんだけども、今ないノウハウを外部を使って、今すぐ自分たちの会社に持ってくるということをやっぱりやらないといけない。ノウハウをお金で買う。時間をお金で買うということをしていかないと、やっぱりグローバル競争にとてもじゃないけど、自力でやっていたんじゃあ、追いつかないというのが、今の日本の消費財メーカーの現状だと思うので。別に自分の会社のセールスをしているわけじゃないですけども、もっともっと外部の力を借りる。私どもの会社だけじゃなくて、ほかにも選択肢、外資のコンサル会社や日本のシンクタンク、いろいろあるので、そういったところを使っていくということにもっともっと投資をする必要が、今の日本の消費財メーカーには、残念ながらあるんじゃないかなと。やっぱり、グローバルで見たときに、だいぶ遅れを取っているというふうに思います。
ちょっとだらだらしちゃいましたけど、こんな感じで終わりたいと思います。質問者のお役に立てていると幸いです。それでは、皆さん、また次回お会いいたしましょう。