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第202回 中国/ASEAN/インド 販売チャネル構築 契約交渉 その1

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、販売チャネル構築についてお話をしていきたいと思います。前回まで、販売チャネル構築の発掘選定についてお話をしてきましたが、今日から契約交渉についてお話をしていきたいと思います。

この契約交渉なんですが、ちょっとスライドを切り替えてもらって、2番のスライドを。この図の通りですけど、前回、いかに発掘選定をしていくか、網羅的にディストリビューターを発掘して、それを絶対評価と相対評価で絞り込んでいってくださいというお話をしましたが、この絞り込んでいくタイミングから、もう実は契約交渉って始まっていて。例えば、5社とか10社とかという、最終的なショートリストが残って、そこを絶対評価をして残ったところがそこで、そこを相対評価していくわけなんですけど、この相対評価をするときにスキルセットとマインドセットを見ていってくださいねという話を前回までしていて。

さらに、その先のお話をこれからするんですけど、どれか1社に決めるときに、契約してからその後の戦略を決めたりするのではなくて、契約をする前に、いかに契約後の戦略を握れるかということがすごく重要で。契約後に一気にロケットスタートをかける、契約と同時に初回の発注を取るというような、こういう契約交渉をしっかりしていかないといけなくて。この契約交渉、この図の契約交渉の非常に大きな役割としては3つぐらいあって。まずは契約内容の交渉ですよね、これ、ノンエクスクルーシブでいくのかエクスクルーシブでいくのか。日本の製造業は、非常に契約書の守りはしっかりしているので、いかに攻めの部分にオンプットできるかということは非常に重要で。例えば、目標数値をどういうふうに設定できるのか、ペナルティーはあるのか、ないのか。さらには、報奨金どうするのかみたいなことをしっかり組み込んでいくということは1つだし。2つ目が、契約後の戦略を具体的にどうするんですかと。日本の製造業の多くは、どちらかと言うと、「自分たちはつくる人、売るのはあなたたち」なので、売ることにあまり介在しないというケースが非常に多くて。「当然、日本は、だって、売るのはディストリビューターの仕事だから」という企業が多いんですが、これだとなかなかうまくいかなくて。ここの「契約した後、どういう戦略でマーケットシェアを広げていくの?」「どういう戦略でユーザーを広げていくの?」「どういう戦略で、B2Cなら小売を広げていくの?」「消費者広げていくの?」ということを両者でしっかり話さないといけない。それをやるための3つ目、「KPIをどうしていきますか?」「キーパフォーマンスインディケーター、どこに設置しますか?」ということをしっかり決めないと、なかなかこれ、契約した後に思った通りにいかない。思った通りにいかなくても、結局、売ることの戦略に介在をメーカーがしないと、何の対策も打てないんですよね。問題が起きたときに、ディストリビューターが、「こうで、ああで、そうで…」といろんなことを言ってきますと。それに対して、「じゃあ、こうしよう、ああしよう」と対策が全く打てないし、最終的にディストリビューターの言い訳は、「現地の景気が悪くなりました」か、「日本円の為替が上がりました。だから、売上が上がらないんです」と。この2つが言い訳にされちゃうんだとすると、なかなかビジネスをやっていても苦しいなということですし、うまく想定通りにいかないところにどうやって対策パッチを打っていくかということがビジネスだと思いますので、そういったことをやるためには、売ることにメーカー自身が介在をしていくということは非常に重要で、その契約交渉をしっかりするというのが今回のお話であると。

まず、多くの日本企業が、ちょっとスライドを3に替えてもらって、ディストリビューターと最初に契約交渉で話すときにやる話って、会社概要の話に毛の生えた話が結構多いんですよね。自分たちは何万人の従業員がいて、世界中に展開をしていて、自分たちの売上は何千億円、1兆円、何兆円ですと。自分たちは上場企業で、自分たちは品質が高くて何とかで。ぶっちゃけ、ディストリビューターは、もうそんなことは十分下調べしているし、よく分かっていて、そんなことよりもあなたたちのビジョンと戦略が聞きたいと、こう思っているわけですよね。過去にもいろんな日本のメーカーさんをディストリビューターに連れてきましたけども、ビジョンとストラテジーを語ったメーカーというのは、日本のメーカーというのはなかなかなくて。欧米の、一方で、メーカーを見ていると、やっぱり彼らがに語ることは、会社概要なんてホームページを見てくださいと。一番最初に語ることは、ビジョンですよね。そのビジョンを実現するための戦略がこうであるという、それを一緒にやりたいのがあなたたちで、あなたたちにはこういう役割を担ってほしいみたいなことを、非常に感情的に言っていく。ロジカルなんだけども、しっかり感情も乗っていて、それに非常に強く影響を受けて、ディストリビューターと馬が合っていくと、こういうのが一般的なので。やっぱりそういうやり方をしっかりしていかないといけないし、自分たちがこの国で何を実現したいのか。例えば、食品メーカーだったら、この国の貧困をこういうふうにしたいとか、この国の栄養事情をこう変えたいとか。菓子メーカーだと、この国の子どもたちの笑顔をこうつくりたいみたいな、まずビジョンがあるわけですよね。そのためには、やっぱりこれだけのストアカバレッジを上げないといけないので、MTだけじゃなくて、TTも含めて、こういう数のストアカバレッジを持って、われわれはこれぐらいのプロモーション投資をすることによって、これぐらいのインストアマーケットシェアを上げて、そして、マーケットシェアを何年までにはこれぐらいにしたい。売上を何年までにはこれぐらいにしたいみたいなことを、しっかりと戦略としてディストリビューターに語る。それに対して、ディストリビューターが、「この日本のメーカーは過去に会ったメーカーとは全く違う。こいつらとだったら一緒にやれるかもしれない」と思って、本当の力が意気投合していくわけで。彼らは、もうすでにほかのメーカーの商品を取り扱っているわけですよね。なので、これから取り扱いを始める新しい日本のメーカーよりも、もうすでに前からやっているメーカーのほうが、正直、大切なわけですよね。その大切なメーカーがいるにもかかわらず、新規の日本のメーカーを大切にする、よりキーマンをつけて、人をあてがって、投資をして、大切に育ててくれるというのは、やっぱりメーカー側がそれぐらいの熱量で接しないと、なかなかディストリビューターは動かない。ただ、一方で、ディストリビューターも本当に昭和な華僑の人たちが多くて、もちろん、感情だけではすべては動きませんけど、やっぱり思いをどう伝えるかっていうのがまだまだ重要な、そういう人たちでもあるので、熱量を伝えるということはすごく重要で。そんなことがなかなかうまくできていないなというのは、日々、日本のメーカーを見ていて思います。

次のスライド4に写してもらって、これは一般的に契約交渉のステップなんですけども。まず、「貴社が」というふうに書いておりますけども、日本のメーカーが自分たちのビジョンと参入戦略を先方にバーンとプレゼンしなきゃ駄目で、会社概要ぐらいの説明しかしないわけですよね。「これが商品です。品質がいいです。ものすごくいいんです。どうですか。ああですか。そうですか…」って、そんな話はどうでもよくて、ビジョンと戦略をまず先方にバーンとぶつける。それに対して、先方から必ずリプライがあります。「いや、われわれはこうしたほうがいいと思う。こうしたほうがいいと思う。ああするべきだ。こうするべきだ」。返ってこないディストリビューターは、もうそこまでで興味ないので、そこをいくら追いかけても、今、タイミングじゃないんです。もしかしたら、3年後はタイミングかもしれないけど、今、少なからずタイミングじゃない。これは社員と話していてそうなっていても駄目なので、必ず社長と話す。社員は興味ないけど社長は興味あるというケースがあるので、オーナー社長と話すということが前提ですね。ディストリビューターを絞り込んで、5社に絞り込んだ。5社のディストリビューターのオーナー社長と、この自分たちのビジョン、戦略の話をして、そこから3社のうちの2社ぐらいは「興味ない」と言って、「今はタイミングじゃない」と言って、ノーリプライで消えていきます。残った3社とどれだけ詰められるかというのがこの2番、3番で。向こうから返ってきた戦略をまた自分たちで検証して、「なるほど。彼らが言っていることは確かに正しい」なのか、「いやいや、そうじゃないな」ということを繰り返し、この作業こそが契約後の売上を決める非常に重要な濃い時間で。これがしっかり組み上がると、最終的には、日本側のメーカーは大きいですから、担当役員が出てきて、先方の社長といわゆる契約調印式みたいなことをやって、実際に契約合意という話の流れの4、5のステップになっていくと。そこで破断して、契約断念というケースもあるかもしれませんが、基本的にはこういう1から5の流れになってくる。

なので、重要なのは、いかに自分たちのビジョンと戦略をディストリビューターにしっかりぶつけるかと。それに対して彼らがまた熱量を返してくるので、それを受けてまた協議をして、それを契約までにどれだけ具体的に詰められるかということがすごく重要で。どうやって売るかということを、しっかり詰める。より細分化して具体的に詰めていく。これはもう、B2CでもB2Bでも一緒です。どういうユーザーに対して、どの小売を通じて売っていくんだと、B2Cならですね。B2Bなら、どの産業インダストリーのどのユーザーに売っていくんだと。そうすると、どういうシェア、どういう売上が得られるんだと、競合と比較してその戦略はどうなんだということをしっかり見ていくということが大変重要だと思います。

時間も来てしまいましたので、、今日はこれぐらいにしたいと思いますが、この契約交渉、また次回、続きをやりたいと思いますので。また次回お会いいたしましょう。