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第205回 【Q&A】中国/ASEAN/インド 伸び悩む海外売上を改善させたい

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、皆さんからの質問についてお答えをしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

それでは、質問をお願いします。今日の質問、「伸び悩む海外売上を改善させたい」ということで、菓子メーカーの方からの質問です。「早い国だと弊社では30年ほど前から国内の商社や問屋を活用し、また、一部の国では現地のディストリビューターと直接取引をし、海外販売を行っております。しかしながら、ここ10年の傾向を見てみると、一応は伸びているんですが、成長が伸び悩んでいるように感じます。この伸び悩みを改善し、海外売上を拡大したいのですが、どうすればよいでしょうか?」という質問ですね。大変いい質問で、これに近しい質問、過去にも確か受けたような気がして、この番組でもお答えしているような気がするんですが…。もう1回お答えをしていきたいなというふうに思います。

今回、菓子メーカーということで、比較的いろんな国にやっているということなので、そこそこ大手なんじゃないかなというふうに思います。菓子の業界、非常にドメスティックな業界であるというのは、1つあって。ただ、一方で海外に輸出しやすい商品でもあると。現地でつくっているケースもあれば、輸出をしているケースもあるし、混在をしているケースもあるし。まあまあ、日本の菓子というのは、世界的にも今ちょっとしたブームになっているので、非常にいいんじゃないかなと。アジア新興国でも同様にいいんじゃないかなと。今回は、「現状のディストリビューターでどうなんだ?」ということなんですけども。これ、まず1つあるのが、結論から先に申し上げると、30年前に決めたディストリビューターという、そのディストリビューターの戦闘能力を具体的に数値で把握をして可視化するということは非常に重要で。それがしっかり可視化をできて、自分たちの競合と比較して、その戦闘能力がどうなのかということが見れれば、このディストリビューターで本当にいいのかどうなのかということは見えてくるわけですよね。また、本当にいいのかどうなのかという、もう少し手前の話で、今、このディストリビューターがどうしなければいけないのかということも見えてくる。自分たちが狙っている置くべき小売にしっかり置けているのか、どうなのか。そして、それがしっかりマーチャンダイズされていて、それがしっかりセルアウトされているのか、ということを可視化をしていくと、今のディストリビューターに、何ができていて、何ができていないのか、ということが整理できる。これを整理しないと、なかなか前には進めないんじゃないかなというふうに思います。

30年前のお菓子系のディストリビューター、菓子系のディストリビューターというのは、食品系のディストリビューター、フード系のディストリビューター、中でも菓子に強いとか、そういうのがあるので、肉に強いところがいきなり菓子やりませんから、やっぱり菓子系のディストリビューターというのは菓子に強いんですよね。菓子に強いディストリビューターも、チョコレートに強かったり、スナックに強かったり、飴に強かったり、いろいろなので、その特徴も踏まえないといけない。自分たちがどういう菓子を売るのか、その菓子の種類によって、本当にこのディストリビューターは適しているの?どうなの?ということを見ないといけないし。

あと1つあるのが、日本のプリンシパル、つまりはメーカー側ですね。メーカーって、なかなか大規模な欧米の先進的な菓子メーカーみたいに大規模なプロモーションを打ったりとか、販売に自分たちも戦略から介在していったりとか、戦略に介在するからしっかりと自分たちもプロモーションも投資をしたりとか、ということをやらないんですよね。基本的には、「自分たちつくる人、売るのはあなた、お願いね」と、「今までやってきているんだから、どんどん売ってください」ということで、「なんで前年度超えていないの?」「なんで、なんで、なんで…?」ということで、どっちかと言うと、売ることの戦略には介在しないのに、お願いしますスタンスなのに、前年比よりも売ってくださいという、こういうスタンスで接しているので、ディストリビューター側もすべてをプリンシパルには言わないんですよね。情報のすべてを開示しないし。

あと、コンフリクトが起きるんですよね。どういうコンフリクトかと言うと、メーカーにとっては、もう売れれば売れるだけうれしいわけですよね。どんどん、どんどん、売ってほしいと。一方で、ディストリビューターにとっては、どうせ日本のメーカーはプロモーションの協力もある程度で決まっているし、年間、例えば、分からないですけど、1,500万円ぐらいしかプロモーション協力してくれないし、市場のことをよく分かっていないし、年に何回か来るぐらいなので、自分たちが最も利益率が高い、いわゆるストアカバレッジでとどめるんですよね。極端な話を言うと、もうTTはやらずにMTだけやると。なぜならば、MTは労力がかからない。労力がかからないというのは、TTほど労力がかからずに、最も利益率を確保した状態に保てる。要は、ストアカバレッジを増やそうと思うと、セールスの数を増やして、そして、それを日々動かして、オペレーションして、どんどん、どんどん、市場が大きくなっていくんですけども。メーカーから大した協力が得られないと分かっていると、そんなに積極的にストアカバレッジを伸ばすということをやるよりも、今築き上げたマーケットだけをしっかり守っていくほうが、よっぽど利益率がいいわけですよね。

そして、自分たちが、もし自分たちの経営資源を投資するんだったら、やっぱり別のメーカー、特に欧米の先進的なグローバルメーカーで、ちゃんと予算をつくってくれて投資をしてくれる、彼らがプロモーション投資をするので、自分たちが頑張ってストアカバレッジを増やしても増やしやすいし、増やした分だけ売れるという、こういう商品に、当然ながら、経営資源を割きたいですよね。市場のことをよく分かっていない、プロモーション投資とか、その他の協力的な、メーカーとしての協力が限定的な日本のメーカーの商品を本当に血眼になって積極的にやるよりも、もっといいメーカーの商品に自分たちの経営資源、人・もの・金・情報を突っ込んだほうが、当然、ROIが、Return On Investmentがいいので、そうなっちゃうわけなんですよね。なので、これって必ずしも、ディストリビューターだけの問題じゃなくて、日本のメーカーの問題というのもあって。やっぱり日本の菓子メーカーさん、どこを見ても非常に…、ユニ・チャームみたいな会社ないですよね。日本の菓子メーカーには、どんな大手でもね、残念ながら。そうすると、やっぱりああいうダイナミックな投資もできないし、戦略も特に持っていないし、基本的には問屋ビジネスにずっと体が慣れているので、自分たちの商品をバーン、いいものをつくるということは日本のメーカーですからやるわけですよね。いい原材料を使って、高い技術で、いいものをつくる。いいものをつくったものを問屋に押し込むと。問屋に押し込んだら、それを問屋が小売に配荷するという、このビジネスモデルなので。問屋の先の小売、消費者みたいなところに対して、日本だと消費者のインサイトとか、そういったものを非常に収集するのに、こと国境を越えると、結構思考停止みたいになってしまって、なかなか消費者の需要度とか、小売の需要度みたいなところは無視して、ひたすら商品を突っ込むみたいな、そんな状態になってしまっているので、ディストリビューター云々というよりかは、自分たちがメーカーとして本当にやるべきことがやれているのか、ということを1回整理するというのも1つ大きなポイントなんじゃないかなと。

もう一方で、ディストリビューターが本当に適しているのかということを見ないといけない。競合のディストリビューターと比較して、自分たちのディストリビューター、何が足りていて、何が足りていないのか。自分たちがリーチしたい小売って決まっているわけですよね。主要のMTは完全導入しないといけない。配荷しないといけない。それができているんですかと。自分たちのディストリビューターがすべての小売に配荷できているんですか。例えば、フィリピンとかだと、大きい小売って、SM、PUREGOLD、ロビンソンズ、ルスタンズ、こういったところに入っているのかどうかというのを、まずしっかり見ないといけない。いや、SMは入れているんだけども、PUREGOLDが入れていないとかね。であれば、PUREGOLDは入らないといけないし。やっぱり、マーキュリー・ドラッグの店舗もすごく重要だよねとか、コンビニも重要だよね、セブンイレブン重要だよねと。そしたら、コンビニに入れていない。そうすると、コンビニにチャネルがあるのか、ないのか。ないんだったら、やっぱり、コンビニ流通に関しては別のディストリビューターを持ってこないといけないし。そんなことを可視化をしていかないといけないので。まず、自分たちがメーカーとしてやるべきことがしっかりできているのかということと、自分たちのディストリビューターが本当に自分たちが実現しようとしていることをフィジカリーに満たせるディストリビューターなのかということをしっかり見るという、この2つが重要なんじゃないかなというふうに思います。

今、多くのメーカーが、チャネルの再構築を、今まさに、これ、B2C、B2B問わずやっておりますので、こういう課題認識を持てているということ自体が、僕は非常に素晴らしいことだと思うので、ぜひこの課題認識をそのままにせず、今言った2つの観点を少し細分化して検証してみてはいかがでしょうか。それでは今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。