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第237回 消費財メーカーにとってのベトナム市場

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、「消費財メーカーにとってのベトナム市場」ということでお話をしていきたいと思います。

結論から申し上げて、ベトナムの市場というのは大変ポテンシャルの高い市場です。一方で、ASEANの中でもやっぱり攻略の難易度が非常に高い市場で、多くの消費財メーカー、大手を含めて苦戦をしているという状況でございます。今日は、そういった大手の消費財メーカーの苦戦の実態をお話しながら、どういうポイントに気を付けていく必要があるのか、ということをベトナムの市場の特性と一緒にお話をしていきたいと思います。このことをしっかりと理解すれば、逆にベトナムの市場で、出る前から分かっているような失敗をせずに済むと、つまりは失敗のリスク、皆さんの失敗のリスクを大きく軽減できると思いますので、今日は消費財メーカーにとってのベトナム市場とは一体どういう市場なのかということについて一緒に学んでいきましょう。

まず、消費財メーカーにとってのベトナム市場、消費財っていろいろあると思うんですけども、いわゆる食品・飲料・菓子・日用品等のFMCGもそうですし、家電もそうですし、文具みたいなものもそうですし、化粧品みたいなものもそうですし、総じて消費財というふうにお話をしていきたいと思うんですが。まず、最大の特徴は、消費財の売り場となる小売店の数からお話をしていったほうがいいかなというふうに思うんですが、まず圧倒的に、近代小売と言われる、いわゆるPOSレジの設置をしてあるような、われわれが日本国内で慣れ親しんでいるようなスーパーマーケットとかハイパーマーケットとかコンビニエンスストア、ドラッグストアみたいなところがもう圧倒的にその数が少ないというのがベトナムの市場の特徴です。結論から言うと、コンビニを入れて3,000店舗ぐらいしかないというのがベトナムの現状。

これがASEANの中で、ASEAN6で比べたほうがいいと思うんですけど。ASEAN6というのは、シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナム、フィリピン、インドネシアの6カ国ですけども、SMT、シンガポール、マレーシア、タイ、先進ASEANと、VIP、ベトナム、インドネシア、フィリピンの新興ASEANで、そこにプラス、ミャンマー、カンボジア、ラオスのいわゆる後進ASEANと言われるメコン経済圏があるわけですけども、この真ん中に位置するのがベトナムなわけですよね。このベトナムは、ASEAN6でミャンマーとかカンボジアとかラオスというのは、もう基本的には消費財市場としてはまだ成り立っていないので、タイにすでに進出しているとか、ベトナムにすでに進出している企業がベトナムからミャンマーを狙うとか、タイからミャンマーを狙うと、こういうふうな市場なので、ASEAN6、SMTとVIPだけでまず比較をするということが非常に重要なんだけど。

まず、SMTとかって言うと、シンガポールなんていうのはほぼ小売は近代化されているし、タイもマレーシアも50%以上がもう小売は近代化されているので、基本的にはわれわれ日本の企業が慣れ親しんでいる近代小売で形成されている市場なんですよね。一方で、VIPというのはまだ2割ぐらいしか近代化、小売りの近代化が完了していないので。

ベトナムに関しては15%ぐらい、金額ベースで。店舗数ベースで言うともう99.9999%伝統小売の市場で、だいたい伝統小売が50万店ぐらい存在するんですね、ベトナム全土で。ベトナムというのは、北のハノイが首都ですけども、ハノイからホーチミンまで1,600キロぐらいあるわけで、真ん中にダナンというのがあって、非常に縦長の国なんですよね。ベトナム戦争の名残もあって、やっぱり北が勝ちましたから、北の出身の人たちが南の役所とかも治めているので、北の人が南で活躍はしやすいんだけど、南の人が北で活躍するというのはなかなか、まだまだ根強くしにくいのが残っているという、そんな市場で。その50万店ある伝統小売のうち、食品が置けるのが30万店ぐらいだったと思うんですけども、それぐらいありますと。これだけ縦長で50万店とか30万店とかっていう伝統小売。一方で、近代小売は3,000店舗しかないということは、これはどういうことかと言うと、近代小売だけ攻めていたんじゃ消費財メーカーは絶対に儲からないということなんですよね。仮に100%、配下率100%で3,000店舗に配荷ができたとしても、そこでのセルアウトの数、いわゆる週販、日販の数が相当数いかないと、現地法人とか現地に生産工場なんかを持っちゃうと、もう全くもって利益が上がらないという状態になりますから、これはだいぶ大変な状況ですねと。そんな企業は多くいます。基本的には向こうに生産工場を持って、向こうで現地生産を始めて、ディストリビューターを1社使ってないしは2社ぐらいを使ってやっているんだけども、なかなか伝統小売への配荷が進まずにマーケットシェアが上がらないという企業はごまんといて。近代小売のほうも、やっぱり他国の近代小売に比べると、ベトナムの近代小売ってまだまだ近代化が進みきっていないというところがあって。そういう意味ではやっぱり不十分だったりするんですよね。なので、消費財メーカーにとってはもう伝統小売、これはFMCGの話をしていますけど、FMCGで言うと、伝統小売でどれだけ勝負できるかということは非常に重要で。例えば、ベトナムで5割のシェアを持っているエースコックさんなんかは、もう完全にこの30万店をほぼ100%配荷しているという、そういう状態なので、非常にディストリビューション・ネットワークがしっかりしている。ネスレとか、ネスレなんかも150~200ぐらいのディストリビューター、小さなディストリビューターをたくさん使ってこの30万店をほぼ配荷できているというような状態なので。そういうディストリビューション・ネットワークをつくらないとなかなか厳しいというのが今のベトナムの市場ですと。

家電みたいなB2Cの場合はさすがに伝統小売で家電は売れませんから、基本的にはいわゆる家電量販店みたいなところになってくるわけですよね。なんですけど、やっぱりそこだけだとまだまだ数が少ないので、TT家電みたいな、家電のバージョンのTT版みたいなちっちゃいお店というのがあるんですけども、そういうところも攻略をしていかないといけないし。逆にベトナムだけでなかなかROIを上げるというのはちょっと家電の領域だと結構厳しかったりもするので。冷蔵庫の普及率とかもだいぶ上がってきていますけど、エアコンの普及率も。ただ、やっぱり大変苦しい市場なので、「なんでタイをやらずにベトナムをやっているの?」とか、「もっとほかにやる国あるでしょう?」みたいなところも出てきてしまうと思うので、また「サプライチェーンを含めてどうするの?」ということもたぶん考えていかないと、なかなかちょっと厳しいんじゃないかなという気はします。

あと、ベトナムで気を付けなきゃいけないのは、ディストリビューションが非常に特徴的で、ディストリビューターの業務というのは基本的にはセールスとデリバリーというこの2つの業務があって、むしろ日本なんかでもセールス寄りの業務が主になっているわけですよね、どうやって売っていくかという。デリバリーというのは基本的にはヤマトとか佐川の、いわゆる運送会社というところが担うわけなんですけども、ベトナムの場合はディストリビューターと言われる人たちがセールス機能を持っていないというケースが非常に多くて、基本的にはデリバリー。なんでこういう状況かと言うと…。信じられないですよね、日本で言うと、「デリバリーしかできないディストリビューターって、それは佐川とかヤマトと一緒じゃん」と、「運送会社じゃん」という話なんですけど、まさにその通りなんですよね。本当に、例えばFMCGでセールス機能を持っているようなディストリビューターって大手10社ぐらいしかないわけですよね。北で強いプータイとか、南で強いメサとか、P&Gのディストリビューションをやっていたりとかするわけなんですけど、そういうところしかやっぱりセールス機能を持っていなくて。
なんでそういうことになっているかと言うと、元々の国の成り立ちなんですけど、ベトナムってASEANの中で最もと言っていいぐらい好きな国なんですけど、元々は共産主義、元々はと言うか、今も共産主義で、基本的には20年30年前の中国もそうだったんですけど、いわゆる国営企業が工場を運営していて、どちらかと言うと、「つくったものをどうぞ買ってください」というよりかは、「つくってやったぞ、欲しいやつは取りにこい」という、そういうスタンスなわけで。元々はベトナムの企業もつくったと、つくってそれを売りに行くという商習慣というのはなくて、概念がなくて、どちらかと言うと、「つくったものがあるから、売りたいやつは買いに来なさい」と言って、問屋さんが工場に買いに来ていたんですよね。その文化があるので、これ、資本経済の国だと、われわれのいわゆる常識的な国だと、基本的につくった人が売りに行くと、「どうぞ買ってください」と、買った人がまた売りにいくという話ですけども。彼らの世界では逆で、つくった人のところに欲しい人が買いにいくという。また、買った人のところにまた別の欲しい人が買いに行くという、「買いに行く」ということが一般的なので、セールスをするという、こういう機能がそもそもなかったという、こういう歴史的背景があるので、そのままそうなってしまっていると。でも、徐々にセールスが重要であると、ディストリビューションの1つの役割なんだという認識を徐々には持ってきていますけども、まだまだやっぱりマイクロディストリビューションをやるような小さなディストリビューターとかって言うと、そういう機能はほとんどないので、そこは1つ日本企業を苦しめているポイントであるということ。

あと、近代小売が勝負じゃなくて、伝統小売の市場であるということと、その伝統小売を獲るためにはディストリビューション・ネットワークが重要だということ。ただ、そのディストリビューションもセールス機能が付いていないということが1つと。あと、国が縦長なので、1,600キロなので、「これって下手したらお隣の国のほうが近いじゃん」と。例えば、ホーチミン近郊に工場があって、これをハノイに売るって、「ハノイに商品を運ぶよりもお隣の国に商品を運んだほうが近いじゃん」もしくは「バンコクに運んだほうが近いじゃん」ということが実際に起きるわけですよね。そうすると、これは1国なんだけど、1,600キロも離れていたらこれは別の国だよねと。「どうやって本当に物流拠点を整備しますか」「どうやって市場のターゲティングをやりますか」「どうやって物流しますか」みたいな話になってきて。工場だって、やっぱり縦長の地域で伝統小売に本当に30万店に配荷できるようになってくると、ハノイの工場、ホーチミンの工場、ダナンの工場と、そこから商品がダーッといくような、こういうサプライチェーンを組んでいかないとなかなか難しいという、そういう問題もあるよというのがベトナム市場の非常に難しいところ。

ただ、一方で中間層も爆発的に増えているし、今後、将来にわたって非常に魅力的な市場。中間層が爆発的に増える、若い人口が爆発的に増えているというのは、これは市場としては本当に魅力的で。B2Cが伸びてくると、今度はB2Bの部品とかパーツをつくっているような、設備でもいいですけども、製造業にとっても魅力的な市場になっていくし。また、日本とベトナムの政府の関係も非常にいい関係を築いているので、今後もさらに魅力的な市場であるということは間違いないし。まだ十分エントリーとして、本当の意味での先駆者かと言うとそうじゃないかもしれませんけども、まだまだ十分戦える、勝負が決まっていない市場なので、これからしっかり参入をしてマーケットを獲っていけば、非常にいいタイミングなんじゃないかなと。これ以上遅くなると、逆にもう遅れを取ってしまうと思うんですが。非常にいい市場だと思うので、ベトナムというのは大変魅力的な、消費財メーカーにとって魅力的な市場だと思います。

以上になります。皆さん、また次回お会いいたしましょう。