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第238回 【Q&A】新たな国へ展開する際に何から始めれば良いか分からない

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。

今回の質問なんですが、ちょっと読みますね、「新たな国へ展開する際に何から始めていいのかが分からない」ということでございます。これは消費財メーカー、大手の消費財メーカーからの質問で。現状、大手の消費財メーカーですから、数カ国へ展開を行っていますよと。当然、現地に生産工場もあれば、現地に法人もありますと。輸出でやっている国もあると。マイナーな国は輸出でやって、結構しっかりとやらなきゃいけない国は現地に生産拠点を持って現地に販売拠点を持ってやっていると、そういうことですね。「今後、新たな国へ自社の商品を販売していくことを検討しています」と。どんどん、どんどん、海外展開を広めていこうというふうに検討しているんだけども。「今まで戦略構築ということをさほど意識せぬまま海外展開をしてきており、新たな国へ参入する際の戦略と言われても、正直、何をどうしていいのか分かりません。参入戦略を立てるためには具体的に何から始めたらいいのでしょうか?」というのが質問で。

これですね、別に大手でもそんなに珍しいことではなくて、結構普通にあることだと思います。今までそんなに「戦略」ということを意識せぬまま来た。特に、ここは消費財メーカーさんですよね。消費財メーカーなんかは、家電の消費財と、あと、食品とか飲料、FMCGと言われるような消費材と2つ大きく分かれると思うんですよね。消費財って日用品とか文具も含めてFMCG及びその周辺と、いわゆるエレクトロニクス系と、2つ消費財は大きくあって。家電の敗北って、まさに戦略が無きまま海外展開をしていて、生産拠点としての海外展開は、彼らは成功したんですよね。ただ、一方で生産拠点をアジアや中国に移した結果、当然、アジアや中国の企業でも同じようなものがつくれるようになり、それが最初はものまねで、安かろう悪かろうだったのが、技術の差がどんどん詰まっていって。いつしかハードからソフトの時代、アナログからデジタルの時代になったときに、言ったら、ハードに求められる品質の良さとか技術力よりも、そのハードの中で動くソフトウェアに重きが置かれたタイミングでやはり日本の企業というのは駆逐されていってしまった。いつしか中国企業に技術的に追いつかれ、追い抜かれたというのが今の状況だと思います。インターネットの誕生で多くのことが変わってしまった。結局、ものありきでずっと来たので、戦略というものをあんまりしっかり考えてこなかったというのが日本の家電の業界ではあって。自分たちには絶対的な自信があったわけですよね。

一方で、FMCGもいわゆるそんな状態の一歩手前ぐらいまで来ていて。やっぱり非常にドメスティック、食品も飲料も、菓子、日用品。こうして見てみると、確かにユニ・チャームとか、味の素とか、ヤクルトとか、サロンパスとか、ほんの一部の成功している企業というのはもちろんあるんですけども、多くがグローバル化に遅れを取っている。日本で大手の消費財メーカー、実名を言うと、なかなか僕も立場もあるのであれですけれども、皆さんよくご存じ、シャンプーのメーカー、ボディソープのメーカー、洗顔のメーカー、それから食品のメーカーもそうですけど、やっぱりなかなかグローバルでは勝てていない。グローバルで言ったらP&Gとか、ネスレとか、ユニリーバとか、マースとか、そういう、いわゆる競合、欧米の競合というのが、世界の10大消費財メーカーというのはそういうところが占めていて。これは時価総額でもマーケットシェアでも大きいわけですよね。売上でも当然大きい。利益でも大きい。そんな中、戦略ということを考えていかなきゃいけないという岐路に、今この消費財メーカーは立たされていて。ただ、今まで戦略を立てたこともないのに、正直、何から始めていいのか分からないって当然ですよね。なので、こういう質問は意外に多くて。

海外展開するときのフィジビリティスタディをどうつくっていけばいいかみたいな参考書というのはいっぱい出ているので、それを見てもらったらいいと思うんですけど。より即効性のある方法の話をしていくと、出るというときに、日本企業の多くの場合は、「今から新たな国に出る」と書いてありますけども、今出るわけですから後発なんですよね、確実に。アフリカであったって後発ですよ。アフリカにももうすでに欧米の先進的なグローバル企業は出ていますから。そうすると、後発であるということは、これラッキーと言えばラッキーで、いわゆる自分たちが学ぶケーススタディがすでにあるわけですよね。競合がすでに進出をしている。その競合の実態を可視化するというところをベースに戦略をつくるということができるわけですよね。

例えば、自分たちの競合がどういう組織体制で現地に進出しているのか、具体的には工場をつくっているのかつくってないのか、販売拠点はどこにあるんだ、営業マンはどれぐらいの人数を抱えていて、ディストリビューター、特にチャネル周りですよね、ディストリビューターはどういうところを何社抱えていて、どういう契約をしていて、どういう管理育成をしているんだ、そして、どういう小売にどのような営業をしているんだと、KPIは何で、どのようにモニタリング管理しているんだみたいなことを洗いざらい調べるわけですよね。そうすると、いわゆるメーカー、ディストリビューター、小売のこの流通のオペレーション周りに実態というのは完全に可視化することができる。一方で、消費者の需要度だって、これ可視化できるわけで。

戦略をつくるってアウトプットなんですよね。戦略というのは、戦略というアウトプットで、いいアウトプットを出せる、高いレベルでアウトプットを出せるということはどういうことかと言うと、やっぱり人よりも多くのインプットがあるということはもう絶対条件なんですよね。このインプットが少ないと、アウトプットもチームになっちゃうわけですよ。だって、知識が少ないんですもん。だから、私も、こんな失敗、行く前から分かってたじゃんみたいな失敗を日本企業はするんだけど、それってやっぱり行く前のインプットがあまりにも少なすぎる。日本企業は調査しなさ過ぎで。調査って、消費者調査して、消費者の半年ごとに変わる日本のマニアックな消費者の需要度を調べてとか、そういうことを言っているのではなくて、もっと産業的な調査、競合の可視化みたいなことを徹底的にやるべきで、そのインプットって、戦略をつくるうえでものすごい役に立つ。そのインプットがたくさんあればあるほど、理論上は戦略アウトプットの精度というのは高まるわけですよ。もちろん、この入れたインプットが、イコールそのまま戦略アウトプットになるかと言ったら、100入れたら100のアウトプットを出せるかと言うとそうじゃなくて。100のインプットを知識と経験で戦略というアウトプットに変えていくわけですよ。100を100に変えるのか、100を200に変えるのか、そういうものに変えていくわけですよね。だから、必ずしもインプットがあればいいアウトプットが描けるということではなくて。そこには知識と経験が必要なので、われわれみたいな専門家、コンサルタントというのが必要とされるわけなんですけども。そうやって競合のケーススタディをやっぱり可視化するということは、僕はこれから新たな国に行くということは後発なので、非常にいいんじゃないかな。彼らが過去、進出の中で何に失敗して、何に悩んで、そして、その結果、今どうやっているかというのがやっぱりベースなんですよね。それを最低限クリアしないと何もできないので、模倣をしろと言っているのではなくて、ある程度、やっぱり学ぶ、そこから独自の戦略に変えていくということをやっていくということがいいんじゃないかなというふうに思います。

フレームワークとしては3Cと4P、僕はこれをしっかりと使うということがよろしいんじゃないかな。あんまりマニアックなフレームワークを使っても意味ないので、3C分析と4P分析をしっかりやるということと。この番組でも再三お話をしてきましたけど、R-SMTP-MM。それが何なのかはネットで検索をしてもらったらいいと思うんですけども、最低限この最初のRをやれば、基本的に出てから気付いて、あー、失敗ということにはならない。Rをしっかりやれば、かなり高度な仮説を立てれる。この仮説というものがまさに戦略なわけで、この仮説があって、それを実行していくと、当然仮説からずれてくるんですけども、その仮説を修正しながらまた次の仮説を立てて前に進んでいくので、学びある失敗を繰り返すことによって勝つ戦略をつくれるということになりますから、ぜひリサーチをしっかりしていってもらえたらなというふうに思います。

それでは今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。