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第239回 【Q&A】海外売り上げを改善させたいがどうすれば良いか?

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、皆さんから寄せられた質問に対してお答えをしていきたいと思います。

今日の質問は「伸び悩む海外売上を改善させたい」ということで、ちょっと読みますね。お菓子メーカーさんからの質問でございます。「早い国だと30年ほど前から国内の商社や問屋を活用し、また一部の国によっては現地のディストリビューターと直接取引をし、海外販売を行っているが、ここ10年の傾向を見ると、一応は伸びているが、成長が伸び悩んでいるように感じます。この伸び悩みを改善し海外売上を拡大したいのですが、どうすればよいでしょうか」ということなんですが。このメーカーさんは、基本的に今輸出がほとんどでございまして、いわゆる現産現販みたいな、現地に工場を持って現地で販売するということはやっていないと。菓子メーカーは、意外に大手でもそういうことがしっかりできている会社ってまだ少なくて、非常にドメスティックな業界で。大手でもまだまだ輸出している国のほうが多かったりするんですよね。この質問の企業も比較的大手ではあります。上の中堅から下の大手ぐらいの企業なんですけども。30年ぐらい前からあると。

結局、結論から先に申し上げると、なぜ伸び悩むのかと言ったら、輸出ビジネスをしているからなんですよね。チャネルビジネスができていないということが最大の要因で。これは何を言っているかと言うと、輸出だから駄目なんですかと、現産現販しなきゃ駄目なんですかといったことを言っているんじゃなくて。輸出ビジネスって、僕が言っている輸出ビジネスは、ビジネスモデルとしては輸出で構わないんです。ただ、輸出ビジネスというのは、自分たちの日本の港から相手の国の港に商品を輸出して、もしくは問屋や乙仲に輸出してもらって、相手の港に着いたら、その先どういうインポーターがそれを輸入して、どういうディストリビューターにそれが渡って、つまりは中間流通業者がそれを買って、そして、どういう小売にどういうふうに並べられて、何SKU、どういう棚のどういうコーナーに並べられて、どういう消費者がそれを手に取って、買って、リピートしているのか、していないのかの、いわゆる最終セルアウトまでを完全に可視化したビジネス、これを僕は「チャネルビジネス」と呼んでいるんですよね。チャネルの先から先までをしっかり分かっている。

結局、自分たちの日本の港から相手の港に輸出するなんて、これはグローバルビジネスでも何でもなくて、日本の商社や問屋を使って輸出しているんだったら、まさにそれは国内取引じゃないのと。結局、日本の商社や問屋も、海外のインポーターさんに販売しているだけで、その先どういう中間流通を通じて、どういう小売に、どう並べられて、どんな消費者がそれを買っているかなんていうのは全く理解していないわけですよね。なので、確認してもそんなデータは上がってこないし、伝言ゲームで、聞いて聞いて聞いて、1カ月経ってようやく中途半端な情報が上がってくると、そういうレベルなわけなので。結局、菓子メーカーにとって最も重要な中間流通とか顧客というものを無視したビジネスを、僕は「輸出ビジネス」と呼んでいて。ビジネスモデル自体は輸出で構わないんです。輸出で構わないんだけども、輸出型の輸出ビジネスをするんじゃなくて、輸出型のチャネルビジネスをしなきゃ駄目だよねと。

チャネルビジネスって何かと言ったら、自分たちの商品がどういうインポーターに渡って、それがどういう中間流通を通じて、どういう小売に、どう置かれて、どういう消費者がそれを何を思って買って、リピートしているのか、していないのかみたいなことを全部可視化して、理解したうえで事業を進めるということをやれば、何に問題があるのかが分かるわけですよね。伸び悩んでいる理由が分からない。どうしたらいいのかって聞いているわけですから、この質問者は言ったら自分たちの課題が分かっていないわけですよね。なぜ課題が分からないかと言ったら、単純輸出しているだけだからなんですよね。自分たちの商品の中間流通や消費者のことまでしっかり見ていたら、問題がどこにあって、ボトルネックはどこで、どこをどう改善すれば直るのか、ということは分かるわけですから。これをやっていると、菓子メーカーだと、中国は別にして、ASEAN1カ国数億円で止まっちゃいますよね。これを突破できると、国によっては10億円、20億円ぐらいまでのところはしっかりいきます。菓子メーカーの菓子の単価で。これが20億円、30億円ぐらいになってくると、じゃあ、いよいよ工場投資しようかという判断を経営はできるわけなので。いきなり売れるかどうか分からないのに、ベトナムに工場をつくりました、さあ、売りましょうって、それで失敗しているメーカーさんはたくさんあるわけなので。まず輸出型で売っていくということは、もうこれは正しい判断。ただ、それを輸出型の輸出ビジネスをするんじゃなくて、輸出型のチャネルビジネスをしっかりやって、数億円じゃなくて数十億円を各国でしっかり売ると。それができれば次の現産現販という、さらに50億円、100億円を求めるビジネスに移行できるわけですから。そういうことをやっぱりしていかないとなかなか難しいのかなというふうに思います。

あと、輸出でやるということは、結局、関税が乗って日本で100円で売っているものが150円とか200円とか250円とかになるわけですよね。そうすると、やっぱり置ける小売って、どんどん、どんどん限られていくわけで、基本的には伝統小売に売るというのは難しいわけですから、狙う国とか決めないといけなくて。国を狙うのではなくて、都市を狙うんですよね。ASEANでもシンガポール、クアラルンプール、ジョホール、それから、バンコク、ホーチミン、ハノイとか、メトロマニラとか、セブとか、そういう都市を狙っていく戦略になるし、近代小売に限定して都市を攻める。タイを狙うんじゃなくて、バンコクをやるんですと。もっと言ったら、バンコクなんて、タイなんて、セブンイレブンなわけですよ、1万店のセブンイレブンやるんですとかっていう、もう小売ベースで決めていく。フィリピンだったら、SMとピュアゴールドとロビンソンズをやるんですよと。マーキュリードラッグのコンビニスペースも狙いましょうみたいな、そういうところに限られてくるわけなので。

そこで週販どれぐらい売ったらこの菓子がしっかり採算が取れるのか。輸出でやるということは、基本的には現地のディストリビューターがいて、キャッシュオンデリバリーですよね。キャッシュが先に入ってきて、キャッシュファースト、デリバリーがレイターなので、キャッシュオンデリバリーと言うんですけども。キャッシュオンデリバリーでやるので、売ったら売っただけ、コンテナ出荷すれば出荷するだけリスクはないわけですよ。しっかりキャッシュオンだけしておけば。なので、そういう意味では輸出というのはリスクがないので。ただ、大きな金額は狙えないですよね。やっぱり50億円、100億円、200億円を狙おうと思うと、やっぱり現産現販になってくるので。でも、輸出型のチャネルビジネスをやって、まずは数十億円でやらないと、工場投資の判断もボード(取締役会)ができないわけですから、そういう意味では登竜門としてしっかり通っていかないといけないのは確かなのかなというふうに思います。

この輸出のビジネスって、日本の問屋とか商社を使っていたら、菓子の場合、全く論外ですよね。日本の問屋とか商社は基本的には日系の匂いのする小売にしか商品を入れられませんから、例えば、日系スーパーとか、イオンとか、ベトナムのイオンには入るけど、結局、ローカルには入らないとかっていうことになるので、そういう市場を狙うんだったら使ったらいいですけども、基本的にはやっぱり直接現地のディストリビューターを捕まえて、そこを管理育成していくということを、どうせやらないといけないんですよ。そんなのずっと人任せになんかしてられないわけなので、やっぱりそこはしっかりやっていかないといけないし。

ディストリビューターで大きく売上は変わります。変なところを掴んだら、結局、駄目な相手といくらやっても駄目なんですよね。いかに良い相手を掴むかっていうことはすごく重要だし、また、でかいところが必ずしも良いとは限らない。自分たちが未熟なのに、そんなに大きなところを掴んでも相手にされないですよね。新しく入っていく。向こうは何十億っていろいろな欧米のブランドとかほかのブランドを売っているのに、何も分からない日本の企業がのこのこ入っていって、コンテナ1本買ってくださいみたいな商売をやったって相手にされないので。やっぱり今の現状のレベル感と一番マッチしたところがどこなのかということを判断していかないといけない。

よくあるのが、日本企業は、自分たちが今手の届く範囲でディストリビューターやパートナーを決めてしまうということをよくやるわけですよね。僕は出会い決めというふうに言っているんですけど、出会いで決めちゃうと。でも、そんなの、ディストリビューターの数なんて、1カ国、日本企業がまともに付き合えるところなんか10か20ですよ。菓子とか、フード、ノンフード、いわゆるFMCG、消費財周りで言ったらね。そうすると、それを全部可視化して、並べて比べて比較して、最終的にはすきルセットとマインドセットで見て、もうここの会社にしようとか、この人にしようというふうに決めていかないと。このA社のワンさんと組んだけど、実はB社のゲンさんのほうがもっと良かったとか、C社のタンさんのほうがもっと良かったなんていうことは全然あるわけで。そう思っても、なかなか、じゃあ、A社のワンさん、B社のゲンさんを切れるかと言ったら切れないんですよね。だから、やっぱりちゃんと時間をかけて、労力をかけて、ディストリビューターを選定するということをしっかりやっていかないといけないし。

逆に、ディストリビューターをしっかり選定しても、ディストリビューター任せにしちゃいけないよと。戦略はこっちでしっかり持って、その戦略をディストリビューターに実行してもらわないと、ディストリビューターになめられて終わり。プロモーションフィーを出してくれとか、たまに出張へ行っても、ディストリビューターが見せたい小売の現場だけを見せられて実態が見えないと。そして、実際に売上がいかなくなったときの言い訳は、為替が悪いとか、景気が悪いとか、最近だと、コロナでしょうがないとか、そういう話になってしまうので、やっぱり戦略はこっちで持つということと、しっかりKPIを決めて管理育成をするということはしっかりやっていかないといけないということだと思います。

少し長くなっちゃいましたけども、今日はこの辺にしておきたいと思います。それでは、また皆さん、次回お会いいたしましょう。