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第245回 海外事業は分かってるつもりが最も怖い

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も前回に引き続きスーツですけども、前回お話しましたけど、2カ月振りにクライアントとface to faceの報告会がありましてスーツを着たんですけども。コロナになる前は毎日スーツを着るのが嫌だなというふうにずっと思っていたんですけども、たまにスーツを着ると逆に新鮮で、今日一日清々しい気持ちで過ごせました。皆さんもぜひたまにスーツを着てみてはいかがでしょうか。ということで、また余計な話を冒頭にしましたが、早速、本題にいきたいと思います。

今日は、海外事業、いつもスライドを使って少しアカデミック寄りの話をするんですけども、今日は「海外事業は分かっているつもりが最も怖い」ということについてお話をしたいんですけど、少しマインドセット的なお話をしたいなというふうに思っていて。これは、僕、いろんな人と話をする中ですごく感じるんですよね。これは支援をするわれわれもそうだし、事業会社、いわゆる支援を必要とする、もちろん必要とせずに自力でやっているような企業さんもそうだし、いろいろな立場の中で、やっぱり年間を通じてものすごい分かっているつもりの人というのが稀にいるんですよね。「いや、もう俺は海外が長いし、すごい分かっているから。もう大丈夫だから」みたいな、支援をする人たちの中にもやっぱり、「いやもう、自分はプロなので。この市場はプロなので任せておいてください」みたいな。

私は20年近くこの仕事をしていますけども、やっぱりいまだに「何でも任せてくれ」なんていうことはもう恐れ多くて絶対に言えなくて。やっぱり専門性というのがあって、これは地域もそうだし、インダストリーもそうだし、僕には僕の専門性、地域の専門性、そして、インダストリーの専門性というのがあって。それ以外のことというのはやっぱり、「不得意」とは言わないまでも、「もう任せてください。完璧です」というふうには、とてもじゃないけど20年近くやっていても言えなくて。これって、もちろん、「専門の分野は任せてください」というお話をしますけども、「これを自分はもう本当に分かっているんだ」「中国市場のことをもう分かっているんだ」「ASEAN市場のことをもう分かっているんだ」というふうに思い込んでしまうというのが、これ、海外事業最も大きな落とし穴で。こういう人に出会うんですよね。よく出会う。出会うんだけども、こういう会社ってやっぱり怖いなというふうに思うので、謙虚になれということを言いたいのではなくて、自分たちが分かってないという、初心に戻るということはすごい重要で、10年海外に駐在していたからその国のことが何でも分かる、こんなの絶対あり得ないので、10年いて、ようやく何とかその国で仕事ができるなというのがレベルなわけなので。そこからまた3年離れちゃったら、その国のことは全く分からない。

そんな中で、やっぱり海外事業を失敗する人というのは、必ず「自分は分かっているから」というふうに思い込んでいる人がそのプロジェクトを回していたり、というケースが非常に多い。もしくは、そういう支援者に支援されてしまっているというケースが非常に多いので、このことは本当にすごく重要で。自分が分かっていると思ったら、結局、基礎的な調査をやらなかったり、「いやいや、たぶんこんな感じでこういうふうになるでしょう」とか、「いやいや、もう、こういう系のディストリビューターに会ったことあるし、たぶんこういうことを言ってくるから、こうこうこうだよね」みたいな。こんなこと、僕は20年やっていたって慎重に慎重に個別に判断していくので、そこを仮にそう思ったとしてもそれで進めないということがすごく重要で。そこで「分かっているから」で行ってしまうと、足元をバーンとすくわれてしまうということは往々にしてあって。そうやって海外に出ていって、「もう僕は分かっている、海外駐在も長いので分かっているので、この会社としっかりタッグを組んでやったらもう完璧なので」と言って出て行って、結局3年4年ぐらいしてみると、その会社はなかなかうまくいかなくて、結局、合弁解消で撤退なんていう事例って非常に多くて。それだけでもう5年6年の時間を無駄にするんですよね。

だから、いかに「自分は分かっているので」と思わないかということが海外事業ではすごく重要で。仮にそう感じたとしても、ケースなんて1万通りあるので基礎的なことをしっかりやっていく、当たり前のことをしっかりやるということが海外事業を成功させる一番の早道だと思いますので、皆さんどうか自分を過信せずに、しっかりと初心を忘れずにやるべきことをきっちりやっていく、ということに努めてもらえればなというふうに思います。

それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。