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第244回 アジア新興国市場はプロダクトアウト?マーケットイン?

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は久々にスーツなんですけども、コロナ禍になって久々ですね、1カ月か2カ月振りぐらいにスーツを着たんですけど、今日たまたまクライアント先で最終報告会があって部下に連れられて行ってきたわけなんですけども、たまにスーツを着るというのは身が引き締まっていいな、というふうに思いました。本当に大変な世の中になりましたが、皆さんお体ご自愛くださいという事で。すみません。余談な前振りがありましたが、早速今日のお話を進めていきたいと思います。

今日、アジア新興国市場への参入というのはプロダクトアウトでやるべきなのか、それともマーケットインでやるべきなのかというお話をしていきたいと思います。このスタンスの違いってすごく重要で、このことがしっかりと理解できると、プロダクトアウトでやるべき市場なのにマーケットインのスタンスでいってしまうと、当然これはマーケットインベースの戦略になってしまうので市場にマッチしなくなるんですよね。戦略をつくるうえでもどっちのスタンスであるべきなのか、もしくは全く別のスタンスなのか。この「スタンス」ってすごく重要で、スタンスを間違えると戦略が変わってくる。プロダクトアウトというスタンスを取るのであれば、戦略は当然プロダクトアウトになってくるし、マーケットインというスタンスであれば、戦略は当然マーケットインベースになってくるわけなので、スタンスってすごく重要なんですよね。このスタンスを間違えると、戦略を間違えて実際にうまくオペレーションが回らない、結果が出ない、成果が出ないということになるので、今日はこのプロダクトアウト、マーケットイン、アジア新興国市場の参入はどちらがいいのかということについて、一緒に学んでいきましょう。

では、スライドをお願いします。まず、定義なんですけども、プロダクトアウトとマーケットインが一体何なのかということは、おそらく視聴者の皆さんはもう十分理解はしていると思うのですが。一応、上から説明をしていくと、プロダクトアウトはメーカー観点で商品を開発・生産・販売することですよね。簡単に言うと。企業が商品企画、商品開発や生産を行ううえで企業側の理念を優先させる方法、企業側が良いと思ったものを生産して販売していくこと、これはあとでもう1回説明しますけど、良い意味にも捉えられるし、悪い意味にも捉えられるというのがこのプロダクトアウトなんですけども、後で説明していきますが。

マーケットインって一体何なんだということなんですけど、プロダクトアウトが企業側が考えたものを市場に販売をしていくということに対して、マーケットインというのは消費者が何を求めているかをベースに消費者観点の商品を開発・生産・販売するということですよね。言ったら、市場ニーズを優先して、顧客観点で商品の開発や生産を行い販売をしていくこと、これがマーケットインなわけですよね。

パッと聞く限り、このプロダクトアウトって、どちらかと言うと、メーカーが自分たちが良いと思うものを市場に押し付けていくという、こういうあまりよくない印象を持ちやすい言葉ですけど。プロダクトアウト、よく言われるのが「日本は日本の良いものをアジア新興国の市場に押し付ける。そうじゃ駄目なんだ。マーケットインでなきゃ駄目なんだ。アジア新興国の人たちが何を求めているのか、アジア新興国の企業が何を求めているのか、それを市場に問うて、そこから商品を1から開発していかないと現地に合った商品というのはつくられないんだよ。なので、プロダクトアウトが悪で、マーケットインが善」みたいな、こういうふうな捉え方をしているんですけど。もちろんそういうシーンも当然ある。

一方で、プロダクトアウトって、逆に言うと、これは例えばAppleなんかを見てもらったら分かると思うんですけども、「私たちが思うクールってこういうものです。これこそがクールなんです。さあ、皆さん、どうですか」ということで、自分たちのクールを市場に押し付けているわけですよね。でも、一方で、そのスタンスに消費者が酔いしれて、みんながこぞってiPhoneを求めるというのがまさにAppleのスタイルなので。これが悪い意味でのプロダクトアウトかと言うと、そうではなくて、彼らは綿密なマーケットインがあって、そのマーケットインを前提にプロダクトアウトをしているわけなんですよね。この絶妙なバランスがすごく重要で。

次のスライドをお願いしたいんですが。プロダクトアウトとマーケットインを、これってどちらかでなきゃ駄目という話ではなくて、どちらともバランスよく取り込むということがすごく重要で、そのうえで今まで市場になかったものを具現化して商品を市場に求めさせるということがすごい重要なんですよ。どういうことかと言うと、結局、自分たちが「良いものはこれなんです。これを自分たちはやってきました。日本の市場でこれを売ってきました。だから、アジア新興国の皆さんもこれが欲しいでしょう」とグーッと押し付けちゃったら、これは単なるプロダクトアウトなんですよ。これは駄目と。一方で、「アジアの人たちどうですか。どんなものが欲しいですか。あんなものが欲しいですか」と言ったら好き放題たぶん言いますよ。日本人よりも主張が激しいですから好き放題言う。好き放題言われたものをベースに商品を開発して、生産して、それを市場に投入したときに、彼らが本当にそれにお金を払ってくれるかと言うと、またそれは別問題だったりするわけなんですよね。人って本当に欲しいものというのは今まだ世の中に存在してないので分からないんですよね。「こんなものが欲しい」というのは、目の前に出されて初めて、「僕はこれが欲しかった」「私はこれが欲しかった」となるわけなので、結局、このプロダクトアウトとマーケットインを絶妙なバランスで駆使していく必要があると。
成功している企業というのは必ずマーケットインを、徹底的なマーケットインで市場のニーズというものを探り当てると。そして、市場のインサイトを徹底して可視化するということを絶対やっている。そのうえで自分たちのプロダクトをアウトしていくという、この絶妙なバランス。これはもう、結局、市場に何が欲しいですかと八方美人戦略をするものって、市場って、逆に言うと、市場が「こんなものが欲しい」というものをメーカーがつくって市場に投入すると、それは欲しくないわけなんですよね、八方美人戦略みたいなものは。一方で、市場に聞いていない振りをして、自分たちのクールの定義を明確化して、それを市場にプロダクトアウトしていったものに市場は酔いしれるので。実際にインサイトってそういうことなんですよね。本当の消費者なり企業のニーズというのは、表層的な、表面的なところにはなくて、その深層部分にそれというのは必ずあるので、だからインサイトが重要だということなんですが、アジア新興国でも同様で、なかったものをいかに具現化するかと。具現化をする、今までなかったので、それを具現化するということは…。

救急車がうるさいですね。ここ、25階なんですけど、高速道路が、芝公園の近くなんですけど、東京タワーがバーンと見えているんですけど、そこの病院がたくさんあるのでピーポーピーポー言ってますけど。

今までなかったものを具現化させる。それを具現化させるということは、今までなかったので、やっぱりそこをチャネルの力で押し込んでいくということを当然やらないといけないし、プロモーションの力で押し込んでいくということもやらないといけない。なので、非常に重要なのは、マーケットインでもプロダクトアウトでも、だけでも駄目だし、マーケットインだけでも駄目なんだよと。重要なのはマーケットインをベースにした緻密なインサイトがあって、そこに対してプロダクトアウトというスタンスで商品をねじ込んでいくと。

ただ、ねじ込んでいくときに、ただ商品を、B2Cだったらお店に置いただけでは、もしくはB2Bだったらただ商品を紹介しただけでは駄目で、それをどうやって、チャネルですよね、チャネルの力でさらに深く押し込んでいくか。そして、プロモーションの力でさらに深く押し込んでいくかということをやらないといけない。これがアジア新興国では大変重要。日本ではここまでチャネルやプロモーションをしなくても皆さんの会社は有名ですし、皆さんの商品に対する信頼度というのは、市場の信頼度はB2CだろうがB2Bだろうが十分にあるので、そこまでしなくてもいいんですが、アジア新興国の場合はそこまでないので、そこまでやっていかないといけないということを付け加えておきたいと思います。

それでは今日の話は以上でございます。また次回お会いいたしましょう。