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第253回 なぜ「良いモノを作って売る」ではダメなのか

テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、「なぜ良いモノを作って売るではダメなのか」ということについてお話をしていきたいと思います。

B2Cであっても、B2Bであっても、日本の製造業は、良いモノを作るというのは、皆さん、ご承知の通りかと思います。しかし、この良いモノが、なかなかアジア新興国でかつてのように売れなくなってきている。なぜこの良いモノを作って売るということだけではもうダメなのか、マーケットシェアが伸びないのか、売上が伸びないのかということについて、今日は一緒に学んでいきましょう。

スライドをお願いします。

まず、アジア新興国市場で欲しいというニーズ、例えば、B2Cだったら欲しいというニーズが、品質が良くても価格が高ければ、必ずしも買うという結果にはならないわけですよね。もちろん日本のわれわれよりも所得の低い国が新興国なわけですから、アジア新興国なわけですから、当然、品質がよくて、日本のモノは良いということは分かっているんだけども、価格が高いので買うという結果にはつながらない。品質が良くても価格が高ければ、買わない、買えない、別のモノを買うという結果になり得るわけなんですよね。

これは一昔前だと、品質が良くて価格が高ければ、買える人と買えない人というのが2つにパーンと分かれていたわけですよね。ほとんどが買えない人だったので、アジア新興国市場というのは、日本企業にとって非常に重要なマーケットではなかった。ぶっちゃけどうでも良いマーケットであったんですね、かつては。なんですけども、現在は高くて買えない人たちがどうしているかと言うと、日本企業の商品じゃない別の国の商品を買っている、まさにそれが中国になるわけですけども、中国の商品を買って、日本の商品と中国の商品が、結局目に見えるほど製品の差がないわけですよね。品質や技術の差が目に、取って分かる、手に取って分かるほどの差がない中で、別の何かを買うという消費行動に変わってしまっている。

一昔前だったら、日本製を買える人が1割、9割は買えない、我慢するという状態だったのが、日本製を買える人が3割になって、残りの2割は買えなかったとしても、5割の人たちは日本製が買えないから中国製を買う。最後の2割は日本製も中国製も買えないという、まだ貧困層というのがいるわけなんですが、そういう市場になってしまったんですよね。これが非常に大きな違いで。

次のスライドをお願いします。日本企業は、この時代、この図をちょっと見てもらうと分かるんですが、日本企業の戦後から現在に至るまでの価値の源泉がどう変わってきたかということを理解する必要があって。この図のステージ1というのは戦後ですね。まさに日本が焼け野原から奇跡的な経済成長を遂げた先人が作った日本の土台ですけども、この時代というのは、日本国内で製造したモノを日本国内で消費して、徐々にそれを欧米に輸出していったんですよね。最初は「安かろう、悪かろう」とばかにされたんですよ。かつて、日本企業が中国メーカーをばかにしたように、欧米に日本のメーカーもばかにされた。品質が悪い象徴は日本メーカーだったんですよね。たぶん、今の世代の人たちは信じられないかもしれないですけども、「日本メーカー=品質が悪い」ということだったんですが、そこから日本企業は努力に努力に努力を重ねて、「日本製品=最高品質」という地位を勝ち取ったわけですよね。その後、ステージ2になって、プラザ合意ぐらいに円の価値が急激に上がったので、もう日本で作っていたら欧米に輸出できないよという時代が来てしまった。そのときに日本は、日本企業の多くはアジア、中国を中心としたアジアに製造拠点を移転させて、そこで安い労働力を活用して、安く良いモノを作って日本国内や欧米に輸出をしていったと。このステージ1、ステージ2というのは、まさに技術力の時代で、作る力こそが正義だったんですよね。なおかつ先進国がターゲットだった。世界のマーケットと言われるところは日・欧・米だけだったんですよね。新興国とか、アジアとか、そういったところは全くもってマーケットではなくて、そこはあくまでも製造をする拠点であって売る拠点ではないというのがステージ2まで。

それが2000年前後を皮切りにパラダイムシフトがバーンと起きたんですね。ステージ2とステージ3の間ですね。どうなったか。言ったら、アジアで作ったモノをいかにアジアで消費するかという、そういう時代に突入して、アジアというのが一大マーケットに成長してきたわけですよね。そして、かつて日本企業が生産拠点を中国やアジアに移したので、当然その国は豊かになるわけですよね。その国の貿易、輸出が増えますから。そして、工員をたくさん使って産業が発展していきますから。いつしか中国の企業でも作れるようになった、そんな時代が来てしまって。そうすると、かつて日本、もともとあらゆるモノというのは欧米が作っていたわけですよね。それを日本がより小さく、よりよく、より安く作ることによって、欧米からその座を奪った。そして、それがまさに中国がそれを成し遂げたわけですよね。日本よりも安く、小さく、良く作って、今や世界の工場の名を中国が日本から奪い取っていった。もちろん、細かいことを言ったら、まだ技術の差で日本企業のほうが技術が高いんだとか、いろいろあるかもしれませんが、正直もうそういう時代ではなくなってしまった。かつて、日本の家電量販店で中国製のテレビが売れるなんて誰も想像しなかったし、中国の通信事業者やいわゆるインターネットの企業がこれだけ世界を席巻するなんていうことは誰も考えなかったわけですよね。中国であらゆるものが、ローテク以外のモノが作られる、ハイテクが中国で作られるなんていうことは誰も想像しなかった。われわれ日本人は、中国を「安かろう、悪かろう」とばかにしたわけですよね、かつて。それが今では中国のほうが進んでしまったという時代が来てしまった。まさに、日本企業だけが競合じゃなくて、中国の企業も競合になってしまった。これがマーケティングの時代への突入で、今までのかつての作る力が重要だった技術の時代から、売る力が重要なマーケティングの時代に突入して、さらに先進国もターゲットなんだけども、新興国までもがターゲットになってしまった。これがまさにこの良いモノを作って売るではダメなんですよという、時代背景の流れなんですけど。価値の源泉がこうして変わってきちゃったから、良いモノを作って売るだけではダメなんですよ、作る力+売る力が必要なんですよ、マーケティングが必要なんですよということになるわけでございます。

次のスライドをお願いします。じゃあ、「日本企業はどうすれば良いの?」ということなわけですけども、これはもうひとえに「良いモノ」の定義を変えるということをしないといけない。日本人がかつて信じてきた高い技術力とか品質、こういったものがもう世界では良いモノにはならなくなってしまったんですよね。中国企業でも十分良い品質のモノを作れるので、もうそんな、1ミクロンの品質の差を争っても全く何の価値にもユーザーも消費者も感じないわけなので、まずもって良いモノの定義を変える。日本人がかつて信じてきた良いモノは、もはや世界の良いモノではない、高い技術力を駆使した高品質で高機能の製品が必ずしも世界の良いモノとは限りませんよということを製造業は考えないといけない。いまだに多くの製造業がグローバル展開をするときに、最大で唯一の武器は技術力とか、高品質とか、ジャパンプレミアムとか、技術とか品質にまつわることがまさに強みになっているわけですよね。彼らが、本当に皆が皆、1,000社いたら1,000社が一様に打ち出す強みなわけですけども。

Appleなんかはどうでしょうか。彼らはまさにマーケティングですよね。ダイソンはどうでしょうか。ダイソンもまさにマーケティングで、品質が良いなんていうのは当たり前、技術が高いなんていうのは当たり前、その上でマーケティングをどうしていくのかということが企業にとっては大変重要で。今、世界で成功している先進的なグローバル企業は、技術力が高いのは当たり前、品質が高いのは当たり前、その上でマーケティングを全面に押し出したグローバル戦略を行っているので、彼らは世界で成功している。日本企業もここをしっかりと理解して学ぶ必要があるのではないでしょうか。

それでは今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。