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第252回 グローバル市場における日本企業の立ち位置

テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、「グローバル市場における日本企業の立ち位置」についてお話をしていきたいと思います。

立ち位置なんですが、海外展開する際に大変重要になります。立ち位置が違うと、自分たちの打つべき対策も変わってくるし、自分たちの取るべき戦略も大きく変わってきます。自分たちの立ち位置をしっかりと理解をしていないと、誤った対策や誤った戦略を打ってしまうことになってしまいます。逆に、この立ち位置がしっかりしていれば、的確な対策、的確な戦略を打つこともできるのです。今日は、日本企業のグローバル市場における立ち位置について、一緒に学んでいきましょう。

まず、立ち位置なんですが、これはもちろん国によって、そしてインダストリーによって、国軸、インダストリー軸で大きく変わってきます。この国でこのインダストリーはこういう立ち位置だし、この国でこのインダストリーの企業はこういう立ち位置と、大きく変わってくる。なので、まず自分たちが展開をしようとしている国で、自分たちのインダストリー、そのインダストリーの中の自分たちがどういう立ち位置に置かれているのか。立ち位置というのは、B2Bであれば対ユーザー、B2Cであれば対消費者です。そして、もちろん中間流通や、それから競合から自分たちがどういうふうに見られているのか。立ち位置というのがまずファクトとしてしっかりあって、これに対して、こういう自分たちは立ち位置なのでこういう対策を打つとか、自分たちはこういう立ち位置なのでこういう戦略を進めようと、こういうふうにつくられていくべきなので、立ち位置というのは非常に重要です。

ちょっとこの図を見ていただいて。これは世界の10大消費財メーカーと、そのメーカーが持つブランドになります。左から、皆さんの左から、クラフト、コカ・コーラ、ペプシコ、ジェネラルミルズ、ケロッグ、マース、ユニリーバ、ジョンソンアンドジョンソン、P&G、ネスレと。ほとんど皆さん聞いたことあるような企業ばかりだと思うんですが、これは決して欧米の話をしているのではなくて、アジアを含めた世界、グローバルの市場で10大消費財メーカーと言われると、こういうメーカーになってくる。もちろんこれは何をもって10大消費財メーカーという、定義もいろいろあります。もちろん時価総額で見たり、売上で見たり、ブランド力で見たり、いろいろあるんですが、まあまあ、どういう観点で見ても、10大消費財と言うとこういうメーカーになってくる。

残念なことに、われわれが日本で慣れ親しんでいる日本のメーカーはただの1社もランクインできていない。これは時価総額の観点で言っても、売上の観点で言っても、利益の観点で言っても、ブランド力の観点で言っても、いずれの観点で言っても、おそらく技術力ですとか、そういう観点以外では、まず10大消費財メーカーの中には入ってこないということで。今回は消費財メーカーの話をしていますが、大変残念な状況に陥っている。
なぜ、こういう立ち位置になってしまったのか。これがまさに立ち位置なわけですよね。日本市場で日本の消費財メーカーや食品メーカーが戦うときに、まさに自分たちの牙城なので、立ち位置は全く違うわけですよね。この図とは全く違う。外資がどう攻めてこようが、何をしようが、自分たちが長年培ってきた立ち位置があって、競合が自分たちをどう思っているか、それから消費者がどう思っているか、小売店がどう思っているか、そういうものがあるわけですから、非常に有利な立ち位置に国内では置かれている。一方で、いざ、海外に行ったときには、まさに真逆の状況、真逆の立場になっている。なぜこのような状況に日本企業が置かれてしまったのかというお話なんですが、理由はいくつかあるんですけど、2つ大きな大変重要なポイントとしては、まず海外に関しては、消費財メーカーは出遅れました。特にアジア新興国に関しては、非常に出遅れた。これは、生産拠点として出たのは比較的早かった。原材料の調達、これも早かった。ただ、マーケットとして出て、これはただ出れば良いというものではなくて、本気でマーケットを獲りにいくというふうに本社の戦略のシフトがしっかりと入った時期がやっぱり欧米に比べると20年近く遅れてしまっている。その差がまず1つ大きく出ていますよということが1つ。

遅れたにもかかわらず、自分たちのいわゆる商品の優位性だけを戦略の1つの軸として突き進んでしまった。私はこれを1P戦略というふうに呼んでいますが、1P戦略というのは、4P、マーケティング・ミックスの4P、プロダクト、プライス、プレイス、プロモーションというふうにありますけども、フィリップ・コトラーはこの4Pが最適化された状態でターゲットにぶつけるから初めて商品はセルアウトしていくんだ、売れていくんだというふうに言っていますが。日本企業の場合は、プロダクトの1Pだけ。しかも、いずれの企業も、自分たちが高い技術力で、いい原材料を使って、いいものをつくっているからプレミアムなんだ。プレミアムプロダクトで、1PのPはプロダクトのPと、プレミアムのPと2つ合わさって、まさにほかの3つのPを無視した戦略でアジア新興国では展開を押し進めてしまった。プライスに関しては本来であれば中間層が賄える価格帯にアジャストメントしていかないといけないのに、若干アジア新興国なので安くはするけども、基本的には高く売りたいですと。もちろん高く売ることは全然悪くない。1円でも僕は高く売れというふうに思っていますから、高く売ることは悪くないんですが、これが消費財メーカーがターゲットとすべき中間層が賄える価格の中の高くでなければならないので、そこからはだいぶ離れた高さになってしまった。そして、3つ目のプレイス、チャネルですよね。まさにチャネルに関しては、これはもう本当に数十年の遅れがある。今なお遅れが、開きがどんどん、どんどん、先進的なグローバル企業と開いている状態ですから、このチャネル。チャネルがおろそかになっているということは、もちろんプロモーションなんていうのはほとんど、砂漠に水を撒くようなものですから、ほとんど打てていない。日本であれだけ打っているプロモーションがほとんど打てていないという状態になっているので、ほかの3Pが置き去りになってしまっている。

スライドお願いします。まさに1P戦略という状況になっていて。この1P戦略からの決別をやっぱりしていかないといけない。4Pでなければならないんですよね。中間層、もう消費財の最大のターゲットは中間層なので、中間層以外のターゲットはあり得ない。これはなぜかと言うと、爆発的な人口増加があって、中間層が最もボリュームゾーンであるから、消費財メーカーの最大のビジネスの肝というのは、いかにたくさんの人に、いかに速い頻度で、いかに永遠にたくさん買い続けてもらうかということがビジネスの肝ですから。そうすると、お金持ちの人を相手にしたって、消費財なんていうのは、お金持ちも中間層も買える量は一緒なわけですね。お金持ちだったらたくさん食事が食べられるかと言うと変わらないし、お金持ちだったらたくさんシャンプーを使うかと言うと、そうではないわけなので、数の原理で中間層が非常に重要である。このターゲットが中間層でまずあって、そこに4Pをぶつけないといけない。なので、もうこの1P、プロダクトが、技術が、品質が良いからいいでしょう、プレミアムだからいいでしょうという、この1P戦略からまず決別するということをしないといけない。

そして、今まではつくる力がやっぱり非常に重宝されてきたわけですね。つくる力があればよかった。つくる力こそが正義だった。しかし、この売る力というものが合わさらないと、これはもう、競合、競争環境が劇的に変わったわけですよね。今はもう、日本企業だけじゃなくて、アジアの企業、中国の企業、韓国の企業でもつくれるようになってしまった。そうすると、かつてのように日本企業しかつくれなかった時代じゃないわけですね。特にこれは消費財じゃない業界でもそうなんですけども、ない業界でもやっぱり1P戦略をしている。B2Bの業界、B2Cでも消費財じゃない業界、これも1P戦略で、また、つくる力に非常にフォーカスが行き過ぎてしまって、売る力になかなかフォーカスが行けていない。

売る力というのは、例えば、昔は日本企業しかつくれなかったものを、もともとアメリカがつくっていたものを日本企業がより安く、より小さく、よりよくつくった。だから、つくる力が非常に重要だったんだと、こういう時代がありました。80年代、90年代、2000年代までたぶんぎりぎりそういう時代でした。一方で、そこからというのは、中国の企業でもつくれるようになった。韓国の企業でもつくれるようになった。こうなってしまったら、やっぱり競争環境が劇的に変わっているので、つくる力+売る力が必要になるということで、今の日本企業のグローバル市場における立ち位置は、特にB2C、消費財は非常に悪い。B2Bは比較的にシェアがよかったりするんですけども、やっぱり限られていますよね。素材系とか、そういった分野に限られてしまうので。やっぱりまだまだ立ち位置が良いというような状態、必ず欧米にジャイアントがいるので、そういう意味からはなかなか苦しい立ち位置である。一方で、その立ち位置を脱却する、立ち位置を打破してその先に進むためには1P戦略からの決別をするということと、つくる力だけじゃなくて売る力も備える必要があるということが大変重要になってまいります。

それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。