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第254回 失敗する企業の法則

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、「海外展開に失敗する企業の共通点」ということでお話をしていきたいと思います。

過去20年近くにわたって数多くの企業を見てきましたが、その中で海外展開に失敗する企業というのは必ず今日お話する3つのことに当てはまってしまっております。そして、自分たちがこの共通点に当てはまっているということに気付いていないというケースが大半でございます。逆に言うと、この3つの共通点に当てはまっていなければ、皆さんの海外事業が失敗をするというリスクは大きく軽減できるはずです。今日は、「海外事業に失敗する企業の共通点」について一緒に学んでいきましょう。

スライドをお願いします。まず最初のスライドですが、結論から申し上げると、失敗する企業の共通点、この3つになります。1つがモノ頼りの海外展開、そして2つ目がパートナー頼りの海外展開、3つ目が人頼りの海外展開という3つのものに頼っていくというものになりますが、1つ1つ説明をしていきたいと思います。

次のスライドをお願いします。まず最初のモノ頼りの海外展開。これは非常に多くの日本の企業は、これはサービス業であっても製造業であっても、B2BであってもB2Cであっても、必ずこの問題が失敗する企業には存在しているんですが。言ったら、自分たちの商品は他社よりも優れているので、ほかのことは少々できていなくても大丈夫だろうということで、モノに頼って海外展開していくんですよね。製造業の場合、自分たちは高い技術力、高品質・高機能のものをつくって、これを世界に持っていけば、きっと世界でも成功するはずだと、日本でこれだけの実績があるものなんだということで、モノに頼ってドーンと行くわけなんですよね。極端な話をすると、モノが良いのでその他はできていなくてもいい。モノさえ良ければすべて良しということで、その他のマーケティング活動がほとんどできないまま、もしくは非常に脆弱なまま海外展開をしてしまって失敗をしてしまう。こういう時代はあったんですね。80年代90年代、モノが良ければすべて良しという時代、確かにありました。ただ、今はその時代と競争環境も市場環境も全く違う。当時は、欧・米・日が市場として見られていた地域ですけど、今は中国を始めとしたアジア新興国も市場になっているわけですね。中国はもうすでに先進国ですけども。市場環境がそうして違う上に競争環境も違ったんですよね。80年代90年代の中国企業の脅威なんていうのはまだ大したことなかった。それが今ではものすごい脅威になっているわけなので、これ皆さんがつくれるものは、もうすでに中国の企業でもつくれて、むしろ、より安くより良くつくれていたりするわけですよね。「いやいや、まだ技術ではこういう技術ではうちのほうが上なんです」と言ったところで、それがユーザーに伝わるのか、消費者に伝わるのかと言うと、もう目に見えない範囲での「良い」は正直良いにはならなくなってきているわけですよね。製造業はこういう問題が非常にある。サービス業もそう。自分たちの提供しているサービスはプレミアムだから、自分たちはプレミアムおもてなしを提供しているので、他社よりも優れているんだということで出て行かれるんですが、モノが良い、サービスが良いだけでは、もう世界の市場では勝てないんですよね。皆さんがつくれるモノ、皆さんが提供できるサービスは他の国の企業でも提供できるというふうに考えたほうがよろしいと思います。モノ頼りではなくて、モノ以外の部分ですよね。これは4Pで言うと、プロダクト、プライス、プレイス、プロモーション。マーケティング・ミックスの4Pで言うと、プロダクト、プライス、プレイス、プロモーションのうちのプロダクトが良ければ、あとの3つはおろそかにしてもいいでしょうという考え方ですよね。プロダクトが良いんだからプライスが少々高くてもいいでしょう、プロダクトが良いんだからプレイス、つまりはチャネルが少々弱くてもいいでしょう、プロダクトが良いんだからプロモーションかけなくてもいいでしょうと、こうやって出て行くわけですけども、「そんなことをして日本で勝てますか?」と言うと、絶対勝てないわけですよね。この良いモノ、確かに日本の企業は良いモノや良いサービスを提供する。この良いモノをつくるだけで、プライスストラクチャーのことを考えましたか、販売チャネルのことを考えましたか、販売チャネルをつくりましたか、このプロダクトをこんなに良い品質につくり上げるまでの努力と同じ努力をチャネル構築でやりましたか、プロモーション戦略を同じだけ考えましたかと言うと、絶対考えていなくて、ものすごいプロダクトに寄ってしまっている、これがまさにモノ頼りの海外展開の1つ目のケースでございます。

そして、次のスライドをお願いします。2つ目なんですが、これはパートナー頼りの海外展開。これはどういうことかと言うと、自分たちはつくる人で売るのはパートナーなので、現地のことはよく分からない。だからパートナーと組むわけで、「売るのはパートナーにお任せです」ということで、売ることに介在をしない。つくることを中心に考えてしまう。売ることはパートナーにもう任せてしまう。このやり方って、パートナーは重要なんです。販売店であろうが、財閥系であろうが、同業種であろうが、ぱーートナーというのは否定しません。非常に重要です、海外展開する上で。ただ、売ることのすべてをパートナーに任せてしまうと、調子の良いときはそれでいいんですが、調子が悪くなったときに対策が打てなくなるんですね。なぜならば、売ることに介在していないので何がどう問題で、どういう対策を打てばその問題が解決するのかということが理解できないから。そうすると、売るということに介在をしてすべてを理解した上でパートナーに任せるのか、それとも売ることを全く理解せずに分からないから任せるのかでは、得られる結果が全く違うということが2つ目で、パートナー任せの、頼りの海外展開というのは非常に多い共通点の2つ目でございます。
では、3つ目。3つ目が人頼りの海外展開。これは人というのは駐在員のことを指していますが、駐在員を現地に送って「気合いと根性で何とかしよう」ということで送り込むわけですけども、駐在員は戦術は考えても戦略は考える立場ではないので、戦略はやっぱり本社が考えないといけない。本社が考えた戦略を右手に持って、左手に予算を持って、駐在員というのは現地に行って、戦術を自分たちで考えてそれを実行するというのが駐在員の役割なわけですよね。それが、戦略がないから当然予算も与えられない、大した予算も。そして、右手と左手に何の武器も持たさないまま駐在員を現地に送り込んで、気合いと根性で何とかしろと。これ、気合いと根性で何とかなった時代も確かにありました。80年代90年代、確かにあった。ただ、もう今これだけグローバルに中国を中心としたアジア企業が戦略的に戦っている中で、気合いと根性でかつてのリゲイン飲んで何とかするみたいな、そういう世界観ではなかなかやっぱり難しくて、駐在員にはやっぱり戦略と予算を持たせないと駄目。これは日本企業の良いところでもあって悪いところなのかもしれないですけども、戦略も予算も持たせないで気合いと根性で現地で戦わすんだけども、逆にそれが失敗しても大した責任を取らせないというのも日本企業の良いところですよね。何となくうやむやとするので、権限もなければ責任もないという。でも、こういう状態だとなかなかやっぱりグローバルで戦っていくというのは難しい。人頼りの海外展開ではもう無理ですよというのが3つ目の共通点でございます。

次のスライドをお願いします。まとめると、こういうことになるわけですけども、失敗する企業の共通点、キーワードは「依存」です。売ることをモノに依存する。売ることをパートナーに依存する。売ることを人に依存する。戦略がないから別の何かに依存することになるわけですよね。売ることをプロダクトに依存する。プロダクトが良いのでプライスが少々高くてもいいでしょう。プレイス、チャネルがあまり強いチャネルじゃなくてもいいでしょう。プロモーションをあまり打たなくてもいいでしょう。そんなわけないんですよね。フィリップ・コトラーは、ターゲットに対してこの4Pが最適化されているからモノは売れるんだというふうに言ってるわけで、このマーケティングの定義というのは長い間絶対に変わらないんですよね。これは時代がどう変わっても、これはマーケティングの定説として変わらないものなので、これを1Pだけで引っ張っていくって、これは持続性がないですよね。ある一定の期間だけは瞬間風速的に良くても、それが継続していかないので、やっぱりモノだけに依存しちゃ駄目ですよ。モノというもの、プライスというもの、プレイスというもの、プロモーションというもの、全部を、4Pで例えるなら考えないといけないし。それから、パートナー。パートナーも売ることの全部を任せちゃ駄目です。自分たちが売ることに介在してしっかりとマーケティングを理解した上で任せるのと、全く●理解しないで任せる(00:09:21)●のでは得られる結果は大きく異なってくるので、売ることにも介在しましょう。その上で任せていきましょうということが2つ目。そして、3つ目の人による依存。駐在員、優秀な駐在員を送るのはいいのですが、気合いと根性で戦わすというのはもう通用しないので、右手には戦略、左手には予算をしっかり持たせてやらせるということが重要になってくると思います。戦略がないから別の何かに依存をするということになってしまうんですが、このやり方ではもうアジア新興国で日本企業は勝てないので、しっかりと戦略を持つ。戦略を持つためには会社として1つの大きなビジョン、なぜこの国でこのことを自分たちは実現するべきなんだということをトップがしっかりとしたビジョンを示して、そのビジョンがあるから戦略がつくられて、そして、その戦略があるから現地で駐在員が戦術を実行できるという、こういう仕組みになっているわけなので、戦略というものが非常に重要になってくると思います。

それでは今日はこれぐらいにして、皆さん、また次回お会いいたしましょう。