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第275回 導入期における伝統小売攻略のためのKPI

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、「導入期における伝統小売攻略のためのKPI」についてお話をしていきたいと思います。

要は、伝統小売どのように攻略したらいいんですかと、そのときに設定すべきKPIは何ですかというお話が今日のお話でございます。引き続き、今日のお話はFast Moving Consumer Goods、FMCGですね、食品・飲料・菓子・日用品等のFMCGに向けてのお話になります。対象地域はASEANになります。導入期における伝統小売の攻略のためのKPIということで一緒に学んでいきましょう。

早速ですけども、スライドをお願いします。結論から言うと、導入期における伝統小売攻略のKPIって2つしかなくて、1つはストア・カバレッジで、1つはインストア・マーケットシェアです。そもそもその前提になるお話なんだけども、ASEANの市場って圧倒的に伝統小売が多い。TT。一方で近代小売がMT、Modern Tradeですけども、MTよりも圧倒的にTTが優位な市場なわけですね。ASEANは、約8割はTTだというふうに理解をしてもらったらよろしいかと思いますけども、国によって全然違います。タイは比較的近代化が進んでいますけども、ベトナムなんかへ行くとまだまだやっぱり8割以上は伝統小売だったりするので、そのような状態です。これは金額ベースです。金額ベースでだいたい8割は伝統小売から売り上がるというふうに捉えてもらったら。もう店舗ベースで言ったら圧倒的に伝統小売のほうが多いので。例えば、ベトナムの近代小売の数、主要近代小売って高々3,000店舗ぐらいですけども、伝統小売というのは50万店以上ありますし、インドネシアの近代小売は3万5,000店舗ですけども、一方で伝統小売は300万店存在すると。フィリピンに関しては近代小売が6,500店舗ぐらいですかね、一方で伝統小売は80万店ぐらいある、以上あるというふうに言われていますので、圧倒的に伝統小売が多い。この伝統小売を攻略しないと高いマーケットシェアを得られないし、利益を得られない。特に現法がある場合は、これは輸出でやっている場合は基本的に関税が乗ってくるし、輸出の商品が伝統小売で売れるなんていうことはあり得ないので、輸出でやっているステージではもう基本的には近代だけでよろしいと思います。伝統小売のKPIとか伝統小売の攻略なんていうのは一切考えなくていい。

一方で現法を出してしまうと、現法のイニシャルコストをペイしていくためには近代小売だけでは絶対に儲からない。例えば、ベトナムの3,000の近代小売に商品を並べて、どんなにたくさんSKU並べて100%、3,000店舗100%の配荷率を仮に獲ったとして、週販どれだけ回したって、これは儲からないのはもう目に見えているので、やっぱり伝統小売を獲らないといけないです。高いシェアも伝統小売を獲らないと難しいというのがそもそもの大前提としてある。だから、伝統小売の攻略をやる。ただ、この伝統小売の攻略が日系各社は非常に難しさを感じていて、このときの考え方なんですけども、KPIに設定するもの、KPIというのはもう皆さんご存じだと思いますけど、Key Performance Indicator、日本語に訳すと重要業績評価指標というふうに訳されていますけども、KPIですね、Key Performance Indicator、ここで設定すべきものというのは、ストア・カバレッジとインストア・マーケットシェア、これは先進的なグローバル企業はもう完全にこうです。ストア・カバレッジとインストア・マーケットシェア、この2軸だけを追い続けていってシェアを上げている。

この図の通りなんですが…。今ようやく図だよね、図を出してくれと最初に言いましたけど。この図の通りなんですけど、結局、ストア・カバレッジって何?と言うと、どれだけたくさんの店に置けるかということなんですよね。これは万単位で置いていかないといけないので、どれだけたくさんの店に置けるかということと、インストア・マーケットシェアというのはその店でその店の同一カテゴリーで何回選ばれるか。例えば、チョコレートだったら、そのお店のチョコレートのカテゴリーで5回に1回選ばれる商品なのか、それとも5回に2回選ばれる商品なのか、5回に3回選ばれる商品なのか、これがまさにインストア・マーケットシェアで、どれだけストア内の同一カテゴリーのシェアが高いかという、この2軸ですよね。別名セルインとセルアウトというふうに表現したりもできると思いますけども、セルインをする数をとにかく横に増やしますと。一方でその入れたんだったら必ずセルアウトさせるという、インストア・マーケットシェア、必ず売れていく、最初はBTLから始めてだんだんATLに切り替えていくわけですけども、インストア・マーケットシェアを上げていかないといけない。これってある一定のストア・カバレッジを獲らないと、この図の通りなんですけどね、赤字ゾーンというのが絶対にあって、ある一定のストア・カバレッジまで到達しないと絶対に黒字にはならない。例えば、極論ですけど、100店舗にしか置けなかったら、ストア・カバレッジが100だったら、これは100店舗でどれだけ売ったってもうずっと赤字なんです、永遠に赤字なんですよね。だって、1日100万個も売れないですから。そうすると、物理的にこれは永遠に赤字ということを証明していて。だから、何万店舗という数字が必要で、ある一定のストア・カバレッジ、横軸まで伸びると、ある程度普通に売れていったら黒字のゾーンに行けるという、こういう構造になっているわけなので、最初はストア・カバレッジを伸ばさないといけないですよね。

ただ、このストア・カバレッジが伸びてもインストア・マーケットシェアが上がらなかったら、TTのパパママのオーナーはすぐにそれを撤去します。店が狭いので、売れない商品を長いこと置いておくことはできないので、すぐ撤去されて、二度と敗者復活戦ができない、しにくくなってしまう。なので、入れたと同時にセルアウトさせる仕掛けをやっぱりメーカー側が考えていかないといけない。このストア・カバレッジとインストア・マーケットシェアを伸ばす活動をドミナントでやっていかないといけない。これは例えば、ベトナムとかの話をずっとしていますけど、インドネシアでもタイでもマレーシアでもフィリピンでも一緒なんですけど、ドミナントでやっていく。どれぐらいドミナントかと言うと、首都でやっていくとかそういうレベルじゃなくて、区ごとにやっていく。結局TTをやるということは、そのエリアのMTはもう攻略済みということなんですよね。なぜならば、その同一区のMTでしっかり並んでいないと、売れ筋商品に近しいところにポジショニングされないとTTのオーナーは取り扱いたがらないので、基本的には店先が狭い、売れない商品を置いておくスペースはない、そうなってくると、いかにMTで売れているものを取り扱うかということがTTのオーナーがやりたいことなので。ドミナントで、例えばベトナムだったら12区+αある中の、例えばまず5区からやりますと。この5区のMTを攻略しました。そしたら、この5区のTTからまず攻略をしていく。5区が終わったら次の区、次の区、次の区ということでドミナントでどんどん広げていくということをやっていくということは非常に重要で。こうやって自分たちのストア・カバレッジを1万店、2万店、3万店、4万店、5万店と毎年毎年伸ばしていく。これによって初めてシェアがしっかりと上がるという、こういう構造になっているわけなので、KPIというのは常にストア・カバレッジでありインストア・マーケットシェアであると、伝統小売の攻略はこの2軸が大変重要だということを最後に申し上げておきます。

それでは今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。