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第285回 「属人的」ではなく、「戦略的」な先進グローバル企業 その2

テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も前回の引き続きということで、パート2、その2をお話をしていきたいと思います。

「属人的」ではなく、「戦略的」な先進グローバル企業ということで前回の続きのお話でございます。ターゲット市場、対象市場は新興国、インダストリはFMCG(Fast Moving Consumer Goods)、食品・飲料・菓子・日用品等の消費財ですけども、B2Bの製造業の方も自分たちの事業に置き換えて聞いていただければと思います。

スライドをお願いします。前回、1、2、3、こういったことが非常に戦略的で逆算思考ですよと、結果シェアが高いですよというお話をして、1の早期進出、次のスライドをお願いします。この図を使ってご説明をしました。

今日は、次のスライドをお願いします。2つ目のこの「明確なターゲティング」ということでお話をしたいんですが。この図の通り、現在アジア新興国の中間層は15億人ほどいるというふうに言われておりますが、国がどんどん、どんどん、豊かになって、貧困層がどんどん、どんどん、シュリンクしていくと、三角形のピラミッド型からひし形のような形に人口構造が変化すると。中間層が爆発的に増えるんですね。この中間層が爆発的に増えるというのがアジア新興国の最大の魅力で。特に消費財メーカーがなぜアジア新興国に進出するのかというと、この爆発的に増える30億人の中間層を獲得すると。これがもう最大の目的なわけですね。消費財というのは、単価の安いものを売っています。1個1万円2万円の化粧水を売っているのであれば富裕層をターゲットにする必要がありますが、数十円もしくは100円200円の消費財というのは、ビジネスの肝がいかにたくさんの人に、いかに速い頻度で、いかに繰り返し、永遠に買い続けてもらうかということがもう最大の肝なんですよね。そうすると、ターゲットは中間層以外にあり得ないんですね。

中間層からブレる議論を日本の消費財メーカーはずっとやってくるんですが、頭では中間層が大切だと理解していながら、戦略の実態を見ているとやっぱり上振れしてしまう。上位中間層から始めたほうがいいんじゃないか。もしくは富裕層から始めたほうがいいんじゃないか。そして、結局そこで止まってしまう。中間層や貧困層にはなかなか進めない。一方で欧米の先進的なグローバル企業は、もう最初から中間層なんですよね。中間層や貧困層を狙っているからと言って、彼らのブランド力が落ちているかと言うと落ちていないんですよね。むしろ上がっている。ここでよく日本企業が間違えるのは、ブランディングというものとターゲティングというのは全く別個の話で、低いターゲットを狙ったからブランドが落ちるかと言うとそうじゃないんですよね。日用品のブランドというのはそういうものじゃない。高級時計のブランディングであれば、低い所得層を狙ってしまったら、これはブランドを下げることになりますが、日用品はそうじゃない。ターゲティングとブランディングは全く別次元の話。にもかかわらず、これを同一次元で考えてしまって、もしくはそれを言い訳にしているという面もあるんですが、やっぱりターゲットが上振れしている。一方で先進的なグローバル消費財メーカーは端からこの15億人を狙っていくと。

ここも、言ったら、自分たちがどれぐらいマーケットシェアを獲りたいのか、もしくはどれぐらいの利益を出したいのかということが逆算されているので、そうすると、もう中間層を獲るしかないですよねということが端から逆算されているんですね。なので、今年はこれぐらいの消費者、顧客層が獲れたから、来年は積み上げてこれぐらい獲ろうとかということではなくて、もう逆算でこれだけのシェア、シェア20%獲らないと十分儲かりませんと、そして、20%に行くまでには10年掛かります。であればこうしましょうということが明確に設定されているので、非常にシンプルなんですよね。それに対して投資を続けていく。おかしければ修正する、修正する、修正する。そして、全く想定と違うことが起きたら、そこで撤退をするのか、引き続き投資をするのかを判断をするので、そういった場合の処置も非常に速い。これが先進的な企業。一方で日本企業はなかなかそうはなっていなくて、残念ながら、中間層が大切だと言いながら、やっぱり層が上振れしてしまっている。次にチャネルのお話をしていきますが、チャネルも近代小売中心で、伝統小売の攻略がなかなかできていない。そもそも伝統小売に売れる製品になっていないという、そういう問題もあったりもします。
次のスライドをお願いします。3つ目の、これは強固な販売チャネルの構築というところなんですが、これも皆さんから向かって左が先進的なグローバルメーカーの販売チャネル、右が日本企業の販売チャネル。基本的には先進的なグローバル企業、近代小売が直販をして、現地法人が直販をして、複数のディストリビューターを使って伝統小売を攻略するということをやっているんですよね。でも、一方で日本企業はディストリビューターを使って近代小売に配荷をしているというケースがまだまだ少なくないですし、伝統小売がなかなか手を付けられていないという例も非常に多い。結局、理由なき1カ国1ディストリビューター制みたいなことをしている企業も非常に多いので、結局、1ディストリビューターですべてのチャネル、すべての消費者にリーチなんかしないんですよね。これも逆算すれば分かるので、彼らはエリアごとに複数のディストリビューターを活用して面を獲りにいくということをやるわけですよね。一方で、日本企業の場合は、まずこのディストリビューターからやってみよう。そして、どれぐらいできるか分からないけどやってみようと。その出た結果に応じて、じゃあ、今回これぐらいの結果が出たので、次回これぐらいやろうと、どうしても積み上げになるし、そこは俗人性のかたまりになっていくということが非常に大きい。一方で先進的なグローバル企業からは俗人性というのは一切取り払っていて、誰がやっても回るオペレーション、誰がやっても回る戦略、そういったものを先人がつくっていくというのがいわゆる第一陣のミッションになっていくわけなので、そんなふうにディストリビューション・チャネルもつくられていく。非常に戦略的で逆算ですねと。

同じ人間が経営する企業、同じ人間が働いている企業、なぜこんなに大きく違うのかということで、次のスライドをお願いします。私もいろいろと考えるんですが、やっぱり数多くの先進グローバル企業や日本企業を見てきて思うのが、日本企業に圧倒的に足りていない能力としては、やっぱり最初にビッグピクチャーを描く力が本当に弱い。このビッグピクチャーが描けないと、逆算というのはできないんですよね。このビッグピクチャーを描くには仮説力というものがもう絶対に必要で、仮説力がないとビッグピクチャーなんて描けない。一方でこの高度な仮説をつくるということは、仮設というのはアウトプットですから、やっぱり多くの知識と経験、インプットがないとアウトプットは出ないんですよね。そのアウトプットを今度はアウトカムにしていくわけですから、やっぱり高度な仮説をつくるためのインプットも少ないですねと。じゃあ、多くのインプットを得るには、知識と経験を得るには何が必要ですか。これは今回シリーズ2回目ですけども、1回目でお話した「早く動く」というところにやっぱり繋がってくるわけですよね。早く動いて失敗をすると。そして、その失敗から学んで、結果早く成功するという、この繰り返し。この好循環のサイクルを回していかないといけない。なので、やっぱりそこが一番日本企業の課題なのかなと。

これを大きく変えるには、やっぱりマインドセットを一新していかないと、なかなかこれはこういう思考には変われないと思うので。このマインドセットを得ないと、どんな戦略をつくっても結局それは俗人的で俗人性が残り、なおかつ積み上げ思考が非常に強いものになってしまうと思うので、早くマインドセットを切り替えるということが新興国市場では必要だと思います。

長くなりましたが、今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。