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第287回 アジア新興国では長期的な視点が重要

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、「アジア新興国市場は長期的な視点が重要だ」ということについてお話をしていきます。

今日のお話は、対象はFMCG(Fast Moving Consumer Goods)、食品・飲料・菓子・日用品等の消費財のメーカーを対象にしています。市場はアジア新興国、ASEANというふうにしておきたいと思います。そうは言っても、B2Bの製造業にとっても十分お役に立つ話かと思いますので、自分たちの事業に置き換えて聞いていただければと思います。

「アジア新興国市場は長期的な視点が重要だ」ということなんですが、これは何を言っているかと言うと、伝統小売の攻略がFMCGの業界にとっては非常に重要で、そうは言っても、伝統小売の攻略には時間が掛かりますよねと。でも、時間が掛かったとしても、それはメーカーにとってもう必須の話であって、今後、伝統小売がデジタル化していけばますます伝統小売の重要性というのは上がってくるので、長期的に考えて攻略をしていく必要が本当にありますよというお話です。

ちょっとスライドを見ていただいて。このスライドの通りなんですけども、下が投資で、上に行けば回収ですよね。右がずっと時間軸でこうあるんですが、日本国内の市場というのはこのFMCGの業界にとってはもうすでに土台があるわけですよね。販売チャネルもある、小売の信頼もある、お客様の支持もある、自分たちの市場に合った商品もあって、その中で日本の半年ぐらいに1回変わっていく日本人の特殊な消費者に対応してどんどん、どんどん、新製品を出していくんですが、基本的には新製品が出たら、国内市場で短期間ドーンとプロモーションを打てばグンと数字が上がっていく。もちろん売れるもの、売れないものってあるにせよ、長期的に投資が必要になるものというのはないわけですよね。ある程度、短期的に投資回収ができる。広告にこれだけ打ち込めばこれだけリターンがありますよと、ある程度短期で商品が成功だったのか駄目だったのかというのは見えてくるという、こういう市場なわけですよね。

一方でアジア新興国というのは緑のところなんですけども、投資の期間に時間が掛かります。これはお金の投資だけじゃなくて、販売チャネルをつくる労力とか、そういったものも含めてですけども、ある一定度掛かってきます。なんですけども、ある一定のところまでいけば、爆発的に中間層が伸びているわけですから、それがアジア新興国の最大の魅力ですから、日本の1億2,700万人、減りゆく1億2,700万人ではなくて、爆発的に成長している30億人をターゲットにしているわけですから、それだけ時間が掛かったとしても後に莫大な利益を会社にもたらします。だから、長い目で見ましょうねというのがアジア新興国なんですよね。そもそもアジア新興国の最大の特徴って、30億人に拡大する中間層、爆発的な拡大をしている中間層なわけですから、そこをまず考えるということは必要で。一方で日本というのはどんどん、どんどん、市場がシュリンクしていくと。食品であれば、どんどん、どんどん、高齢化していったら食べる量も少なくなってくる、日用品やら何やら使う量も少なくなってくる。なので、そうではなくて、若い年齢の中間層が爆発的に伸びているアジア新興国というのは魅力だよねというのがそもそものアジア新興国進出の始まりなわけですよね。

その中で伝統小売の攻略というのは、例えばASEANの伝統小売ってどれぐらいの比率かと言うと、約8割ぐらいは、金額ベースで伝統小売が売り上がっているんですよね。近代小売というのはまだまだ2割ぐらいで。数でいったら99%伝統小売なわけですよ。例えば、ベトナムの近代小売って主要どころ3,500ぐらいがせいぜいだと思います。一方で伝統小売は50万店存在する。フィリピンでは近代小売の主要どころ6,500店舗ぐらいだと思います。日本のセブンイレブンで2万店ありますからね。そんな中で伝統小売というのは80万店あると言われていて。インドネシアが最も近代小売がASEANの中では多いわけですけども、3万5,000店舗です、それでもたったの3万5,000店舗。一方で伝統小売どれぐらいあるかと言ったら300万店あるわけですよね。この伝統小売を攻略しないとアジア新興国の市場というのはなかなか旨味が得られない。

これは別の番組でもお話したと思いますけども、基本的には近代小売というのは棚代というのを取るわけですよね。彼らも売れないものを棚に置いておくつもりはないわけですから、いわゆる棚1SKUいくらで買わないといけない。こういう導入費とか強制的に強いられるプロモーションみたいなのが全部無駄になってしまう。なので、近代小売と伝統小売というのは両輪で進んでいかないといけないんだけども、近代小売の攻略は比較的早期にできても、伝統小売の攻略は時間が掛かるよねと。毎年1万店2万店ずつ伝統小売を増やしていかないといけない。これを増やしていくには自分たちの営業マンだけではなかなかこれは増えていかないので、ディストリビューション・チャネルをつくらないといけない。ディストリビューション・ネットワークをつくらないといけない。サブディストリビューターを含めて本当にマイクロディストリビューションできるようなディストリビューション・ネットワークを構築していかないといけない。これをドミナントでやっていかないといけないですね。近代小売と伝統小売の両輪で、かつ近代が立地しているエリアを中心にドミナントでつくっていかないといけない。これをやるにはやっぱり時間が掛かるんだけども、これが実現できている先進的なグローバル消費財メーカー、例えばネスレとかユニリーバ、P&G、ザ・コカ・コーラ・カンパニー、こういった企業というのは、アジア新興国から莫大な収益を得ているわけですから、そう考えると、長期的にやっていかないといけない。

もちろんいち早く入って先駆者メリットを取るということも重要だし、デファクトスタンダードになるということも重要なんだけども、一方で長期的にやっぱり考えていかないといけない。これも無策の長期というのが一番駄目で。実は日本企業、少なくなくて、無策で出たんだけども、毎年追加増資、追加増資でダラダラ、ダラダラ、ここまでやったんだからもうちょっと、もうちょっとでやっていくという、赤字の額もそんなにドーンというわけじゃないので、ちょろちょろ、ちょろちょろ、ちょろちょろ、じり貧になっていくという。こうではなくて、ある程度しっかり決めたところにしっかりと投資をして、長期で見ていくということをやっていかないと、なかなかアジア新興国市場というのは難しいですし、仮にそれをしっかりできれば、この伝統小売というのは…。よく伝統小売が近代小売に置き換わるんじゃないかという議論は日本でもよくされていますけども、そうではなくて、伝統小売というのはもうコンビニ以上に便利なんですよね。われわれにとってのコンビニ以上に便利で。ここにいわゆるネットのプラットフォーマーが今伝統小売のデジタル化をいろんなところで始めているので、僕は伝統小売はデジタル化して残っていくと思います。だって、コンビニよりももうマイクロリテールですから、こんなに便利なものはなくて、むしろ伝統小売がコンビニになっていくんじゃないかと言われていたんだけども、コンビニが僕は問屋になっていくんじゃないかと思っていて。なので、この伝統小売というのはデジタル化して、さらに息が長いものになっていくので、今この伝統小売の攻略のためのチャネルづくりに時間を割いても、このノウハウというのはメコン経済圏、それからインド、アフリカでも生かすことができますし、これだけデジタル化が進んでいけば、インド、アフリカの伝統小売なんて確実にデジタル化して残っていきますから。そう考えると、長期的に考えて、ASEAN市場の伝統小売の攻略に時間を取るというのは悪い話じゃないんじゃないかなというふうに思います。ぜひ皆さんも頑張ってみてください。

それでは今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。