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第289回 参入戦略策定までの6つのステップ その2

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、「参入戦略策定までの6つのステップ」ということで、前回このお話をしたのですが、短時間ではなかなかすべてを語りつくせないので、今日はもう1回やっていきたいと思います。前回ちょっと抜け漏れたこともあると思うので、その辺も含めて今回もう1回やっていきたいと思います。

前回もお話しましたけど、今回の話はいかに新興国に参入する際の参入戦略をつくるかというステップについてお話をします。どういうことをステップとしてやっていったらいいんですか、ということをお話をしていきます。対象は製造業です。B2C、B2B問わず製造業でございます。地域、対象地域は新興国全般なので、ASEANに限らずインドであったり、アフリカ、それから南米でも構いません。新興国全般のお話でございます。

それでは早速お話をしていきたいと思いますが、前回もお話した通り、参入戦略をつくるということにおいては何が重要かと言うと、可視化をするということが重要です。インプットを入れるということが重要。結局、何も現地の情報がなければ、どのように出ていくかなんて参入戦略をつくれないんですよね。何も分かりませんから、どうしていいかなんていうのはつくれない。そんな中でつくるものというのは当てずっぽうになっちゃうわけですよね。当てずっぽう戦略、たぶんこうなんじゃないかとか、自分の経験値だけが生きるわけですよね。もし仮に国内の経験値しかなければ、もしくは先進国の経験値しかなければ、これは新興国の参入戦略なんて、全く自分が想像していないようなことが起きているわけですから、なかなか具体的な戦略というのはつくれないので。なので、自分たちの戦略が、参入戦略が間違っているということにすら気付けないというケースが非常に多いんですよね。なので、「可視化をするということが非常に重要ですよ」ということをまず最初に申し上げておきたいと思います。

スライドをお願いします。どういうことを可視化していけば良いのかということで、この図の通り、5つのことを可視化をして、これをベースに参入戦略をつくるんですよと。戦略のつくり方というのはいろんなフレームワークがもう参考書が出ていますし、インターネットを調べたらいっぱい出てくると思うので、6番のお話というよりかは5番までの可視化をどれだけやれるかということが、この参入戦略の質を大きく左右するので、ここをおろそかにしないでください。この5つを可視化するということをやっていく。

例えば、市場環境の可視化というのはどういうことかと言うと、ぶっちゃけ分かりやすく言うと、「どんな市場なの?」ということを見ていくんですよね。「どれぐらい儲かるんですか」と。「どこがどういうふうに儲かるんですか」ということを具体的に見ていく。こういう数字を見ていこうとすると、定量的じゃないといけないですね、この市場の環境の可視化。マクロな情報である場合が多い。例えば、「その国の1人あたりのGDPはどうなんだ」とか、「GDP成長率は過去どうなんだ」「向こう5年の推移はどうなんだ」と。こういった情報ってセカンダリーの情報で、いわゆるシンクタンクとか国家の機関がすでに調べたものを見ること、GDPなんて自分たちで調べられるような話ではないので、そういうものを見ていくわけですよね。そうすると、意外に日本企業は、ここはできているんですよね。いわゆるコストもそんなに掛かってこないんですよ、市場環境の可視化というのは。もちろん、忘れてはいけないのは、外資が参入することになるので外資規制、どういう外資規制があるのかと。外資にとっては規制されていることというのがいっぱいありますから、こういったものを調べる。これは法律事務所を使う、現地の法律事務所を使う。ここは少しコストが上がるかもしれませんが、基本的にはそういったものを調べていく。これはいろんな観点があるので、自分たちの事業に合わせて、先ほど言った1人あたりのGDPとか、GDPの成長推移とか、人口とか、所得とか、こういった基本的なことにかかわらず、自分たちの事業に合わせていろんなデータを取っていくと。例えば、OECDとか、IMFとか、こういったところのデータを参考にすると非常にいいのかなと。JETROも昔に比べて今は非常に見やすいWebサイトでいろんな情報を出していますから、JETROの情報なんかも使っていくというのはよろしいんじゃないかなというふうに思います。

2つ目の競争環境の可視化。これが日本企業は非常に不得意なわけですけども、競合企業はどのぐらいの、「競合企業って一体どういうとこなんですか」「どういう競合がいるんですか」「その競合というのはどういう脅威を持っているんですか」「彼らの強みと弱みは何ですか」「彼らが過去10年何をやってきて、これから10年何をやろうとしているんですか」という、彼らが知られたくないような情報を取得するということは非常に重要で。なぜならば、自分たちの事業というのは、対競合との競争なわけですよね。必ず、日本企業というのは後発なので、日本企業が先に出ていってパイオニアになるというケースってそんなにないので、基本的には絶対的な王者がすでにいます。それも欧米の先進的なグローバル企業もいれば、もう今では中国やアジアの企業もいるし、現地のローカルの企業、あと日系企業、この三つ巴、四つ巴の戦いなので、彼らと戦ってどうなるのか、1位にならなくても、じゃあ、どうやって2位、3位を獲っていくのかということを考えると、競争環境の可視化というのはやっぱりすごい重要で。この競合調査というのは、もう餅は餅屋で産業調査の専門会社にお願いをする。別に私にお願いをしてくれというふうに申し上げているのではないですが、そういう企業にお願いをする。なんちゃら総研とか、外資のコンサルファームでもそういうことをやっていますから、そういったところにしっかりとお願いをしていくということは大変重要です。

あと、流通環境の調査。これも、いわゆる自分たちの流通の特殊性というものが何なのかということを見ていかないといけない。日本での流通の事情と、アジア新興国を問わず新興国での流通の特殊性というのはまた違うので、そういったことを見ていく。例えば、B2CのFMCGだったら「リスティング・フィーはどれぐらい掛かるんですか」「棚代はどれぐらい掛かるんですか」「強制的に小売りに強いられるプロモーションってぶっちゃけどれぐらいなんですか」ということをしっかり見ていかないといけないし、あと、ここでディストリビューターのこともしっかり見ていくということも非常に重要ですね。ディストリビューターの商習慣がどうなのか。例えば、ベトナムとかだと、基本的にはセールスをやるのはメーカーで、ディストリビューターというのはデリバリーしかしない。セールスとデリバリーの機能が分かれているなんていう国もあるわけですよね。なので、メーカーが積極的にセールスをやらないといけない。セールスができるディストリビューターなんてほんの一握りに限られているというケースもあるので、そんなことを見ていく。
消費者の可視化に関しては、「何を求めているのか」「どのような人が買うのか」「どこで買うのか」みたいな、こういったことが基本的には日本の消費者と大きく異なるわけですよね、アジア新興国の消費者は。なので、そういったことをしっかりと見ていくということが重要です。消費者インサイトをしっかり見ていくということが重要である。

5つ目のディストリビューターの可視化というのは、どんな規模のディストリビューターがそこにいて、どういうカテゴリーに強かったり、どういうふうに強いのか、彼らのスキルセットとマインドセットというのはどういうふうに強いのか。この番組でも過去に「スキルセットとマインドセットの違い」みたいな話、「ディストリビューターの競争力をどういうふうに見るか」みたいな話をしたと思うので、ちょっと検索して興味がある方は見ていただいたらと思いますが、そういうことをしっかり見ていくと。自分たちがディストリビューターと組むわけですから、B2Bだったら直販をするというケースもあるかもしれませんが、ディストリビューターをしっかり見ていくということをしないといけないので、そんなことをやっていく。

この5つの可視化をしっかりやれると、初めて可視化がパズルのように繋がっていって参入戦略が出来上がるということになるので、このインプットがやっぱり浅い企業は、それだけのアウトプットとして出てくる参入戦略も貧相なものになってしまうので、「いかに可視化をするか、市場を理解するかということが参入戦略を策定する上では大変重要ですよ」ということを覚えておいていただければなというふうに思います。

今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。