第293回 参入のための正しい4P分析
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、「参入のための正しい4P分析」ということでお話をしていきたいと思います。対象は製造業、B2B、B2C問いません。対象市場は新興国全般というふうになります。今日のお話なんですが、この4P分析は市場参入、新興国への市場参入をする上で非常に重要で、なかなか事業が現地でうまくいかない企業の大半の要因はこの4Pにあると言っても過言ではないぐらい、この4Pが重要なので、今日はそのお話をしていきたいと思います。日本企業が陥りやすい4Pの罠というか、間違った4Pで失敗している企業の4Pの法則みたいなところのお話を中心にしていきたいなというふうに思います。
では、スライドをお願いします。まず、この4Pなんですけども、4Pとターゲットの関係性というか、この4Pというのは、「プロダクト」「プライス」「プレイス」「プロモーション」、マーケティングミックス、別名4Pでございますが。これは、ターゲットに対しての4Pなんですよね。つまりは、ターゲットがまずありきなんですよ。ターゲットが明確になっていて、そこに4Pをぶつけていくということが非常に重要で、この順番を間違えちゃ駄目なんですよね。ターゲットがあって、そのターゲットに対して4Pをぶつけると。
しかしですね…。次のスライドをお願いします。多くの新興国市場で失敗している日本企業の特徴は、もう既に4Pが自分たちにはあって、そのある4Pをターゲットにぶつけた結果うまくいかないということになっているわけですよね。この図の通り、どういうことかと言うと、日本で実績のある商品をできればさほど変えずに、プロダクトですね。プライスは、少しは安くするけど、新興国なので、日本と同じぐらいの価格でできれば売りたい。そして、プレイスに関しては、日本で慣れ親しんだ、これはB2Cのことを言っていますね、近代小売を中心にとか、日本で慣れ親しんだ大企業、外資系企業を中心にとか。できれば実績が出るまでプロモーション投資はしたくないという。もう、この固まった4Pがあるわけですよ。分かりやすくFMCGの、B2Cのメーカーでこれは4Pを書いていますけども、あるわけですよね。もう日本のかつての実績、過去の実績というか、現状の実績、日本での実績をベースに4Pがもうほぼほぼ決まっちゃっていて、そして、その4Pをあてていきましょう。中間層が新興国は重要だということは分かっていながらも、この4Pを無理くりあてるんですよね。結果、中間層には売れずに富裕層に牌が上振れしてしまって、結果、新興国の富裕層というのはもうほんの一握りなので、なかなかシェアが伸びないと。じゃあ、この市場がもう少し成熟するまで待とうかということで、何年経ってもなかなかシェアが広がらないという、こういう状況に陥っている日系企業というのは非常に多くて。
言ったら、成功している企業は逆にもう最初からやっぱりターゲットありきなんですよね。ターゲットに対して4Pをつくり込んでいるので、日本の4Pとかは一切度外視で、現地では現地の4Pを、現地のターゲットに対してつくり込んでいく、これができている会社は成功しているし、できていない会社が失敗している。だから、うまくいっていない日本企業、シェアの獲れない日本企業の問題って非常にシンプルで、ここをいかに改善していくかということが非常に重要なので、問題の大半は、僕は4Pにあるというふうに確信しています。
次のスライドをお願いします。本来であれば、B2CのFMCG、ターゲット、ターゲットってFMCGの場合、FMCGってFast Moving Consumer Goodsの略ですけども、言ったら、食品とか飲料とか菓子とか日用品なんていうのは、100円、200円のものを売っているわけですよ。新興国だったら、10円、20円かもしれない。そうすると、数の原理が大変重要で、いかにたくさんの人に、いかに速い頻度で、いかに繰り返し、しかも永遠に買い続けてもらうかというビジネスモデルなわけですよね。そんなビジネスモデルということは、何が重要かと言うと、マスターゲットに対してあてていくということが重要で、そうすると中間層になるわけですよ。新興国の富裕層というのはもうほんの一握りで、以下中間層、貧困層なわけですから、ここにターゲットをあてていく。BoPとかMoPもそうですね。
そうすると、この図の通りなんですけども、4Pはこの中間層というターゲットに対して中間層が求める商品を、中間層が賄える価格、この「賄える」というのは大変重要で、買うなんていうことは誰でも1回ぐらいはできるんですよ、日用品だったらね。フェラーリを買うとか、お城を買うとか、これはもう一生に一度できる人、できない人というのは明確にいるので買えるという表現でいいんですけど、日用品とかの場合は賄えるという、誰でも1回ぐらいは買えるわけなので、賄えるというのは自分たちの生活に取り込むという定義ですから、賄える価格で。そして、中間層が買いやすい売り場に並べる。これはどういうことかと言うと、近代小売だけじゃなくて、伝統小売にもしっかり並べると。新興国の8割9割は伝統小売市場なんですよね。この伝統小売は、近代化はしていくんですけども、昨今のデジタル化の流れによって伝統小売自身がデジタル化していくと、これはかつて想定していた近代化されていくということがなくなって、近代小売に伝統小売はならなくて、伝統小売単体がデジタル化してさらに成長していくという可能性もあるので、やっぱり伝統小売は重要なんですよね。この伝統小売や中間層が買いやすい売り場、伝統小売が重要だというのは、彼らの市場の売上の8割9割が伝統小売を通じてみんな買い物をしているわけですから、そこに並べないでどうやって消費者、ターゲットに届くんだという話になるので、伝統小売はやっぱり重要です。中間層が選びたくなるような仕掛けをする。これは品質が良いのか何だか知りませんけど、消費者にとって1度も食べたこともなければ見たこともないような商品を買うかと言ったって買わないわけですよね。われわれと新興国の消費者との一番の違いは1ドルの重みなんですよ。私たちは1ドルで何かを買って食べてまずかったら二度と買わないと、3分後にはそのことを忘れている。けど、新興国の人は大切な1ドルを使って何を買おうか、まずかったら食べなきゃいいじゃんなんていうことではもう済まされないわけですよね。なので、実績のあるものしか買わない、知っているものしか買わない、誰かに勧められたものしか買わないという現実があるので。どれだけ日本製が素晴らしいとか、ああだこうだ言っても、やっぱり選びたくなるような仕掛けを全くしないでただ棚に並んでいたら、いつもの知っているほうを選ぶという結果になるわけですよね。なので、そこにいかに投資をするかということが大変重要です。
次のスライドをお願いします。すべての中心はターゲティングなんですよ。この図の通り、誰に売るのかということがやっぱりあって、この誰に売るのかがあって、初めて2、3、4、5の何を売るのか、いくらで売るのか、どこで売るのか、どう訴求するのかという4Pがあるということになるので、もうターゲットが絶対に先ですよ。そして、そのターゲットに対して4Pをいかにつくり込んでいくかということが大変重要で、新興国市場で失敗をしている日系企業の多くは、もう既に出来上がった4Pに対して、4Pをターゲットにぶつけているから失敗をするんですよという、そういうお話でございました。
それでは今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。