第312回 1カ国1代理店ではシェアは上がらない その4
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日でこの「1カ国1ディストリビューター制ではシェアが上がらない」というのを最後にしたいと思います。4回目ですかね。すみません、私の話が長くなっちゃって、4回になっちゃいましたけども、今日で言いたいことを全部言って説明をしきりたいと思います。よろしくお願いします。ということで、図をお願いします。先進グローバル消費財メーカーと日本の消費財メーカーでは、もうディストリビューターの数、使ってる数が全然違いますよというお話をしました。特にB2C、FMCGになればなるほど、これは中間層がターゲットで、中間層、数の勝負なわけですよね。いかにたくさんの人にいかに速い頻度で、いかに繰り返し、永遠に売り続けるかということが消費財メーカーにとって最大に重要なので、そうすると、1社のディストリビューターでは、到底じゃないですけど、このアジア新興国、アジアじゃなくても新興国のこの伝統小売と言われる数十万、数百万存在する小売に隅々まで配荷するということはもう不可能です。だって、ベトナム、この図、ベトナムは50万店あるんですよ。食品の伝統小売は30万店あるんですよ。じゃあ、仮に30万店だったとして、自分たちが何か食品を売っていて、お菓子でも売っていて、1社のディストリビューターに営業人が100人います。その100人のうちの10人が自分たちの商品を担当してくれているとします。「30万店を10人でやったら何年かかるんですか」という話になっちゃうんですよね。だからもう当然ながらこれは複数のディストリビューターを使わないといけない。サブディストリビューターを使っていると言うのであれば、それが何社いて、何人の営業マンが、どういう組織で、どういうふうに回っているんだということまでやっぱり可視化をしていかないと、本当に足りているのか、足りていないのかというところを見極めるということをやっていかないといけないですよね。ちょっとまた話が脱線しそうになったのであれですけども、基本的には、1ディストリビューターではシェアは上がらないですよと、こういう数の原理なのでね。
日本で、B2Bでもそうなんですけど、日本でね…。次のスライドをお願いします。日本で、この小さな島国と言われている日本でね、1カ国1ディストリビューター制のメーカーなんていますか?という話で、そんな、いないですよね。東京には東京の代理店がいて、大坂、名古屋、福岡、北海道、必ず複数の代理店販売店がいるんですよね。日本でそうやってやっているのに、なぜ海外に行ったらそこの部分の思考を停止して、とにかくこの人に任せておいたらきっとうまくいくだろうという、何か性善説的な妄想を膨らませて1カ国1ディストリビューター制にしてしまうと。理由を問われると、「管理が楽だから」とか、「自社内競合を防ぐため」と、こう言うんですけども、「もう1社では物理的にシェアが伸びないということは計算したら分かるでしょう」ということは端から分かっているわけなので、やっぱりこれはなかなか難しい。B2Bだったらいく場合もあります。例えば、装置を売っているようなメーカーとかだったら、基本的に1カ国に1個いれば、あとは地域のメンテナンス会社のメンテナンス網を整備するということは必要かもしれませんけど、基本的にはそんなに台数が出ないようなもの、プラントを売っているとか、そういうところは1カ国1ディストリビューター制でもいいかもしれませんけども、結局はなかなかそれでは無理だと。
なぜこういう問題に日本企業が陥るかと言うと、「誰と売るか」ということにフォーカスし過ぎなんですよね。「誰と売るか」というよりももっと重要なのは「誰に売るか」という話で、B2Bだったらどのユーザーに売りたいんだと、ベトナムならベトナムの、どのエリアにいる、どのユーザーなんだと、インドネシアだったらインドネシアのどの都市のどのユーザーに売りたいんだということをまず明確にする。B2Cだったら、どの消費者、B2Cの場合は中間層というのはもう絶対ね、数なのでね、そうすると、どの小売で売りたいのかということを明確にする。そうすると、その小売と強固な関係を今持っているのはどのディストリビューターなんですか、そのユーザーと強固な関係を持っているのはどのディストリビューターなんですか、ということが見えてくるので、そのディストリビューターと組む。1社で足りなかったら2社、2社で足りなかったら3社という話になるわけですよね。なので、やっぱり「誰と売るのか」ということよりも、「誰に売るんだ」ということをもっともっと明確にする必要があって、「誰に売るんだ」ということが明確にできると、じゃあ、「その人に売るためには誰とやればいいんだ」ということがより明確になるので。何となくターゲットがぼやんとあるので、何となく大きくて強そうなディストリビューターと組んでおけば安心かなみたいな、こんなかつての日本のいわゆる製品優位の時代のルールみたいな常識で今のアジア新興国でビジネスをしていたら、マーケットシェアは絶対獲れないので、考え方、マインドセットを大きく変えるということをしていく必要があると思います。
4回に続き、この「1カ国1ディストリビューターではシェアは上がらない」という話をしてまいりましたが、これで最後にしたいと思います。それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。