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第324回 ディストリビューターのスイートスポット その2

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、「ディストリビューターのスイートスポット」についてお話をしていきたいと思います。

前回、「スイートスポットとは何なのか」というお話をしました。このスイートスポットにはまってしまっているような企業というのは、なかなか売上が鈍化していて成長ができないという状況に陥っている。このスイートスポットから抜け出すということはすごく重要で。どうやって、じゃあ、抜け出していけばいいんだと。ディストリビューターにとってはもうぬるま湯なわけですよね。居心地にいい、今、ぬるま湯に浸かっていて、これ以上のことはしたくないですよと。前回お話したのは、今持っている彼らの顧客基盤以上のところに顧客を求めていかないと、売上というのは当然上がっていかない。もしくは今の顧客基盤の1社、1顧客あたりの購入量を増やしていくのか、もしくは新規に顧客を増やしていくのかって、この2択なわけですね。これをしないと、基本的には売上というのは上がっていかない。このスイートスポットにはまっている企業にとって、新たなアクションを取るということは、経営資源を使うということなので、やりたくないわけですよね。一族はもう十分資産があります。この資産を守るというところに思考がいってしまっているので、基本的に新たなチャレンジをするということよりも、むしろ今の労力で今の収益を得るほうが、もちろん彼らも理解している、ある一定の経営資源をしばらくの間投下をすれば、もしかしたら将来もっと大きな資産をつくることが、財産をつくることができるかもしれないという理解はあるものの、やっぱりかつての、彼らがかつて果敢にリスクを取ってきた当時の状態では、マインドセットがなかなかそうなっていなかったりするわけですね、代替わりもしているし。

一方で、これは日本企業側のスタンスが悪いということにも反映されるんですけども、売上を伸ばすために、あれをやろう、これをやろうといろいろなことを言ってくるんだけども、そこにいまいち戦略性がない、いわゆるマーケティングロジックにかなった話をしてこない。何か自分たちの日本での経験値をベースにこうだああだということを言ってくるんだけども、それをやらせる、もしくは細かなデータをくれくれと言ってきて、データだけ出させて、じゃあ、その、本来はディストリビューターからいろんなデータをもらって、そのデータを分析してこういうことをやろうとかっていう戦略提言をするためにデータをもらうのに、ややこしいExcel地獄のようなものを埋めさせられた割には、日本のメーカー側は、そのExcelを見て「ふむふむ」と言っているだけで何らフィードバックがないみたいなことが散々あるので、ディストリビューター側も、「どうせあなたたちの言うことを聞いても変わらないでしょう、何も」というふうに思ってしまっているというケースがあって。こういう長年培ってきたディストリビューターとメーカーとの関係って、やっぱり担当が数年で変わっていく、これは日本の会社は人事異動がありますからしょうがないんでしょうけども。また新人があてがわれて、またよく分かっていないのが来て、一応引き継ぎはされているけども、前の担当者は担当が変われば他人事になりますから、言ったらまた新規からと。こういう状態に慣れてくるとディストリビューターは、逆にそのほうがいいなと、また分からないやつが来る、適当に言い訳しておけばまた数年したらまた次のやつが来るので、また適当に説明しておけば、また次のやつが来るみたいな、そういう循環がずっとありますよと。一方として、じゃあ、日本のメーカー側は海外担当役員がトップダウンのいわゆるコミュニケーションをディストリビューターの社長連中と取るかと言うと、なかなかそこも取っている人というのは少ない、取っている企業というのは少なかったりするんですよね。だから、こういうことを時間をかけてやっていくということはまず1つ中長期的な事項として絶対必要です。今までとの付き合い方を大きく変えていくということをやっぱりやっていかないといけない。

もう1つは、何かのデータを欲しいとか、何かの施策を一緒にやっていくというときに、理論的に話していくということはすごく重要で、理論的、合理的に話していくということはすごく重要で、それを理論的であり、合理的なものが戦略なわけなので、そこを彼らと協議をして、「私たちはここを目指したいんだ」と、ビジョン・ミッションみたいなところの話も絶対必要で、「ただ売上を上げたい」ではなくて、「私たちはこの国で何を実現したいのか」と、「それでそれを実現するためにはこの目標に到達しないといけないんだ」と、「この目標に到達するためには、こういう戦略とこういう戦術で戦いたいんだけど、どう思う?」ということを、論理だって説明をしていく。それに対して彼らがどれぐらい、最初は協力的じゃないところを、どれぐらいの熱量が入ってきて、彼らの気持ちのトリガーがどこかでスイッチングが変わって協力的になって、そして一緒にやっていく、巻き込んでいくということを、そういうことをやっていかないと、何か部分最適的な単発の施策を投げてみて、「これをやってみないか」とかって、「結局、やるのは私たちでしょう」みたいな、「お金は出さない」みたいな、こういうことの繰り返しだと、やっぱりなかなかディストリビューターもスイートスポットから抜け出せないので、これ、ディストリビューターがスイートスポットにはまるということは、これは経済合理性を考えると、ごくごく当たり前のことなんですよね。ある程度潤いました。ファミリービジネスです。別に外部の株主もいません。そんなずっと成長し続けるという外部のプレッシャーもないし、自分たちがどれだけ潤っていくかということが重要ですよと。当然の経済合理性なんですよね。そのスイートスポットをぶち破らせるためには、やっぱり理念が必要だし、じゃあ、その理念のためのミッション・目標・目的が必要だし、じゃあ、それを達成させるための戦略だったり戦術が必要だし、それを日本のメーカー側が本社としてしっかりロジカルに持って、それを彼らと議論をしていくということをやらないと、本当の意味でのスイートスポットからの脱出というのは難しくて、それができると、もうスイートスポットに入るということはなかなかなくなるわけですね。だって、理念と目標が共有されていますから、戦略も固まって、戦術を彼らが実行するという。新たなメーカーとディストリビューターとの関係性ができていく。こうなったらめちゃめちゃ強いですよね。これがまさにP&Gとかネスレがディストリビューターとやっていることなんですよね。日本企業の場合は、基本的には、「僕つくる人、売るのはあなたね、お金は出せないけど頑張って売ってください」みたいな、このやり方だと、なかなかもうグローバル競争、新興国では勝てないので、スイートスポットにはまってしまっているというところからも抜け出すことは難しいと思います。

それでは今日はこれぐらいにして、また皆さん次回お会いいたしましょう。