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第335回 海外展開に失敗する中小企業3つのパターン

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、中堅中小企業のための海外展開ということでお話をしていきたいなというふうに思います。

この番組で、過去、中小企業向けのお話ってそんなにしてこなかったと思うんですけども、今日は中小企業のお話をしていきたいなと。実際に私のクライアントも2割ぐらいは中小企業さんで、中堅を含めると3割ぐらいにはなりますので、大企業とは全く戦い方を変えなければいけない中小企業のお話をしていきたいなというふうに思います。

重要なのが中小企業の定義です。国が定義しているもの、皆さんがイメージしているもの、中小企業って人によって本当にどれぐらいの規模の企業を中小企業と定義するのかっていうことは変わってくるので。私の定義は、売上が数十億円~数百億円を中小企業というふうに定義をしております。売上数百億円後半~1,000億円程度を中堅企業と。それ以上が大企業、1兆円以上が超大企業というふうに定義をしているんですが、その中で今回は中堅中小に絞っていきたいなと、やや中小寄りに絞っていきたいなというふうに思っております。ただ、これは10億円~数百億円ということですので、大企業の一部門の、例えばASEANの1カ国の売上って数十億とか、まだ始めたばかりで数億円ぐらいの売上にしかなってないなんていうことも往々にしてあるので、大企業の一部門のお話として聞いていただいても十分お役には立つんじゃないかなというふうに思います。

中小企業の海外展開は、基本的にうまくいかない。うまくいっている事例って本当に少なくて。一部のメディアによって瞬間的にうまくいっているように見せるということはあるのかもしれないんですが、基本的に継続的にうまくいき続けている企業というのはなかなか少ないです。その中で、中小企業の失敗のパターンってやっぱりいくつかあって。私は3つぐらいに分類をしているんですが、その3つについて、まずご紹介をしていきたいなというふうに思います。

スライドをお願いします。1つがこのスライドの通り、突進パターンというふうに書いていますが、基本的にどのようなリスクがあるかすら想定ができていないというケースが非常に多い。これは本人はできているつもりなんですよね。中小企業の場合、社長が海外やるぞと言って行くんですけども、社長本人が想定できているつもりでいるんですけど、実際は想定できていない。何が分かっていないかが分かっていないという、非常にこれは問題な状態であるということが多くて。日本での実績がある、私はもう海外にも行っているし、だいたい分かっているんだと、これだけのことを日本でやってきたんだから、だいたい分かっているんだということでボーンと行くんですけども、あまりにも違い過ぎて、分かっていないことに気付かない。出て何年かしてやっぱり実績が出ないので、3年4年してやっぱり無理だったということで戻ってこられるというケースは非常に多くて。この突進パターンに陥ってしまっていると、なかなか周りがどう言っても聞く耳を持たないのが中小企業の社長の特徴ですから、一旦こけないとなかなかやり直しが難しい。一方で慎重な社長さん、人の話をしっかり聞く社長さんのほうが比較的新興国は慎重にやれているんじゃないかなというふうに思います。

次が、これが一番最悪なパターンというふうに言ってもいいかもしれないんですけど、他人事パターンというやつなんですが。中小企業の海外展開って行政からいろんな支援が出たりするんですよね。ジェトロやジャイカが調査費用の2/3を補填したり、半分を出してくれたりとかって、いろんな支援があるんですけども、経済産業省もいろいろやっていますけども。そういったところ頼りになってしまう。中小企業だから、行政機関や何か周りが支援してもらって当たり前ですと。コンサルのところに来て、「中小企業なので支援してください。売れたらお代は払います」というようなことを言われる方もいらっしゃるんですけど、なかなかそういうかたちで支援するのは難しいよねと。労力がかかりますから、時間もかかりますから、新興国の展開というのは。本来はその事業をやられる中小企業自身が取るべきリスクを、これは行政が取るものでもないし、支援会社が取るべきものでもないと。であれば、行政なり支援会社がそのあとの果実もしっかり取るべきなので、リスクを取ることを嫌って、中小企業なので支援されて当たり前だという、この本当に他人事のパターンでやられようとするという中小企業も比較的多いですね。こういうパターンはほぼ成功しない、ほぼというか、100%成功しないという、こういうケースがあります。

3つ目。3つ目が性善説パターンという次のスライドですけども。ロジックよりも出会いと感覚でパートナーを決めて、現地のことは相手にすべて委ねるということで。あまりロジックとかは関係ないんですよね。現地でいろんな人に出会うんですよね、中小企業が海外に行くと。そのときの感覚でパートナーをパッと決めるんですけども、なぜここがパートナーでなければいけないのか、A社と出会ってなぜB社ではなく、C社ではなく、D社ではなく、このA社でないといけないのかというようなことをロジカルに考えるということをあまりやらない、そのときの直観、出会いで決めてしまうと。自分たちはものづくりはできるんだけども、売ること、現地のことはよく分からないので、あとはお任せですと。出会った相手が日本語でもしゃべれるものなら、もう本当に相思相愛のパートナー、運命なんだというふうに錯覚をして、どんどんのめり込んでいくというケースが結構あって。彼女とか奥さんは出会いで決めていいと思うんですよね。これを戦略的に彼女を決めるとか、戦略的に奥さんを決めるって、こんないやらしい話はないですから、人は出会いでいいと思うんですよね、友達も彼女も奥さんも。ただ、ビジネスのパートナーは、やっぱり戦略的に決めていかないといけない。ロジックが合わないと、これは瞬間風速的にはよくても、継続的に良いパートナー関係を築いていくということはなかなか難しいので、性善説で進んでいくというのは難しいよねと。特に日本だと、性善説で進んでいっても特に問題って起きないわけですよね。一方で、新興国って性善説で進んでいくと本当に大きな失敗をしてしまう。すべてを疑ってかかっていくというか、リスクをつぶしてかかっていかないと、日本では起こり得ないことが起こると。よく日本企業が騙されたと、新興国に行って騙された。最近は聞くのも少なくなりましたけども、そんな話を一昔前は聞いてましたけど、これはいわゆる日本の性善説で新興国に出ていっているので、向こうの人たちって別に騙している感覚はないんですよね。騙されるほうが悪いというような感覚だったりもするので、基本的には性善説では駄目ですよ、だから、出会いで決めないということが非常に重要であるということでございます。

途中になってしまいましたけど、時間なので今日はこれぐらいにしたいと思います。次回、引き続きお話をしていきたいと思います。大企業とは戦略が大きく中小企業は異なります。今回は失敗するパターンを3パターンぐらい紹介しましたけども、次回は大企業とどこをどう変えて戦っていくのかということを、今後何回かに分けてシリーズでお話をしていきたいなというふうに思います。それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。