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第340回 中小企業の「海外に出ない戦略」 その3

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日で3回目ですかね、前回に引き続き、中小企業の海外展開、「出ない戦略」についてお話をしていきたいと思います。

ここで言う中小企業とは、売上数十億円~数百億円でしっかり利益が出ている企業ですよ、というふうに定義をしております。

中小企業がグローバル展開をする際に、私は「出ない戦略を徹底してください」と。「とにかく海外に法人を出すな」というお話をしました。なぜならば、基本的には海外で売上を上げる、とくに新興国で売上を上げるというのは非常に難易度が高くて、想定通りにはいかない、99.9%いかないと思ったほうがいいでしょうと。3年で黒字化するつもりが、4年、5年、6年と延びている大企業をさんざん見てきているので、経営資源が圧倒的に少ない中小企業がそれを計画通りにやっていくということは難しいです。利益が計画通りにいかない中で現地に法人を持つということは、出血をし続けるということなので、利益が出るまで出血が止まらないわけですよね。出血をしたまま戦うというのは、これは非常に難しいし、多くの場合は途中でくじけて撤退というのをたくさんこの20年間で見てきました。なので、基本的には中小企業は出ないということが前提です。

この番組はすべて製造業が対象なので、製造業前提でお話をしていますが、その中で、じゃあ、どうすればいいのかということで、「輸出でやりましょうね」ということでお話をして。輸出の場合は、B2Cのお話を前回したのかな。そのB2Cの企業は、まず国を選びなさいと。選んだ国によって難易度が全然違いますよと。ベトナムに中小企業が輸出でビジネスをやるのとマレーシアをやるのでは全然違います。なぜならば、マレーシアはSMTで、シンガポール・マレーシア・タイの先進ASEANの一角を担っていて1人あたりの所得も圧倒的に違います。そうすると、輸出でやるということは、100円のものが150円200円になる。その中でマレーシアではそれを買える層がベトナムよりも圧倒的に多いです。そうすると、皆さんの商品が売れる確率論が各段に上がる。一方で、ベトナムは8割以上が伝統小売の市場。伝統小売に輸出してきたものは、輸入したもの、輸入品は並びませんので、基本的には3,000店舗強ぐらいの近代小売に並べることになる。3,000店舗をやるためにベトナムに出て苦労するんだったら、国内の地方都市を狙ったほうがいいんじゃないですかということをお話したので、国選び、気を付けてくださいねということと。

あと、都市をやるんですよと。ベトナムをやると言ってもホーチミンをやるんだし、マレーシアをやると言ってもクアラルンプール、KL(ケーエル)をやるんですと。もしくはジョホールをやるんですと。タイをやるのではなくてバンコクをやるんですと。基本的には郊外とか地方の地域というのは所得がどんどん下がっていくので、首都を狙う。首都と地方の所得の格差が、日本はだいたいなれているのかもしれないですけど、こんなに差があるので、基本的には首都を狙ってくださいねというお話をしました。

出ないで輸出でやりますと。輸出である程度天井がくるので、でも、天井がくるということは、ある程度輸出で、菓子で確か例を例えたのかな、菓子でね、20億ぐらいいけるんですよ、1カ国ASEANで。20億ぐらいまでいったら初めてどうするかということを考えたらいい。現地に生産拠点を持つのとか、現地に販売拠点を持とうとか、そういうふうに考えたらいいので、まず1つB2Cはそうですよと。

B2Bは、じゃあ、どうしようという話が今日の本題なんですが、B2Bはね、産業集積地なんですよね。部品をつくっているということで、その部品を工場で何か組み立てて完成品にするためにその部品が必要であるということは、その部品をたくさん使う産業が集積しているエリアに出るということが必要で。国でもないし、都市でもないんですよ。産業集積地なんですね。

新興国全体を見たときに、いろんな生産工場があるわけで。大きく分けると、日系の工場、外資系の工場、中国ローカル系の工場というふうに3つに分類できる。そうすると、ハードルが一番低いのが日系です。だって、日本人だし、日本でも取引しているかもしれないし、お互い勝手が分かっているので日系の部品を買ってくれやすい。一方で、最近はローカルの部品でももう品質が変わらないからローカルの部品を買うよというところも当然増えてきているんですけど、理論上はそうですよね。次に外資系。外資系はローカルの企業や中国企業よりもお金を持っているし、売っているものの単価も高いので、基本的には高い部品を買える。一方で、中国製やローカル製は、そもそも完成品になったときの値段が安いのに高い部品を買えるわけないんですよね。一番ハードルが高い。そう考えたときに、やっぱり狙うべきは日系、外資系から狙っていくということをやっていく。もうね、日系企業も、もうこの部品はローカルに切り替えてしまっているとかというところはもう本当に20年前ぐらいから始まっていたんですけど、もうそれがだいぶ浸透しちゃっているところは、いくら仕込んでも部品の現地調達なんていうのは、もう、進んでいる産業に関しては、もう、いくらあがいてもなかなか難しいところがあるので、やっぱり別のかたちで付加価値を出していくしかないので、そういう部品は対象外ではありますが、B2Bは産業集積地を狙いましょうというのが1つ大きな方向でございます。

B2Bも、生産工場をつくるというのが、例えば現地にいるメーカーさんが、その部品を大量に毎年買うんだということが決まって、昔からある、いわゆる親会社というか、納品先に引っ張られて出ていく海外展開とか、日本でつくっていたらコストが合わないので海外に工場を、生産拠点を移転して、それをまた日本でまた輸入し直して使うみたいなね、こういう展開であればいいと思いますけども。基本的に現地でつくったものを現地で売ると言ってもなかなか売れないので、やっぱり輸出でやっていく、中小企業は、というのがいいと思います。
あまり中小企業は海外に工場を持ってという、もう時代じゃないですよね。日系企業が、今後、完成品メーカーがあらゆるインダストリーで本当にグローバル競争を勝てるのかということを考えていかなきゃいけない、中小企業の部品メーカーはですね。なぜならば、グローバル競争で自分が属しているインダストリーの日系企業が負けたら、結局、そこを相手に商売していたら、自分たちの商売もどんどん、どんどん、小さくなってくるわけですよね。だから、例えば、自分たちはこのインダストリーで部品をつくっているとなったら、そのインダストリーの完成品メーカーのグローバル競争が一体どうなっているのかを見極めて、中小企業だから海外の外資系の企業とは取引できないとか、難しいとか、ローカル系はどうのこうのと言っている場合ではなくて、完成品メーカーのグローバル競争がどうなっているかというのはやっぱり常に見て、勝ち馬に乗っていくということをやらないと、もう昔みたいに、上の言うことを聞いていいものをしっかりつくっていれば買ってくれるんだという時代はなかなか難しくなってきている。日系の完成品、大手完成品メーカーがグローバルで負けたら、そのまま芋づる式に負けていくということになるので、もう系列とかって言っている場合ではないということは認識をするべきだなというふうに思います。

いろんなインダストリーを見てきて、日系企業は必ずしもグローバル競争に勝てているかと言うと、そうではないというか、かなりの領域で負け始めているので、そこは1つ、中小企業もこれから視点を変えるというか、視野を変えて見ていく必要があるんじゃないかなというふうに思います。

それでは今日はこれぐらいにして、また皆さん次回お会いいたしましょう。