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第385回 【Q&A】新興国展開で最も重要なこと その2

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、皆さんからの質問にお答えをしていきたいと思います。

スライドをお願いします。前回もお話しましたけども、「新興国市場で成功するために最も重要なことは」ということで、消費財メーカーさんからの質問、「新興国市場で成功するために最も重要なこと」、最も重要なことなんですけども、これはいわゆる、どの国のどの都市に、どういう状態でどういう企業が出るかによって、誰にとってによって「最も」が変わってくるので、いくつかの「最も重要なこと」をお話していきますよということで前回お話をして。前回は、ターゲットと4P、4Cの重要性みたいなところをお話したんですけども。

今回は、可視化についてお話をしていきたいなというふうに思います。可視化なんですけども、過去、長い間、日本の企業の新興国展開を支援していく中でものすごく感じるのは、日本企業は可視化が非常に不十分、調査が非常に不十分というふうに申し上げたほうがいいと思うんですけど、日本国内だと消費者系の調査を散々やるんですよね。調査って可視化の行為、調査=可視化なんですけど、調査って、消費者を可視化する消費者系の調査というものと、産業構造そのものを可視化するような産業調査みたいなものがあるんですよね。日本国内の場合だと、産業構造を可視化したりとか、競合のことを深堀りしたりとかっていうことはもうある程度分かっていることなので、土台が出来上がっているのであんまり日本国内で産業系の調査を自分たちの産業においてやることというのはそんなにないんですよね。一方で、非常に半年周期で変わっていくようなマニアックな消費者のインサイトみたいなところを見ていくみたいな、そういう消費者調査は本当に頻繁にやりますと。習慣のようにやりますと。

なんですけど、一方海外に出ると、消費者の調査というものはもちろんそうなんだけど、そもそもその前に「どういう市場なんだっけ、この市場は」という産業系の調査、可視化が本当に重要で、ここをやっぱりやらない、不十分であるという企業が本当に多い。これってどういうことかと言うと、やらずして出ていって、トライアンドエラーで進んでいっているというのが今の現状なんですけど。これから海外、新興国に新規で行くなんていう企業というのは大手だともう本当にないので、もうすでに出ているという企業、うちのクライアントもほぼ100%出ていますというクライアントがほとんどなので。そんな中で自分たちのいわゆるその市場での能力、戦闘能力という言葉が適切なのかどうかはちょっとあれですけども、ケイパビリティみたいなものがどれぐらいなのかということを明確に分かっていない、基準値がないと言ったほうがいいですかね。例えば、主要競合の能力が100とした場合、自分たちは果たしてどれぐらいなの?120なの?それとも80なの?と。いやいや、50なの?30なの?みたいなところの明確な基準値を数値で持っていない。これってなぜ持てていないかと言うと、可視化できていないからなんですよね。産業構造、市場構造を可視化できていないので、自分たちがどれぐらいできているかというのが分からない。

また、自分たちのディストリビューターのことですらしっかりと把握できていなかったりする。自分たちのディストリビューターは、主要競合のディストリビューターと比べてどれぐらいの力の差があるんだろう?競争優位でどれぐらいの差が開いているんだろう?もしくは自分たちのディストリビューターのその先のクライアントってどういうところなんだろう?自分たちのディストリビューターは日々どういう活動を誰に向けてやっているんだろう?どういうKPIに対して日々活動しているんだろう?ということが明確に分かっていなかったりする。

特に流通構造については可視化が不十分である。ただ、ひたすら自分たちの国内での成功体験がベースになっていて、可視化をするということよりも、自分たちは良いものを持っているし、良いものを売っているんだから、なんとかなるでしょうと。多少高くても市場が追いついてくるんじゃないかということでずっと突き進んでいる間に中国を中心としたアジアの企業のレベルが上がってきて、非常に厳しい戦いを新興国でも強いられているということが実態で。可視化ってインプットなんですけど、なぜ日本企業が戦略が弱いとか、戦略がないと言われるかと言うと、戦略ってアウトプットなんですよね。このアウトプットを、やっぱり高いアウトプットを出すためには、たくさんのインプットを入れないといけない。もちろんこのインプットのほうが100だったら、アウトプットが100になるかと言ったらそうではなくて、入れたインプットをどうやって内部で知識と過去の経験値で革新的なアウトプットに変えるか。100入れたものを1,000、10,000に変えるかというものは、もちろんこの内部のものがあるんですけども、少なからずやっぱりインプットがないと良いアウトプットなんて出ないし、戦略をアウトプットと定義するのであれば、その戦略を実行して得た利益がアウトカムなわけですね。アウトカムなんて絶対に出ないですよね。

多くの日本企業の失敗事例は、「えっ、こんなことも可視化できていなかったの?」「こんなことは戦う前に分かっていたじゃないの?」というようなことがやっぱり非常に多い。なので、可視化をする、可視化に投資をしていく、予算をかけるということをやっぱりしっかりやっていかないといけない。分からないことを調べると。分からないことに対して対策を打つということがそもそも戦略なわけなのに、分からないことが、何が分かっていないのかが分かっていないみたいな企業が非常に多くて。そうすると、戦略もクソもないですよね。対策ではなくて、自分たちの成功体験をひたすら実行していくと。マーケットが変わっているのに、自分たちの過去の成功体験をひたすら実行していく。これでは永遠に勝てないわけですよね。マーケットは国内のマーケットとは違うし、さらにマーケットは10年単位で変化していく、変わっていっているという。そこに対して古い成功体験をぶつけていっているわけですから、これは戦略でも何でもなくて、単に古い成功体験をぶつけているだけと。なので、可視化ということをやっぱり1つ非常に重要なポイントとして理解をしてもらうということが大変重要なんじゃないかなというふうに思います。可視化をすれば今以上にいろんなことが見えてくるし、そこに対策を打つということは容易になると思います。

次回もまた、「新興国市場で成功するために重要なこと」ということで別の観点でお話をしていきたいと思います。

それではまた、皆さん、次回お会いいたしましょう。