第386回 【Q&A】新興国展開で最も重要なこと その3
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も前回に引き続き、「新興国で成功するために最も重要なこと」ということでお話をしていきたいと思います。消費財メーカーからの質問で「新興国市場で最も重要なことは何ですか?」ということなんですけども、誰にとってなのかによって「最も重要なこと」って変わりますよと。誰が、どの国のどの都市に、どういうふうに、どんな業種で出るかによって、最も重要なことって、それはもちろん変わってくるので、この回答としては、いろんなケースを想定して「最も重要なことは何なのか」ということで、前回、前々回ぐらいからお話をしていますけども、今日もまた別の観点でお話をしていこうかなというふうに思います。今日は「日本企業にとって最も重要なこと」、これはB2Cだけじゃなくて、B2Bも全然当てはまりますので、必ずしも消費財メーカーだけじゃないということは先に申し上げておきます。
重要なことですけども、日本企業の間違い、よくおかしてしまう間違いの中で、「誰と売るか」よりも「誰に売るか」のほうが圧倒的に重要ですよということを今日は少しお話をしていこうかなというふうに思います。これってターゲティングとパートナーの話なんですよね。ターゲットとパートナーの話で。「誰と売るか」というのはパートナーの話なんですよね。一方で、「誰に売るか」というのはターゲティングの話で。これ、どっちが先か、どっちが上位の概念かと言うと、絶対に「誰に売るか」なんですよね。「誰に売るか」というターゲットがあって、その次に「誰と売るか」ということが来ないといけないのにも関わらず、多くの日本企業は「誰に売るか」という問題はなんとなくぼやーっとさせたまま、とにかく「誰と売るか」にフォーカスをする。この「誰と売るか」も基本的には大きいところ、財閥系、大企業、現地の有力企業、そういったところにほぼ決まってきてしまう。これが非常に失敗の要因として多くて。実はなんとか系、財閥系と合弁会社設立しました。4年、5年後に提携解消しましたみたいなIRがさらっと出ている。合弁設立のときは日経新聞でドーンと記事が出るんですけど、結局5年ぐらいすると会社のリリースでひっそり提携解消しましたみたいなニュースというのは過去ごまんとあって、この20年間もたくさん見てきましたけども。
これって結局、ターゲットのほうがすごく重要だと言っているのは、なぜならば、ターゲットに売れるところと売るということがすごく重要なわけですよね。でかいパートナーとか、財閥系だとか、優良企業とか、そんなことはまったく関係なくて、自分たちの売りたい相手に売れる企業、これがいわゆるパートナーとしてはベストな相手のはずなんですよ。にもかかわらず、ターゲットがぼんやりしているから、結局でっかいところが良いみたいな発想に陥ってしまって、蓋を開けてみたら、結局、自分たちがやろうとしていることってこれぐらいのことなのに、組んだターゲットというのは本当に大きい企業だから、いわゆる間尺が合わないというか、全然結果が出ないと、自分たちの求めていることとパートナーの求めていることに非常に大きな乖離があってなかなかうまくいかなかったなんていう事例はごまんとあるわけなんですよね。
ターゲットを明確に持つということがなぜすごく重要かと言うと、例えばこれは消費財と言っているので、例えばフィリピンですと。フィリピンでは近代小売、主要な近代小売はSM、それからピュアゴールド、ロビンソンズですと。この3大主要小売のこの棚に5SKUずつ確実に入れると。これがなされなければ80万店存在する、市場の8割を占める伝統小売には絶対に商品は流れませんという市場構造ができているとすると、ターゲットはまずもってこの3つの近代小売と、この80万店のうち少なくとも20万店ぐらいは獲ったほうがいいので、伝統小売なわけですよね。そうすると、パートナーってどこかと言うと、この3大近代小売と80万店存在する伝統小売に売れる先がパートナーとなるべきなので、やっぱりターゲットを先に決めるということを絶対にしないといけない。
じゃあ、そのパートナーがその時点で、近代小売のこの3大近代小売はここで、A社でいいけども、このディストリビューター、伝統小売に関しては複数のこれだけのディストリビューターをこういうふうに配置しないと難しいよね、これは主要競合を見てもそうだよねということが分かって初めてパートナーというものがどこになるべきかということを決めていくわけなので、絶対的にターゲットなんですよね。
それを日本企業の多くは、まず「誰と売るか」ありきで始まってしまって、その「誰と」ということがでかい、でかければいい。そのでかいところが売れるところというのは、きっと私たちの求めているターゲットだろうという希望的観測でふやっとしたまま進んでしまう。結果、蓋を開けてみたら失敗しましたと。これで成功するって万に1つなんですよね。運がよければ万に1つ成功するけども、けど、そんな成功は再現性がないので、結局、フィリピンでは成功したけど、インドネシアでは成功しないよね、ベトナムでは成功しないよね、どこどこでは成功しないよね、ということで成功が連鎖していかない。なので、自分たちの勝ちパターンになっていかないということになると。
このターゲットありきですよ、「誰と売るか」よりも「誰に売るか」が重要だよ、ということは本当に重要なので、もう1回、次回お話をしていきたいなというふうに思います。
今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。