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第393回 【Q&A】新興国展開で最も重要なこと その10

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、皆さんからの質問にお答えをしていきたいと思います。

早速質問ですけども、「新興国で成功するために最も重要なこととは」ということで、今日はその10ですかね、その10。もう本当に今日で最後にします。最も重要なことなので本来は1つであるべきなんですが、どういうインダストリーの企業が、どの国のどの都市で、何をするかによって最も重要なことは変わるだろうということで、私の支援経験の中で本当に重要だなということを、消費財メーカーからの質問だったんですけど、B2C、B2B問わずいろいろとお話をしてきたというのが、その10の最後なんですけども、一旦これで切ろうかなというふうに思います。

今日のお話なんですけども、人材、採用みたいなところについてお話をしていきたいなというふうに思います。よくこの仕事をしていると、優秀な現地の人材の採用に困っているという声を聞きます。すぐ辞めてしまうであったり、粘り強さがないとか、転職が当たり前だとか、そういうお話を結構聞くケースが多くて、どうしたらいいんですかということをよく聞くと。私は、いろんなレイヤーの人材がいると思うんですけど、皆さん共通して困っているのは、いわゆるマーケティングの領域でセールスレベルの人材ですよね。本当に経営人材でもないですし、マネージャー及びセールスレベルの人材、ここに困っていますと。その中で先進的なグローバル企業と日本企業を見ていて圧倒的に違うなというふうに感じるのが、日本企業はとにかく優秀な人材を採用しようとするという、ここが基本的にあって、とにかく優秀。じゃあ、「優秀の定義って何ですか?」と聞いたときにいまいちぼんやりしている。何をもって優秀なのかということがぼんやりしたまま、とにかく優秀な人材を採用したい。

一方で、じゃあ、欧米の先進的なグローバル企業はどうかと言うと、自分たちがやらせたいジョブ・ディスクリプションというのが明確にあって、その仕事に合致した人材を採用したいという、こういう採用方法なんですよね。なので、優秀過ぎても駄目だし、優秀過ぎない、能力が足りな過ぎても駄目で、この今やらせようとしているジョブ・ディスクリプションに合致した人材を採用するという、そういうことが非常に明確。日本企業ってジョブ・ディスクリプションが非常にアバウトで、よくあるのが、これは私の仕事じゃないとか、こういう採用じゃなかったとかっていう問題もあるわけなんですけど、結局なんでもオールマイティにできるって、日本人ってそうですよね、空気を読んで全部うまくやるみたいな、大卒だったら空気読んでうまく全部やるみたいな、そういうあれがあると思うんですけど、そういうことはあまり求めていなくて。あと、耐えるとかね、意味不明なロイヤリティとか、そういう宗教ちっくなロイヤリティみたいな、そういうこともまったく求めていなくて。そこっていうのはやっぱりやるべきジョブ・ディスクリプションに対する報酬、インセンティブがどうなのかということでしかなくて、非常にシンプルですよね。目に見えないものに何か委ねるみたいなことはなくて、そんなところがやっぱり大きく違うなと。

なぜ辞めるのかって、例えばセールスをすると、毎日顧客のところに行ってセールスをするという業務に対して、例えば、B2Cとかで伝統小売と言われるようなパパママショップに毎日同じ道の同じパパママショップに行って注文を聞いて、前回注文を受けて代金を回収してみたいな業務をするのに、そんなに優秀な人を雇ってしまったら当然すぐ辞めてしまいますよね。自分は優秀でという認識があって、そんなことはすぐできてしまうと。三日もやったら飽きてしまって辞めてしまうという。それはそうですよね。なので、優秀過ぎる必要はなくて、その仕事を愚直に毎日繰り返し飽きずにやれるかという、これはどっちが上とかどっちが下とか、良いとか悪いとか、そういう話をしているんじゃなくて、そういうジョブ・ディスクリプションに合致した人材を採用しないから辞めてしまうだけの話であって。

そもそも日本企業というのは欧米の先進的なグローバル企業に比べると、あまり魅力的じゃないわけですよね。お給料の面、それから暗黙の了解みたいなのが非常に多くて、見えないところの世界でいろんなことが決まっていくということは多くあるわけですよね。もちろん欧米の企業もそういうことはあるんですよ。白人社会の中のそういうものというのは当然あるんですけども。けど、少なからず日本企業よりかはやっぱり可視化されている部分というのが大きいので。そういう意味からも、やっぱり合致していないと余計に辞めてしまうんですよね。だから、重要なのは、優秀な人材を採用することではなくて、自分たちがやらせようとしている業務に合致した人材をどうやって雇用するかということのほうが圧倒的に重要で、ここの概念を変えないと、リクルートエージェント、リクルーティングの会社を使っても、そういうエージェントを使っても、結局とにかく優秀と言われたら、とにかく優秀な人材を集めてくる。でも、その優秀な人材にやらせることが合致していないので当然辞めてしまうという、こんなもったいない話はなくて。自分たちが何をやらせたいのか、それを短中期的に何をやらせたいのか、長期的な話ってあまり考えなくていいと思うんですよね。
短中期的に何をやらせたいのか。それに合致した人材をどうやって雇うか、雇用するかということのほうが重要なので、採用の概念を変えないとこの問題というのは解消されないのかなというふうに思います。なので、決して新興国の人材が劣っているのではなくて、これは採用する側の日本企業の問題だというふうに私は思います。

ということで、だいぶ長くなりましたけど、その10までお話をずっとしてきましたけども、次回からちょっとまったく違うようなことをやっていきたいなと、何をやるかもちょっとまだ考えていないんですけど、また何か皆さんの役に立つようなことをお話していきたいなというふうに思いますので、ぜひ引き続きSPYDER CHANNELをよろしくお願いいたします。

それでは、また次回お会いいたしましょう。