第411回 【現地取材】ベトナム 伝統小売で日本のクッキーが一番人気!
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今回もベトナム ホーチミンの郊外の比較的富裕層のエリアの伝統小売を取材してきましたので、このあと動画を見てもらうんですけども。いわゆる前回ご紹介したような、ミルクショップとハイブリッドになっているような生活日用品・食品系なんかが売っていて、いわゆるFast Moving Consumer Goodsとなる、子ども用の粉ミルクだけじゃなくて、いわゆるフレッシュミルクなんかも売っているようなお店で、比較的景気は戻っているよというふうに言っていました。まあまあ、ちょっとバイアスかかってね、強気な発言だったような印象を受けましたけども、まあまあ8割がた戻っているんじゃないかなと、8割9割がた戻っているんじゃないかなというような印象を受けました。
この伝統小売、比較的富裕層の伝統小売で日本のクッキーがね、300円ぐらいするクッキーが非常に売れていると。ベトナムのクッキーよりも全然売れていると、ベトナム人にですね。日本人なんか住んでいませんから、富裕層と言ってもベトナムの富裕層なので。なので、ぜひね、あれが面白いのでちょっと注目しながら見てもらえればなというふうに思います。
それでは早速、動画を見てみましょう。
【現地視察:店の前にて】
森辺:皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は2022年6月28日、現在、私はホーチミンの郊外に来ております。ホーチミンの郊外の伝統小売の景気がコロナ後どうなったのかを店主にいろいろと聞いてみたいと思います。それでは行ってみましょう。
【現地視察:店の中へ】
森辺:すみません。じゃあ、早速伺いたいんですけど、コロナになって景気ってどうですか?
店主(日本語訳):今、普通に戻っています。
森辺:戻ってる。
店主(日本語訳):はい、戻りました。
森辺:一番つらかったのは何年ですか? 2020、2021?
店主(日本語訳):去年ですね、やっぱりロックダウンのときです。
森辺:ロックダウンのとき。じゃあ、もう今、ほぼコロナ前に戻ってる?
店主(日本語訳):7割8割は戻ってます、コロナ前と比べたら。たぶんエリアによって違うと思います。この辺はちょっとお金のある住宅街なので、あんまりそんなに影響は多くないですけども、労働者のエリアだとまだすごい影響があると思います。お客さんはそこそこいます。
森辺:ここって粉ミルクも取り扱っているし、日用雑貨も取り扱っていて、比較的規模が大きいんだけど、もともと子ども用の粉ミルクショップだったんですか?
店主(日本語訳):昔からこんな規模だったんです。
森辺:昔から。
店主(日本語訳):やっぱり全部製品が集まると、お客さんもここで全部買えるから便利です。
森辺:ちなみに、後ろにそこそこ大きな倉庫があるけども、問屋の機能も有してたりするんですか?
店主(日本語訳):はい、そうです。
森辺:地域の伝統小売に?
店主(日本語訳):コーヒー喫茶店とかにも卸してます。
森辺:なるほどね。小売 兼 問屋ということですね。
店主(日本語訳):はい、問屋ですね。
森辺:分かりました。あと、最後に1つ。ちなみに、このお店で一番売れているのって何ですか?
店主(日本語訳):粉ミルク。
森辺:粉ミルクね。そうだろうね。分かりました。ちょっと、じゃあ、お店いろいろ商品見させてもらっていいですか?
店主(日本語訳):いいです。
森辺:日本の駄菓子が置いてありますけども、これは不二家のキャンディー。こういうのは不二家が戦略的に売っているかというよりかは、ほとんど並行輸入ということで。ロッテさんなんかはね、こっちで非常に商品売ってますから、これはもう戦略的に投入をしているんでしょうけども、それ以外のものはだいたい並行輸入で流れてきている。キンダージョイのこれは有名なたまごのチョコレート、これはどこへ行ってもありますよね。お、ヤマザキビスケットも。これもおそらく並行で入ってきているんでしょうけども。もしくは日系のお菓子、日系の問屋を通じて入ってきているのか。ヤンヤンなんかも、これはもしかしたら明治さんなので戦略的に置いているのかもしれないですね。あと、お馴染みのLay's、これは世界中どこへ行ってもこのポテトチップスはあるというような状況で。あと、ASEANだとOishiというメーカーのポテトチップスが非常に主流ですけども、そんなものがあると。
店主(日本語訳):なんかこの、日本のですけど、結構売れているらしいです。
森辺:へえー。これ、三立さんの抹茶。
店主(日本語訳):抹茶。
森辺:ちょっと前にね、抹茶流行ったので。へえー、そうですね。こういう系で台湾メーカーが日本メーカーのような感じで売っているケースがあるんだけど、これは本当に日本のね、三立製菓のメーカー。こういうのもほとんど並行輸入で問屋経由で入ってきてるのがほとんどで。これがこういうところで売れているわけなので、価格的にも合うんでしょうね。これ、いくらですか、ちなみに?
店主(日本語訳):5万5,000ドン。
森辺:5万5,000ドン。
店主(日本語訳):300円ぐらいです。
森辺:300円ぐらいね。売れてるんだよね。300円のこのチョコ菓子を買うと。茶菓子にするんだね、こっちの人はね。ハリボーだって売ってるからね。
店主(日本語訳):ベトナムのクッキーよりも売れています。
森辺:あー、そう。ベトナムのクッキー、これ。
店主(日本語訳):やっぱりこの辺は需要、お金のある人たちは、結構、品質を要求してるから。
森辺:なるほど、なるほど。ちょっとね、中をちょっと見せてもらってね。これ、サシェットで、こういうふうにサシェットで売って、いろいろ。こうやって袋詰めのがバーッと点在してあると。
ちょっと邪魔になったらあれだからね、こっちへ来ようかね。ちょっと奥に見えるかな。ミルクショップの各メーカーのミルクがこう、売っているというので。
どんなところかと言うと、だいぶきれいめなほうですよね。こんな感じの、上はこんな感じになっていて、上はオーナーの事務所 兼 倉庫ですかね。
じゃあ、これぐらいにしておきましょう。
【解説】
森辺:皆さん、どうでしたでしょうか。まあまあ今回のね、この裕福エリアの伝統小売もね、比較的コロナの影響からはもうだいぶ戻っているというような状況だったと思います。やっぱりね、ロックダウン中に店を閉じなきゃいけないというときがやっぱりどこもね、みんな苦しくて、それが明けたら比較的富裕層エリアなんていうのはね、別に景気が悪くなっても今月来月のお金に困るわけないような人たちっていうのは、基本的に別に自分たちの生活レベルを下げるって、今まで食べていたものを食べないとか、飲んでいたものを飲まないということはないので、基本的にはそんなに行ったところのエリアの伝統小売というのは変わらないよね、というような状況でした。
今回の動画でやっぱり一番注目すべきは、三立の300円ぐらいのクッキーがベトナムのクッキーよりも売れていたという、この状況がやっぱり僕はすごく面白いなと。うれしいし、面白いなという状況で。三立製菓さん、静岡のほうのね、メーカーなんですけど、規模的にはね、中堅規模のメーカーだし、決して明治やロッテ、グリコのような大手の菓子メーカーではないと、中堅中小の地方の菓子メーカーがベトナムでこれだけ頑張っていると、売れていると。
ただ、ここからは私の仮説なんですけど、これは別に三立製菓が戦略的にベトナム市場に商品投入して売りをつくっているというよりかは、基本的には日本国内のおそらくどこかの問屋を通じて、それがベトナムの市場で売られているという状況だと思います。結局、日本の問屋も基本的には輸出業務をやっているだけで、貿易業務をやっているだけで、ベトナムのインポーターに対してものを売っていますよと。FOB JAPANで売っていますよと。そのあと、ベトナム国内にその商品が入ったあと、それがどういう中間流通を通じて、どういう小売にどういうふうに並べられて、どういう消費者がそれを手に取って食べて、何を思ってリピートしているのか否かみたいなところはまったく無視したビジネスなわけですよね。これは貿易とマーケティングってまったく違う話なので、単に貿易をしているだけでマーケティングには介在していないと。
じゃあ、メーカー自身が介在しているかと言うと、メーカーなんていうのはもっと介在していなくて、じゃあ、日本の問屋にね、どうなっていますかって状況を聞いても、結局、具体的なフィードバックというのはない。こういう状況でいわゆる並行輸出みたいなね、状況で日本のお菓子、商品がいっぱい出ているケースというのは、これは別に一般的なんですよ。悪いとか良いとかじゃなくて。
なので、その状態だとどういうことが今後起きるかと言うと、結局この三立製菓のクッキーが売れましたと。もっともっと売れましたと。もっともっと売れてきたときに、いわゆるこの日本の問屋は、「売れてよかった、どんどん輸出しろ、どんどん輸出しろ」と、ここまでの頭しかないですから、以上ですよね。一方で、メーカーも、「うわー、この問屋さん、どんどん海外に売ってくれてうれしいな」と。この状態のときはいいんですよね。ただ、これがピークである一定のところ以上まで売れてしまうと、今度はどうなるかと言うと、ベトナム系とか中国系、台湾系の菓子メーカーが入ってきて、それと同じような商品をつくる。そして、それを配荷し始める。彼らは戦略的にマーケティングで配荷し始める。そうすると、今まで売れていた三立製菓のクッキーの代替品がそこに入ってきて、いつしか市場はそっちでよくなってしまって、メジャーな商品というのはもう三立製菓の商品ではなくて、中国だったり、台湾だったり、韓国だったり、ベトナムだったりのお菓子に置き換わってしまうということが起きるわけなんですよね。
だから、結局、マーケティングを無視して、売れてるから「はい、輸出だ、貿易だ、どんどんやれ」ということでやっていっても、結局、行き着く先は、ある一定のボリュームまで来ちゃうと、このボリュームが魅力的なので、そんなの放っておかないわけですよね。そうすると、そこの市場を取られてしまうので、結局、マーケティングに介在をしていかないといけない。自分たちが自分たちの商品がどういう中間流通を通じて、どういう小売にどう並べられて、そして、誰がそれを食べて、何を思っているのかということを理解した上で、ベトナムのどのエリアの、どの小売りに、どういうふうに戦略に時系列に並べていくことが最も効率的なのか、それに対して対競争戦略をどうしよう、市場の景気に合わせた戦略どうしようと、いつまでも輸出でいいんだろうか、そういうことも含めて戦略をつくっていかないと、なかなか継続して勝ち続けるということは難しい。なので、過去もいっときは勝っていたという日本のメーカーなんていっぱいあるわけなんですよね。そのとき喜んでいるんだけども、結局、そこでマーケティングに自ら身を投じて介在しようとしないので、そのハッピータイムが終わってしまって、どんどん、どんどん、衰退していくということになるので。
ここまでいっているのであれば、ぜひこれを戦略的な価値に変えていくということで、三立製菓さん、ご連絡をお待ちしております。ぜひ一緒に戦略をつくっていきましょう。見ているかどうか分かりませんけども。すみません。宣伝みたいなことを言ってしまいましたけども。非常にうれしい事象だったなというふうに思います。
今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。