第416回 【本の解説】 必要なのは「営業力」より「マーケティング力」
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この『グローバル・マーケティングの基本』 日本実業出版社、私が去年書いた本ですけども、この解説をしていきたいと思います。今日は、65ページ、「1-15 必要なのは「営業力」より「マーケティング力」」ということについてお話をしていきたいなというふうに思います。総じて日本企業の新興国展開を見ていくと、「マーケティング力」で突破をしようということよりも、どちらかと言うと「営業力」で物事を突破しようという力が非常に強く働いていて、本来重要な「マーケティング力」がなかなか使いきれないという現状があります。もしかすると、「営業力」と「マーケティング力」の違いを実はあまりよく理解をしていない会社さんが非常に多くて、この章では、「営業力」と「マーケティング力」がいかに違うのかということを解説しています。
スライドを早速見ていただくと分かりやすいと思うんですけど、マーケティングって日本語で言うと何なの?ということなんですが、これはもうセールスでもないし、営業でもないし、日本語には訳されない、カタカナで「マーケティング」というふうに書くわけなんですけども。マーケティングの父 フィリップ・コトラーはマーケティングをこういうふうに定義しているんですよね。「市場調査から商品企画、商品開発、そして、商品を生産して物量網を構築して、販売促進して、営業活動して、代金回収をやって、アフターサービスをするまでの一連の流れがマーケティングですよ」というふうに定義していると。ですから、必ずしも売ることだけがマーケティングではなくて、特に日本だとBtoCのプロモーション的な要素をマーケティングというふうに捉えがちですけども、実はまったく違いますよと。一方で、営業というのは、この図の通り、営業活動の領域で、これを少し下の濃い青のところを切り出しているんですけども、顧客アプローチから顧客提案、顧客クロージングというのがまさに「営業力」になるわけなんですよね。
「営業力」って、どちらかと言うと木を見ることなんですよね。目の前の商談自体を見ることが「営業力」であって、それが少し広まったとしても、自分の目の前じゃなくて周辺を見る、もしくは背後を見るぐらいの話で、非常に狭いポイントに対してフォーカスをしているものがこの営業なんですけども、一方でマーケティングというのは森全体を見るので、かなり俯瞰して見ないといけないという、そういうものなんですよね。なかなかこの違いが、日本だとマーケティングを駆使しなきゃいけないっていうことがなかなかケースとしてなくて。なぜならば、顧客の信頼もあるし、流通の信頼もある。そして、販売チャネルだって構築されているし、自分たちの商品だって売れてるわけですよ、実績があるわけですよね。その中でマ―ケティングを0から考えるってなかなかなくて。なので、結局マーケティングってBtoCの対消費者にやるフロントのプロモーションみたいなところに意味合いがフォーカスされていってしまうという傾向が非常に強いんですけど。実はマーケティングってそういう意味じゃないんですよということが非常に重要なポイントで。新興国市場に行ったときに「マーケティング力」で課題を突破しないといけない、「営業力」ではなかなか突破が難しいということを1つしっかりと理解をしないといけないということでございます。
次の図をお願いします。次の図は、「マーケティング力」と「営業力」を図にしていくと、「営業力」というのは非常に木を見ることですよと。「マーケティング力」ということは森を見ることであると。「営業力」とは顧客と商談し受注を獲得する能力。この能力には日本企業は非常に長けているんだけども、残念ながら「マーケティング力」、いわゆる売れる仕組みをつくる能力、ここに関してはなかなかまだまだ課題感が残るというところで、これからも、永遠の課題なのかもしれませんが、「マーケティング力」を強化していくと。特に新興国市場に行くと、日本国内の市場と何が違うかって、何もないわけなんですよね。実績もなければ信頼もない。そして認知もないし、何もかもが日本市場ほどないと。その中で「営業力」だけで突破をするというのは、「営業力」というのはすべてが整った上で発揮するから初めてその効果が得られる話なので、新興国市場に行くと「マーケティング力」が非常に重要になりますよと、「営業力」と「マーケティング力」というのは全く別物ですよということが今日のお話でした。
それでは皆さん、今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。