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第422回 【本の解説】国別の投資ポートフォリオが明確

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、『グローバル・マーケティングの基本』 日本実業出版社から私が去年出した本ですが、この本の解説をしていきたいと思います。

今日は、2-4、83ページ、「国別の投資ポートフォリオが明確」ということについてお話をしていきたいんですが、このページは、皆さんお手元に本があると思いますけど、グラフが結構出ているので、今日はスライドがないので本を見ながら聞いてもらえればと思うんですが…。P&Gとユニ・チャームのアジア新興国戦略について書いているんですね。国別の投資の強弱が非常に明確に違って非常に面白いなと思ったので、それについて書いていると。
まず、ASEANの市場なんですけど、ユニ・チャームって皆さんご存じと思いますけど、日本を代表するグローバル企業で、本当にユニ・チャームのアジア展開、ASEAN展開を特に見ていると、うわー、本当に素晴らしいなと、販売チャネルなんかは本当に欧米の先進グローバル企業並みというか、それ以上に素晴らしいことを現地現場で多々見るので、非常に私は日本を代表するグローバル企業だなというふうに思っています。そのユニ・チャームと、P&Gは世界的にもう先進的なグローバル企業、ユニ・チャーム、ネスレ、P&Gと言ったらまさに消費財、FMCGの先進グローバル企業の代名詞みたいなものでございますけども、この企業とユニ・チャームが、じゃあ、ASEANでどういう戦いをしているのかというのを見ていくと…。

例えば、タイなんかは、この国は人口6,700万人で、出生数が80万人ぐらいなんですよね。だから、日本がもうすでに100万人をとっくに切っていますから、人口こそ日本の半分だけども、出生数に関しては日本と同じぐらいになってきてしまっていると。この国は、一部P&Gの商品が並行輸入で入ってきてはいるものの、ユニ・チャームが正規で現地で販売をしていますから、シェアが53%対、並行品を除外すると正規品では0というような、そんな市場になっていると。マレーシアに関しては、P&Gはもうほとんど入ってなくて0.1%ぐらいで、これは全部ユーロモニターのデータを元にいていますけど、ユニ・チャームは12%ということで、マレーシアも人口3,100万人で出生数50万人なので、そういう国でユニ・チャームが圧勝していますよと。あと、ベトナムですね、ベトナム。ここは意外にP&Gは投資をしっかりしていて、13%のシェアがある。一方でユニ・チャームは35%なので、ユニ・チャームが勝っているんですね。人口は9,500万人、だいたいベトナムって1億弱ぐらいというふうに覚えておいてもらったら覚えやすいと思うんですけど、そんなような市場で、出生数は年間100万人ぐらい今生まれている。ASEANの中では非常に将来有望のある市場というのはベトナムであると。

あと2つ、VIPと言われるベトナム、インドネシア、フィリピン。インドネシアを見ていくと、インドネシアもね、ユニ・チャームが43%、P&Gが4%で、ユニ・チャームが勝っているんですよね。ここは人口2.6億人、もう3億人に迫る勢いで、出生が数400万人なので、相当多いですよね。ASEANの中でも2番目に平均年齢が若い国と。1番がフィリピンなので26~27歳だったと思いますけども。フィリピンに関しては、ユニ・チャームが3%で、P&Gが22%。ASEANの中で唯一ユニ・チャームが負けているのがこのフィリピンなんですよね。なぜかと言うと、フィリピンって、実はほかのASEAN6の5とは違って、日本が一番の選択肢に来ないんですよね。アメリカがやっぱり一番最初に来るので、彼らはアメリカのメディアを見ているし、アメリカを見て、アメリカの製品だったり、そういったところに親しみを感じているので、日本が2番手、今だと韓国が2番手になって3番手ぐらいになっちゃっているかもしれませんけども、そんなような市場なので、ユニ・チャームが3%で。フィリピンは人口1億人で出生数200万人なので、非常に有望な国ですと。

総じて言うと、ASEANに関しては圧倒的にユニ・チャームなんですよね。ASEAN市場の開拓をこれだけやれているというのは、日本の…。ごめんなさい。これね、子ども用おむつの話をしています。子ども用のおむつ、本に書いていますけども、ユニ・チャームが非常に先行していて。でも、フィリピンだけはやっぱりどうしてもP&Gがそうなんだよと。あとの国に関しては、もう圧倒的にユニ・チャームが勝っていると。

一方で面白いのが中国とインドなんですけど、中国って、中国のおむつメーカーとかもう本当にたくさんあるので、競争環境が非常に厳しい市場。でも、この厳しい市場でP&Gは今、18%シェアを持っていて、ユニ・チャームは7%持っている。ここは人口14.3億人で、出生数がびっくりすると思いますけど1,470万人毎年生まれているんですよね。それでも、そろそろ少子高齢化の中に突入していくというのが中国ですけども。インドに関しては、P&G43%で、ユニ・チャームが38%と。この国も人口13.5億、もう間もなく14億になりますけども、出生数はなんと2,000万人で、年間2,000万人も生まれているんですよね。もう、もうのすごい市場ですよね。

何が言いたいかと言うと、P&Gはやっぱり中国とインド、ここで負けるとアジアでの商圏はないという、こういう強い戦略をやっぱり相当持って、アジアの小国に投資をするぐらいなら、すべての経営資源を中国とインドにフォーカスをするという、こういう戦略をずっと取ってきていて、これは非常に素晴らしいなと。それを知ってか知らずか、そういう状況でそこで戦いつつも中国で7%と、ユニ・チャームの7%というのはすごい健闘ぶりだと思うんですけども。インドで38%獲りながらASEANで圧勝するユニ・チャームみたいなね。これもまた非常に素晴らしいなと、甲乙つけがたいぐらいにユニ・チャームとP&Gって本当に素晴らしいなというふうに思って、この戦略の違いですね、それを書いているという、そんなページでございます。

実は花王も、一時期はメディアで結構内弁慶なんて揶揄される時代があったんですけども、かつて非常に中国で低かったおむつ、子ども用のおむつを8%までシェアを上げているので、実はユニ・チャームよりも少し上がっていて、今はシェア2位なんですよね。なので、花王も非常に検討していて。子ども用のおむつって設備投資産業で、日本が実は一番安くつくれるんですよね。ラインの入口からラインの出口までほとんど人が要らないという、機械でガンガン、ガンガン、つくっていけるので。日本のおむつの設備ってもう償却が終わっているので、実は日本が本当におむつってすごく安くて、非常に面白い市場というか、これから大人もね、老人になっていったらおむつをしますし、だいぶプライベートブランドとか出やすいブランドだったりもするんですけども、非常に日本メーカーが検討している、そんな産業だったりもします。

アジアのメーカーもね、結構、最近では目立ってきていて、もう10年15年ぐらい前からだいぶ目立つようになりましたけど、フィリピンのEQとか、シェアNo.1だったかな、フィリピンで。そんなのもありますし、欧米に行けばP&Gはじめ、キンバリー・クラークとかもあるし、スウェーデンのほうも、あそこは確か、おむつ事業を売却しちゃったのかな。結構、世界中で非常に面白い競争をしているという、そんな市場なので、ぜひ皆さんも注目してみてください。

それでは今日はこれぐらいにして、また皆さん次回お会いいたしましょう。