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第427回 【本の解説】ストアカバレッジとシェアの相関関係

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、『グローバル・マーケティングの基本』 日本実業出版社から私が去年出した本ですけども、この本の解説をしていきたいと思います。

今日は、94ページ、「2-6 ストアカバレッジとシェアの相関関係」ということでお話をしていきたいなというふうに思います。これは特にASEAN、ASEANに限らずですけど、新興国市場の伝統小売の攻略についてのお話で。新興国市場、特にASEANで話をしましょうかね、ASEANの場合、SMT、シンガポール、マレーシア、タイみたいなところというのはもう半分以上、シンガポールなんかは完全に近代小売の市場ですし、マレーシア、タイでも、まあまあ、もう半分以上は近代小売の市場なので、近代小売だけをやっていればある程度シェアが獲れるというような市場構造なんですよね。

一方で、VIP、ベトナム、インドネシア、フィリピンという、このいわゆる、まさに今、成長が著しくて、人口も非常に多い、ベトナムで1億、フィリピンで2億弱、インドネシアで3億弱という、この非常に大きな巨大市場、ポテンシャルある巨大市場は、伝統小売の攻略なくしてなかなかシェアが上がらない。そもそも近代小売の数が非常に少ない。例えば、ベトナムの近代小売って7,000~8,000店舗というふうに言われていて、一方で60万店ぐらい伝統小売があったりとか。フィリピンでもやっぱり近代小売って8,000店舗ぐらいで、一方で伝統小売は80万店以上存在すると。フィリピンはもうちょっとあるかな、近代小売、8,500ぐらいありますかね。インドネシアが一番、VIPの中では近代小売の数が大きいんですけども、ここでだいたい4万弱ぐらいで、一方で伝統小売は300万店以上存在するので、基本的に伝統小売を獲らないとシェアは上がらないし、近代小売だけだとなかなか利益も出ないという構造になっているんですよね。なぜならば近代小売というのは棚代みたいなコストもかかってくるので、いわゆる伝統小売とバランスを取ると。日本で言うと、セブンイレブンだけで2万店ある。そんな状況なので、いかに伝統小売が重要かというのがVIPなんですけど。

その市場において、伝統小売の間口を獲る、ストアカバレッジを獲るということが、いわゆるシェア獲得の上では非常に重要な指標になっていて。どうやってシェアを上げますか、売上を上げますかと言うと、もう追うべき指標はストアカバレッジを上げるということが1つですよね。1つ、どれだけ多くの店に並べるかと。もう1つは、その並んだ店でどれだけ売れていくか、週販回るかと、5回に1回、5回に2回、5回に3回選ばれるかという、店頭シェアというふうに言ってますけども、その2軸。今回は最初の軸、もうとにかく店に置かれてないということは、存在してないという話なので、伝統小売のTT(Traditional Trade)の間口数とシェアがどういうふうに相関関係になっているかということを大切にしたいというふうに思っています。

スライドをお願いします。これがスライドなんですが…。縦軸がシェアが高い、シェアが低い、上が高い、下が低いですね。横軸が、TTと書いていますけど、伝統小売ですね、伝統小売の間口が少ない、右にいけば多いということで。この図の通りなんですけど、まず赤いところを見ていきたいと思うんですが、間口が少なくてシェアが高いなんていう…。赤いところというか、左上からいきましょうかね。間口が少ないのにシェアが高いなんていうのは絶対あり得ないんですね。置いてる間口が少ないっていうことは、その限られた間口でめちゃめちゃ売れてたら別ですけども、そんなの消費財なんていうのは1間口に対して週販平均いくつ売れるとかっていうのがある程度想定値が決まっているので、やっぱりある一定の間口数を超えなければシェアなんて絶対上がらないので、左上っていうのはもう現実的には存在しないゾーンなんですよね。一方で、右下の灰色のところはどういうものかと言うと、間口が多いのにシェアが低い。これもまたあり得ない構造で。一定期間はあり得ますよ。数カ月とかね。なんですけども、たくさんの間口に商品が並んでいてシェアが低いというのはね、結局売れてないということなので、売れてないということは間口は減っていくんですよ。棚から撤去されてしまうので。伝統小売のオーナーは取り扱わないという判断をしますから、基本的には撤去されるはずなので。はずというか、撤去されてしまうので、現実的には右下のゾーンも存在しないですよと。そうなると、当たり前なんですけども、シェアを上げようと考えたときには、やっぱりどんなにいろんなことを考えても、間口がないということはもう絶対にシェアは上がらない。左下ですね。間口が多いということは、売れているから間口がずっと維持されているんですよね。売れなければ間口というのはすぐ撤去なので、基本的に半年待たないですよね、伝統小売のオーナーさんたちは。何とか押し込んで置いてもらったとしても、やっぱり売れなかったらすぐ撤去だし。そもそもね、伝統小売のオーナーというのは、近代小売で売れ筋になっているものしか置きたがらない。限られた店のスペースで売れないものを置いておくスペースなんてないわけですよね。そうすると、近代小売で売れ筋になっているものを持ってきてばらばらにして売る、ばら売りで売るというのが基本的にはコンセプトなわけなので、売れないものは端から置かない。けど、いわゆる人情の世界なので、「頼むよ、おばちゃん、おじちゃん」ということで置いてもらったとする。仮に置いてもらっても、結局、何カ月もモノが動かなかったら、「これ、だめだよ。置いたけど売れないじゃん。こんなものもう二度と持ってくるな」ということで、敗者復活戦がなかなか厳しいというのも1つの問題なので。基本的に間口が多くてシェアが高いということは売れ続けているということなわけですから、右上が存在すると。

なので、基本的にはどれだけ間口を獲るかということが非常に重要で。伝統小売の市場では、現法を出すとなったらやっぱり5~6万間口ぐらいはやっぱり持たないと、なかなかちょっと利益的に厳しいというか、シェアとしてもインパクトが少ないので。ちなみに、欧米の先進的なグローバルプレイヤーってどれぐらい間口を持っているかと言うと、10万20万30万とか、そういうレベルで間口を持っているので。間口を増やすということに1つの指標をとらえて、そして、間口を維持し続けるためには売れ続けなければいけないので、もう1つの縦軸の指標をつくっていくわけですけども、その2つの指標が絶対に必要ですよというお話でございました。

それでは皆さん、今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。