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第435回 【本の解説】「現地適合化」ではなく「世界標準化」を目指す

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この『グローバル・マーケティングの基本』 私が去年、日本実業出版社から出した本ですが、この本について解説をしていきたいと思います。

今日は、112ページの2-13、「「現地適合化」ではなく、「世界標準化」を目指す」といことでお話をしていきます。「現地適合化」「世界標準化」ということで、この「現地適合化」って、結構、アジア新興国市場をやっているような人たちは聞いたことがあると思います。「現地適合化」というのは、いかに現地の生活や文化、所得や商習慣、さまざまな現地のものに、自分たちの戦略であったり、商品を適合させていくということなんですよね。ローカライゼーションとかローカライズとかというふうに言い換えられたりもすると思いますけど。現地に適合させていかないといけない。日本の「良い」をそのまま持っていっても、なかなかそれは受け入れられないですよと。若干現地に適合化させていくということが大変重要ですと。「世界標準化」というのはどういうものかというと、世界どこに行っても同じものを売っていくということですよね。例えば、コカ・コーラなんか分かりやすいと思うんですけど、世界どこに行っても同じ味のコカ・コーラを売っていると。微妙に実は炭酸の量とか味が違うんですけども、世界どこへ行っても同じというのが、マックとかもそうですよね、世界的、「世界標準化」と。

これはどっちがいいの?ということなんですけども、どちらかと言うと日本企業は、どっちがいいの?というよりか、両方必要なんですよね、「世界標準化」もしないといけないし、「現地適合化」もしないといけないんだけども。日本の多くの企業は、B2C企業、消費財メーカーは、どちらかと言うと「現地適合化」に神経がいってしまって、なかなか「世界標準化」の観点で市場を見て、その上で「現地適合化」を実行するみたいなところが抜けているような企業が少なくないと。この両方がなぜ重要なのかということを今日は説明していきたいと思います。

スライドをお願いします。このスライドの通りなんですが、「現地適合化」と「世界標準化」ということは、ちょっとそれぞれ説明していくと、商品も、ブランドも、価格も、チャネルも、プロモーションも、オペレーションも、すべてが各国でばらばらに実施されていることなんですよね。根幹も枝もすべてが国毎にばらばら、極論を言うとですね。これって非常に非効率なんですよね。効率が悪い。ブランド力が浸透しにくいですよね。だって、アメリカではAというブランドで売っていて、アジアではBというブランドで売っていて、ヨーロッパではCというブランドで売っているわけですから、めちゃめちゃ効率が悪い。ブランド力が浸しないですよね。ノウハウも溜まりにくいですよね。オペレーションも管理しにくいと。各国でばらばらになっているというのがあると。結構これって、日本で、どれぐらい前かな、20年ぐらい前にリージョナル・ヘッドクオーターという構想が非常に流行った時期があって、いわゆる大手の戦略系ファームがこぞって日本の大手企業のリージョナル・ヘッドクオーターの組織改革に向けて動いたという時期があったんですけど、結構、蓋を開けてみると香港にあったりシンガポールにあったりするわけなんですけど、シンガポールのリージョナル・ヘッドクオーターは、リージョナル・ヘッドクオーターと言いつつも、全然リージョン、ASEANリージョンのヘッドクオーターですから、そこを統括管理していかないといけないのに、なかなか管理できていなくて、結局、現地と日本の板挟み状態というか、あまり発言権も、予算決裁権も、実行能力もないというような状態に陥ってしまっているという企業を私は多く見てきているので。なかなか浸透しなかったんですけどもね。うまくいってなくて、どうしても現地主導で、本社とかリージョナル・ヘッドクオーターには戦略がないので、「現地主導で考えろ」と、なんだけども、「予算は本社の決裁をあおげ」みたいな、そういう意味不明な状況が結構多々見られるという状況であると。

一方で、じゃあ、「世界標準化」ってどういうものかと言うと、この図の通り、商品も、ブランドも、価格も、チャネルも、プロモーションも、オペレーションも、すべてが世界共通で標準化されている。根幹部分は変わらず枝葉だけが「現地適合化」されるんですよね。これってめちゃめちゃ効率良いですよね。「世界標準化」という、まず土台がビシッとあって、その上で、じゃあ、現地で枝葉のところを適合化してくださいね。それから、これってノウハウも溜まりやすいわけですよ。もう「世界標準化」の部分と、この部分は「現地適合」していきましょうみたいな。オペレーション、これも管理しやすいですよね。欧米の先進的なグローバル企業というのは、もうみんなこの「世界標準化」、グローバルとローカルがしっかりミックスされていて、どこまでが「世界標準」でやって勝手に現地で変えちゃいけない部分、勝手に現地で変えなさいという部分が明確に線引きされているので、これは非常に効率がいいんですよね。
例えば、マクドナルドなんて、どの国に行ったって同じハンバーガーを売っているわけですよ。ハラル圏とかイスラム圏とかね、ビーフを食べられないところではベジタリアンのハンバーガーがあったりとかという、その部分が「現地適合化」なんですよね。例えば、そういう制限がない国であれば、どこへ行ったってチーズバーガーとビッグマックが売ってあって、フレンチフライが売っている。ケチャップのところに、ASEANなのでチリソース、チリケチャップを付けるとかね。ここは「現地適合化」なんですよね。なんだけども、ケチャップの味、ハンバーガーの味は「世界標準化」で決まっていますよと。こうしなさい。スタバとかもそうですよね。分かりやすい、飲食店とかはね。なんですけど、P&Gとか、ユニリーバとか、ネスレとかもね、どこへ行ったって同じですよね。「世界標準化」があって、その上で、じゃあ、どうやって売りますか。「小さいサシェットでネスカフェのコーヒーを売りましょう」みたいな。こんなの先進国では売らないけど、その部分は伝統小売の存在があるので、売りやすいサシェット売りをしますよと。「現地適合化」をしているわけですよね。入数を小さくしたり、あと、味を少し甘めに変えたりとか、ASEANは暑いですから、甘いものを飲むというのが非常にいいので、甘くするという。これはまさに「現地適合化」。でも、ブランド名とか、そういうブランディングは絶対に変えないと。

LUXなんかもそうですよね。髪の長い女優が出てきて「LUX」とやるわけですよね。あのCM、どこへ行ったって同じCMが流れているわけですよね。日本のシャンプーメーカーみたいに、あのシャンプーのCMってブランドとメーカーとCMが結び付かない。ばらばらなわけですよね。確か、あの好きな女優が出ていたやつはこの商品だったんだけど、それってどこの会社だっけみたいな、そういうのが結構多いと思うんですけど、LUXのCMは、もうどこへ行ったって同じCMなので、基本的には認知されやすいし、ブランドが定着しやすいですよね。コストもめちゃめちゃ安いわけですよね。各国ではなくて、もう本社でCMをピッてつくってしまいますから。多少現地で、国によっては「現地適合化」してね、日本では日本の女優を使ったり、中国では中国の女優を使ったりとかというのはありますけども、基本的には「世界標準化」しているということで、グローバル・マーケティングの時代になってから、やっぱり世界をどうやって標準化していくか。今までみたいに世界と世界の距離が離れてなくて、それが近づいてきているわけなので、「世界標準化」という概念はしっかり持たなきゃいけなくて、その上でどの部分を「現地適合化」させていいのか、どこまでを認めるのか、どこまでを任せるのか、ということをやっぱりやっていかないといけない。今までみたいに、戦略は本社にないから現地で考えてくださいと、気合いと根性でやりますよと。予算? 予算は本社の決裁をちゃんと取ってくださいねという、こういうやり方で「現地適合化」だけを中心にやっていくと、なかなかやっぱり息詰まるというのが現状じゃないかなというふうに思います。なので、ぜひこの「世界標準化」という土台の上で、「現地適合化」を実行していってもらえればなというふうに思います。

今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。