第441回 「思考」が戦略に与える影響 その2
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。それでは前回ね、時間がなくてタイトルと章立ての説明で終わってしまいましたけども、今日はこの第1章の「思考」が戦略に与える影響ということでお話をしていきたいと思います。長年、日本企業の海外、ASEAN、新興国展開を支援していく中で、日本企業の最大の特徴というのが3つのだいたい誤った思考パターンによって戦略を大きく間違えるということが非常に多くて。多くの企業はこの3つの間違った思考パターン、もしくはいずれか複数のどれかに陥って、戦略が間違った方向に進んでしまってなかなかそこから抜け出せないという企業が非常に多いので、ちょっとお話をしていきたいと思います。
次のスライドをお願いします。次の2枚目のスライドですけども、海外展開に失敗する企業の3つの思考パターンということで、「プロダクト」「パートナー」「パーソン」というふうにありますが、「プロダクト」にとらわれる「思考」ってどういう思考かと言うと、とにかくただただ自分たちの商品は高品質だから大丈夫だと、モノはいいんですと、モノがいいから少々ここが悪くても、値段が高くても大丈夫、モノがいいから少々チャネルが弱くても大丈夫、モノがいいから極論言うとすべて良しということで、自分たちのプロダクトは良いんだということが非常に「思考」の中心に置かれていて、言うと、それ1つで物事を完結させようとしてしまっている。物事というのは、ターゲットに対して4Pを適切に当てるということがマーケティング上は非常に重要なんですけども、その中で1P、プロダクトという1つのPだけが非常に大きく注目されてしまっていて、ほかの3つがほとんど機能していない。それで戦略が非常に偏ってしまうという傾向が非常に強くて。これは意外に、頭では分かっているんだけども実際にやっていることはそうだという企業は非常に多いので。この「良い」というものもね、日本企業の「良い」というものが必ずしも現地の「良い」ではなかったり、消費財の場合は伝統小売に対して「良い」でないとそれは「良い」ではなかったりするので、なかなかこの「良い」の定義も違うという傾向が非常に強いと。
2つ目が「パートナー」。売ることはパートナーにお任せということで。別にパートナーを否定しているわけではなくて、パートナーというのは非常に重要なんですけども、基本的には自分たちはつくる人で売るのはパートナーなので、マーケティング戦略の大半のことをパートナーに委ねてきたという、そんな背景があって、今、それを必死に変えようとしている企業が非常に多いんですけど、なかなかそれがうまく変わりきらないという、そんな状況にあるのかなというふうに思います。
3つ目が「パーソン」。これは社としての戦略が非常に弱い。本社に戦略はないけども、現地の人が走りながら考えるということで、かなり駐在員頼み的な、そういう傾向が強いと。だいたい企業の、うまくいっていない企業を見ていくと、このいずれかの「思考」に陥ってしまっていて。問題なのは、自分は陥っていないと信じ切っているということがすごく問題で、客観的に自分自身を見ることができていないので、自分たちはそんなはずはないと、疑う余地はないので、実は陥っている企業の多くは陥っていることに気付いていないというのが大半のケースであったというのが実態でございます。
じゃあ、最初の「プロダクト」の思考なんだけども。結局こういう4Pをターゲットに当てていくわけなんですけども、日本で実績のある商品を、できればさほど変えずに、少しは安くするけど日本と同じぐらいの価格で、日本で慣れ親しんだ近代小売を中心に、できれば実績が出るまでプロモーション投資をしないという、このスライド、次のスライドにいっていますけども。そういう4Pを組んでいるんですよね、プロダクト、プライス、プレイス、プロモーションが。それを、もうここが、4Pが端から出来上がっている状態であるので、これはもう動かないんですよね。それで、これに当てはまるターゲットは誰ですかと言って、そのターゲットが次に2番目に来るので、必然的にASEANで最も重要なターゲットである中間層というものに売れずに、結局牌が上振れしてしまうと。富裕層にいってしまって、富裕層の数だけで言うと、そもそもASEANを狙う意味がそんなになかったということになってしまって、消費財ビジネスの肝は、いかにたくさんの人に、いかに速い頻度で、いかに長い期間ずっと買い続けてもらうかということが重要なんですけども、なかなかその数が伸びないという傾向に陥ってしまうと。
重要なのって、ターゲットが先で、ターゲットに対してどういう4Pを、もっと言うと、4Cでたぶん日本企業は考えたほうがよくて、カスタマーバリュー、顧客にとっての価値がどういうもので、コスト、顧客にとっての費用がどういう費用であるべきで、顧客にとっての利便性、顧客とのコミュニケーション、こういうことを考えていかないと…。ごめんなさい。次のスライドですね。そうすると、ターゲットがやっぱり先なんですよね。常にターゲットが先で、そこに4Cを当てていく。4Pを当てていく、4Cを当てていくということをやらないといけない。なんですけども、日本企業の場合は、もう4Pというものがこれなんですと決まっちゃっているから、結果としてのターゲットになってしまっていて。ここの順番がやっぱりだいぶ違ってしまっていて、ここは非常にやっぱり大きな問題としてあるところです。
時間がないですね。すみません。「プロダクト」で今日は終わって、次回以降ね、この「パートナー」と「パーソン」の思考のところをお話したいと思います。
今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。