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第442回 「思考」が戦略に与える影響 その3

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、私が先日やったセミナーのお話をしていきたいと思います。

すみません。スライドをお願いします。前回も使ったスライドですけども、海外展開に失敗する企業の3つの「思考」パターンということで、「プロダクト」「パートナー」「パーソン」という「思考」がありますよと。この「思考」にとらわれてしまうと、間違った戦略をつくり上げてしまうと、誤った「思考」にとわられて、誤った戦略をつくっていくということで、1の「プロダクト」のお話を前回やって。今日はね、「パートナー」と「パーソン」を頑張って2個連続でやっていきたいなというふうに思うのですが、よろしくお願いします。

次のスライドをお願いします。「パートナー」なんですけども、日本の企業の、ASEANに限らず新興国展開を見ていると、「誰に」売るかということよりも、圧倒的に「誰と」売るかということのほうに重きが置かれていて、先にきちゃっているんですよね。自分たちは、メーカーなのでもちろんつくることが非常に重要で、売ることというのは、よく現地の事情は分からないし、現地のとにかく大きいところ、財閥系だ、大手だとか実績があるところだという、そういうところを中心に、とにかく「誰と」売るということを非常に優先しがち。「誰と」売るかなんていうのは正直二の次で、一番重要なのは「誰に」売るかなんですよね。消費財の世界で言ったら、フィリピンだったらSMとピュアゴールドとロビンソンズに入らなきゃだめですと。そこに入った上で80万店の伝統小売に売らなきゃだめだと。ベトナムで言えば、旧ウィンマート、コープマート、ここに売らなかったら近代小売はだめですと。ここに売って、プラス66万店の伝統小売という、そういう話なので。じゃあ、そこに売れる人と一緒に売らないといけないんですよね。「誰に」売るかということを先に決めて、その売りたい相手に売れる人が良いディストリビューターになるわけなので、それが言ったら「誰と」売るかなんですよね。なので、でかいとか、実績があるとか、財閥系だとかということを中心に「誰と」売るかを先に模索するよりも、「誰に」売るかということを明確にしないといけなくて。多くの日本の消費財メーカーは、何となくこの辺に売りたいんですと。でかいところと組めばきっと売れるはずだと。ただ、どのディストリビューターと話をしても、「私たちは地元の何とか小売と強いリレーションがある」とみんな言うんですよね、口をそろえて、「任せろ、任せろ」と。ただ、強いリレーションって企業によってレベルが違う、強いレベルが違ってくるので、本当に強いところってどこなのかなということを精査していかないといけないわけで。重要なのって、言ったらね、もっと言ったら小売じゃなくて、その先の消費者になるわけなので、「誰に」売りたいんだと、目的ですと、「誰に」売るかということ、それこそが目的なので、それを「誰と」売るなんていうのは方法論の話なので、やっぱり日本企業に足りないのは、「誰に」売るんですかということをしっかりと詰めるということがすごく重要。

次のスライドをお願いします。ASEANだと近代小売の数って高々これだけなんですよね。一方で、伝統小売というのはこれだけの数あるわけなので、やっぱりそこに売りたいわけですよね。消費者はそこにいるわけなので、そこに売れる相手を捕まえるということが大変重要であるというのが1つですね。

「パーソン」というのは、やっぱり社としての戦略が弱いですよね。本社として自分たちの世界標準化戦略はこうで、それに対してASEANは現地適合化はここまでやっていいということが明確に決まっていて、その現地適合化の範囲内で現場が戦術をつくるというのが一番おそらく理想的なかたちなんですけども。日本企業の場合は、やっぱり個としての能力が非常に高いので、社としての戦略が低いと。ただ、実際問題、戦術で戦略は補えないので、戦略がないということが、弱いということがネックになってしまって。じゃあ、どういう戦い方をしているかと言うと、ここで言っている戦略ってマーケティング戦略の話なんですけど、仕組みをつくらないといけないんですよね。売れる仕組みをつくるという、自分たちの商品がその地で売れる仕組み、これはプロダクトも、価格も、チャネルも、プロモーションも、全部そうですけど、そういったことの仕組みをつくる。テクニカルなことを言っているのではなくて、当たり前なオペレーション自体、仕組みをつくる。でも、その仕組みがないので、営業力で戦わないといけない。結局、営業力というのは商談して受注を獲得する能力なので、その能力で仕組みを補うということはなかなか難しいわけですから、伸び悩む、シェアが伸び悩む、売上が伸び悩むというのは、まさにこの人頼りという「思考」に陥ってしまっているからであると。

整理すると、この1章の「思考」が戦略に与える影響を整理すると、「プロダクト」「パートナー」「パーソン」という間違った「思考」がそれぞれで間違った戦略をつくり上げてしまっている。「プロダクト」に関しては、ターゲットに対する4Cを考えるということが重要ですよと。「パートナー」では、「誰と」売るかよりも「誰に」売るかを先に決めるということが非常に重要で。「パーソン」は、戦略は俯瞰した立場で考えて、戦術は直面した立場で考えるということが重要なので、この3つをしっかりと今一度見直してみると、必ず自分たちの戦略ってそのどこかに陥ってしまっているので、ぜひね、1回自分たちのこの3つの「思考」を見直してみてください。

それでは今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。