第452回 【本の解説】参入のための正しい4P分析 その2
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この『グローバル・マーケティングの基本』、私が去年、日本実業出版社から出した本ですが、この本について解説をしていきたいと思います。今日も前回に引き続き、138ページ、「3-7 参入のための正しい4P分析」ということでお話をしていきたいと思います。前回、日本の企業が新興国市場でうまくいかない要因というのは4Pにありますよと。こういう4Pは駄目なんですよというお話をしていて。じゃあ、今日は、どういう4Pだったらうまくいくんですかという話が今日なので、今日はその話をしていきたいなというふうに思います。
まず、前回のおさらいをさらっとしたほうがいいのかな。じゃあ、前回のおさらいをすると…。スライドをお願いします。多くのうまくいかない日本企業というのは、日本で実績のある商品をできればさほど変えずにというのがプロダクトであって。新興国なので少しは安くしますよと、日本と同じぐらいの価格で本当は売りたいけども。プレイスは日本で慣れ親しんだ近代小売を中心に。これはB2Cのことを言っているので、もう伝統小売みたいなややこしいのは嫌なんだと。近代小売をやりたいんですと。コンビニ、スーパーでやりたいんですと。できれば実績が出るまでプロモーション投資はしたくないと。ディストリビューターさん主導で頑張ってくださいねと。結果として、ターゲットが中間層ではなくて、本来新興国で最も重要なのは中間層なのに、牌が非常に限られている富裕層になってしまっていると。
そもそも、中間層というターゲット、B2Cだったら中間層というターゲットに設定して、その中間層というターゲットに合わせた4Pをつくらなければいけないのに、もう日本での実績をベースにした出来上がった4Pを展開するので、結果としてのターゲットがくっ付いてくるという、こういう本末転倒的なことになってしまっているというのが問題の要因で。
じゃあ、どういう4Pであればいいんですかというのが2枚目のスライドで。ターゲットがもう絶対的に先なんですね。ターゲットはあとじゃなくて、結果としてついてきたターゲットではなくて、設定するターゲットがあって、そこに4Pを当てていくと、最適化していくと。このターゲットが求める商品というのは何なんですかというのがプロダクトであるべきだし、じゃあ、このターゲットが賄える価格って何なんですか。消費財の場合、1回や2回、どんなに高くたって買えるわけですよ。数十円、数百円のものを売っているわけですから。なので、賄えるということがすごくポイントで、賄えるというのはどういうことかと言うと、日々の生活の中に取り込むということが私の賄えるの定義なので、賄える価格でなければならない。プレイスに関しては、中間層が買いやすい売り場。これは買いやすいって、近代小売だけが彼らにとって買いやすいではなくて、結局、近代小売がいいと、伝統小売はやりたくないというのは、伝統小売は労力も手間もノウハウもかかるからやりたくない、近代小売がいいよというのは、売り手の売りやすい売り場なんですよね。売りやすい売り場ではなくて、買い手が買いやすい売り場に並べる。まだまだASEANでもVIPなんていうのは7割8割伝統小売を通じてモノが流通しているわけですから、必ずこの買いやすいと。中間層にとって、ターゲットにとって買いやすい売り場に並べる必要があるし。あと、このプロモーションも、実績が出たら、売れたらやりますみたいな話ではなくて、選びたくなるような仕掛けをやっぱりしないといけなくて。無名なものはなかなか手に取れないわけですよね。彼らにとって1ドルの価値は、われわれにとってよりも大きいわけなので、失敗ができないと。そうすると、知っているものを買うということになるので、知らないものはいくら棚に置いても手に取らないよというお話になるので、やっぱりATLをいっているのではなくて、BTLを中心に、まずしっかりと仕掛けをするということをやらないといけないと。
もっと言うと、3枚目のスライドをお願いしたいんですが、ターゲットに4Pをぶつけるのではなくて、ターゲットに4Cをぶつけるということをやっていく必要があって。日本企業の場合、もっともっと顧客のことを考える。日本ではこれだけ顧客のことを考えるのに、なぜ海を越えるとそこをある程度ディストリビューターに任せようとするのかと、もしくは目をつむるのかというのが非常に問題で。カスタマーバリューって、顧客価値って何?と、顧客が求める商品を本当に提供できていますか。コストに関しては、顧客費用、コストが賄える価格で本当に提供できていますか。コンビニエンス、顧客が買いやすい方法で、顧客の利便性、本当にできていますか。顧客が選びたくなるような仕掛け、顧客とのコミュニケーションが本当に取れていますか、ということをしっかりと突き詰めていく。これが最適化できているのに、シェアが上がらない、商品が売れない、なんていうことは絶対あり得なくて、必ず問題はこの4Pの中に潜んでいるというのが実際でございます。
私はかつて、うまくいっている企業、うまくいっていない企業、何百社と分解をして見てきましたけども、うまくいっている企業でこの4Pが最適化されていない事例なんていうのは1社もなかったですし、うまくいっていない企業というのは、大概の場合、この4P、4Cに要因があると。ここがいろんなしがらみでなかなか直せないと。問題に気付いていないというケースもあるんですけども、問題に気付いているんだけども、いろんなしがらみで直せないというケースもあって。あと、問題がないと思い込んで、もう深く思い込んでしまっているというケースも、いろんなケースがあるんですけど。いずれにせよ、この4P、4Cに問題があるというのが大半でございます。なので、今一度、この4P、4Cをしっかりと見直すということは、さらなる成長のためには大変有効なんじゃないかなというふうに思います。
それではまた皆さん、次回お会いいたしましょう。