第456回 【本の解説】主要競合他社のチャネル戦略の可視化 その1
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、明けましておめでとうございます。本年度もどうぞよろしくお願いいたします。いよいよ、2023年度がスタートいたしました。今年も、SPYDER CHANNEL頑張ってまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。今年はね、私自身の海外出張も増えると思いますので、現地取材なんかをたくさん入れられたらいいなというふうに思っております。本年度は、新しい本の出版の予定をしておりますので、今ずっと、去年からこの『グローバル・マーケティングの基本』の解説をしてきましたが、これが終わったあとはその新しい本、どれぐらいに出るのかな、ちょっとまだ最後を書いていますのであれですけども、おそらく後半ぐらいには出せると思うので、その解説もまたやっていきたいなというふうに思います。ぜひ引き続き、番組をよろしくお願いいたします。
それでは早速ですけども、『グローバル・マーケティングの基本』、もう昨年ではなくて一昨年度ですね、一昨年度、私が日本実業出版社から出した本ですが、この本の解説、まだ145ページ、3-10でございますので、引き続きやっていきたいと思います。
では、今日は145ページ、「3-10 主要競合他社のチャネル戦略の可視化」ということでお話をしていきたいと思うのですが…。ASEANを中心とした新興国市場でシェアを獲得する上で、どういう戦略で進めていく必要があるのか。特に販売チャネルをどうすべきかということを考えたときに、主要競合の販売チャネルを100とした場合に、自分たちが今、既存で持っている販売チャネルってどれぐらいなんだろうと、パフォーマンスの競争力が、ということに対して、多くの日本企業はあまり考えてこなかったというか、考えていないという現状が多々あって。結局、戦略の大部分に販売チャネルの競争力というものが占めていて、この販売チャネルの競争力が低ければ、日々それがシェアの差として表れていく。なかなかシェアが上がらない、なかなかうまく進んでいかないというのは、多くはこの販売チャネルの競争力がやっぱり弱いということが原因で。じゃあ、どういうふうに弱いの?と、具体的に何をどう直せばいいの?何が足りていて、何が足りていないの?みたいなところを見るときに、やっぱりそのカテゴリー、インダストリーで最もシェアの高い、もしくは先進的に先をいっている企業の販売チャネルがどうなっているのかという、これを理解できると、自分たちの販売チャネルの基準値を掴むことができるんですよね。この基準値がないまま、ただ対昨年比で110%やりましょう、115%チャレンジしましょうみたいな話だと、永遠にこのマーケットシェアの戦いには参加できない状態にあると。なので、主要競合の販売チャネルというのは非常に重要で、今日はその主要競合の販売チャネルのやり方というjか、ポイントについてお話をしていきたいと思います。
では早速、スライドをお願いします。1枚目のスライド。主要競合の販売チャネルの可視化をするときに、何を最初に見る必要があるのかということなのですが、ストラクチャーなんですよね。どういうストラクチャーで主要競合は市場を獲ろうとしているのか。ストラクチャー、これはまさにデザインなんですけど、日本企業は販売チャネルのデザイン力が非常に弱くて、チャネルってデザインしないといけないんですよね。自分たちの商品を求める、B2Cであれば消費者、 B2Bであればユーザーにどういうふうに届けていくのかと、どういう中間流通、ディストリビューターを通じて、1次店、2次店、3次店を通じて、もしくは直販で、届けていけばいいのかという、全体のストラクチャーをデザインするということはすごく重要で、これがすべてなんですよね。このデザインは、変化をしていかないといけない、進化をしていかないといけない。だから、状況に応じて、それを毎年毎年強化をさせていく。一方で、日本企業の場合は、とにかく大手、とにかく大きいところ、良いところ、そこのディストリビューターと契約をしたら、あとはお任せですと。デザインも何もない、基本的には大手と組んであとは任せるみたいな、そういう状態なので、なかなかうまくいかないということが続いていて。
今回はこれはB2Cの消費財のお話ですけども、この図の通り、主要競合の現地法人は、ディストリビューター経由をしているのか、していないのか。どういう小売に対しては直販で、どういう小売に対してはディストリビューター経由なのか、この図を見ると、直販は都市部・地方部含めてMT(近代小売)はもう直販ですと。現地法人があるんだから、完全に直販しますと。一方で、手間のかかるTT、これに関してはディストリビューターを経由しましょうということで、大規模・中規模・小規模、どういうふうに使っているんですかと、エリア毎に分けているんですか、ディストリビューション・ネットワークをどういうふうに組んでいるんですか、2次店どうしているんですか、都市部と地方部どういうふうにしているんですか、みたいなところを見ていくというのが、まさにこのデザインなわけですよね。
これを各社検証しながら、自分たちにとって最適なストラクチャーってどういうものなのかということをさんざんやってきていて、過去、例えば欧米の先進的なグローバル消費財メーカーは、P&Gなんかも、過去ASEANで50~60社あったディストリビューターを、50社ぐらいかな、50社強あったディストリビューターを現在では6社とか8社に集約してきている。たくさん使っていたんだけども集約してきているし、われわれがネスレリーバモデルとかって呼んでいる、ユニリーバとかネスレのディストリビューション・ネットワークも150とか200の小さなディストリビューターを使っているわけなんですけど、それもやっぱり何年かに相当数、数十、下手したら半分ぐらいが入れ替わっているという、そういう状況もあるわけなんですよね。そうやって自分たちのストラクチャー、1回決めたストラクチャーとその中身を、どんどん、どんどん、改善をしていくということで強固な販売チャネルをつくっているんですよね。なので、1回決めたらそれがすべてですみたいな話ではまったくなくて、ディストリビューション・ネットワークであったり、ディストリビューション・チャネルというのは、どんどん、どんどん、進化をしていくというもの。こういうものを、競合を可視化することで理解をして、いかに自分たちの販売チャネルと競合の販売チャネルが違ったのか、シェアが高い企業の販売チャネルってこうなっているんだと、なぜ自分たちの会社はシェアが低いのか、なるほどなということを可視化していかないと、やっぱり自分たちの販売チャネルって改善されないので、主要競合の販売チャネルは非常に重要ですよ、というお話です。
ちょっとまだ続きがあるので、次回またあらためて続きの話をしたいと思います。それでは今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。