第457回 【本の解説】主要競合他社のチャネル戦略の可視化 その2
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この『グローバル・マーケティングの基本』 日本実業出版から私が一昨年前に出した本ですが、この本の解説をしていきたいと思います。では早速、今日も145ページ、「3-10 主要競合他社のチャネル戦略の可視化」ということで、前回の引き続きでその2ということでやっていきたいと思います。前回のお話の中で、主要競合の販売チャネルの可視化ってすごく重要ですよと。なぜならば、チャネル力の差がシェアの差であり、売上の差なんですと。主要競合の競争力ないしはパフォーマンスを100とした場合に、自分たちは一体どれぐらいのパフォーマンスをあげられているんだろうということを明確に基準値として持っていないと、なかなかその差をシェアの差を埋めるということはできない。例えば、主要競合が100の場合に、自分たちは80なの?70なの?はたまた50なんですか? この差を埋めていくということが追い付き追い越せということにつながるので、自分たちの去年の昨対比110%やりましょう、チャレンジ115%やりましょうみたいなことをやっていても、なかなかお話にならなくて。ASEAN新興国市場というのは、言ったら世界中から企業がそこの大きな市場に参入していて、そこでマーケットシェアを争っているわけで、自分の昨年度との戦いではなくて、主要競合といかに戦っていくかということはすごく重要で。そうすると、自分たちのほんとにチャネルの基準値を持っていますか、競合が100の場合に自分たちはどれぐらいなんですか、という質問に明確に答えられる企業というのは非常にすくなくて、これはB2CもB2Bも。なので、主要競合のチャネルを可視化していくということは、自分たちに何が足りていて何が足りていないのか、足りていないものをどういうふうに補ったらいいのかということが明確に見えるので本当に有効な手段です、という話を前回していて。
スライドをお願いします。前回このスライドを使いましたけども、まずはストラクチャーなんですと。ストラクチャーが間違っていたら、何をどうやったって無理ですよというお話をしていて。このデザイン、チャネルをデザインするという力が日本企業は非常に弱くて、どういうターゲットに対して、どういうチャネルであるべきなんだろうということをしっかりデザインする、ストラクチャーを。どこには直販をして、どこにはディストリビューターを経由するのかと、どういう規模のディストリビューターを何社ぐらい使うのか、2次店はどうするんだ、都市部・地方部どうするんだ、こういうことをデザインしていかないといけない。主要競合はそれをどうしているんだろう。多くの先進的な企業、マーケットシェアの高い企業というのは、このデザインが最適化されているんですよね。かつて彼らも、なかなか最適化されていない状態をずっと経験してきて、その中でどんどん、どんどん、チャネルを進化させてきた。例えば、P&Gなんかはかつて50社とかのディストリビューターをASEANでも使っていたんですね、1カ国。なんですけど、それを今では6社とか7社ぐらいに、8社ぐらいかな、に集約をしているし、ユニリーバとかネスレだって150~200のディストリビューターをマイクロ・ディストリビューションしているわけですけども、彼らもディストリビューターを、今でさえ年間何十社と入れ替えていっているわけですよね。離脱していって、また入ってくるディストリビューター。そして、ディストリビューション・ネットワークを常に最適化していて。こういうことをしているから常にシェアを維持できているという状態で。この最初のストラクチャーのデザインがなかなか間違っていますよというお話をしたので、まずこの主要競合と比べてデザインがどうなっているんだろうと。これを見ると、もうたぶん明らかだと思うんですよね。なるほどと、こうやっているから、それは高いシェアが上がるよねということが、主要競合のチャネルを見ると一目瞭然で、「自分たち、なるほど、それはTT伸びないよね」と、「MTに関しても高いマージンだね」という話になっちゃうわけですよね。
次のスライドをお願いしたいんですけど。これがまさにTTとMT、チャネル別の流通構造、マージン率を出しているようなものなのですが、主要競合はどういうディストリビューターを経由して、実際にTraditional Tradeに配荷をしているのか。そのときのマージンってどうなっているんだと。また、MTに関してはどういう配送、自社配送なのか、委託配送なのか、何なのか、セントラル物流にドーンと商品を納品すると彼らが物流をやりますから、各店舗に配荷しますから、その分マージンが高かったりとか、自分たちで各店舗に配荷するとマージンが安かったりとか、いろいろあるんですよね。それは小売によって、国によって違いますけども、その構造がどうなっているのかということを細かく見て、自分たちのそれと比べていくということをすると、「自分たちってもうマージンで割高じゃん。商品がそもそも高いのに、マージンでも割高なんだ」ということが見えてきたりとか。
これなんか…。次のスライドをお願いします。まさに分かりやすいんですけど、メーカーとディストリビューターとリテーラーと、どういうマージン構造になっているんですかと。マークアップいくら乗せているんですかと。ディストリビューターはどれぐらい取れているのか、小売はどれぐらい取っているのか、2次店はどれぐらい取っているのかと。メーカーとしてはどれぐらい、同じメーカーなのでだいたい利益率は分かると思いますけど、特に皆さんが知りたい、知る必要があるというのは、小売流通、中間流通、ディストリビューターのマージン構造がどうなっているのかみたいなところをしっかり見ていく必要があるわけなんですけど。こういうものを「競合がどうなっているんだろう」ということを可視化して、それに対して自分たちの現状を見て、そして、それをどう改善していくのかということを考えていくということが、まさにチャネルの進化なので、こういうことをやっていかないといけない。主要競合、自分たちの営業マンが現場で拾ってくるようなレベルの情報は、主要競合の情報とは言えないので、主要競合をしっかりと可視化して、そのパフォーマンス、競争力の脅威を知り、自分たちには何が足りていて何が足りないのか、この差異を埋めるということが大変重要ですよというお話でございました。
それでは皆さん、今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。