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第472回 【本の解説】日本とは異なるアジア新興国のディストリビューター

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日もこの『グローバル・マーケティングの基本』 日本実業出版社から私が出した本ですが、この解説をしていきたいと思います。

前回の続きで、177ページ、「4-5-2 日本とは異なるアジア新興国のディストリビューター」ということで、この4-5は4-5-1、4-5-2、4-5-3ぐらいの3回ぐらいに分けてお話をしたいなと思っていて。前回は4-5-1として「販売店と代理店の違い」みたいなお話をしているんですよね。今日はいよいよ、この「日本とは異なるアジア新興国のディストリビューター」ということで、ディストリビューターの特徴の話、本来の本題の話に入っていこうかなというふうに思っています。

では、スライドをお願いします。まず、アジアのディストリビューターの特徴なんですけども、これはアジアというか、ASEANですよね、ASEANのディストリビューターの特徴としては、もう華僑が8割ですね。完全なる一族経営で、もう本当にどこへ行っても中国系の華僑系、マレーシアへ行っても華僑系マレーだし、インドネシアへ行っても華僑系インドネシア人、シンガポールなんかも華僑ですよね。タイも華僑系の人たちだし、フィリピンもそうですね、もう8割がそうなんですよね。結局、一族経営なので、ファミリービジネスでだいたい今、2代目、早くて3代目かな…というぐらいで、社歴としても30~40年ぐらいなんですよね。まだ非常に短いと、ASEANのディストリビューター、35年ぐらいですかね、短くて。一族経営で、だいたい今、年齢で言うと、私より一回り若いぐらいの2代目とかがいて、ちょうど私も離れ過ぎてもいない、お父さんとも離れ過ぎてもいないし、息子、娘とも離れ過ぎていないというところで、ちょうど私もいい感じで歳を取ってきたなという印象を持っているんですけど、そんな人たちが多くて。

テクニカルな話だけども、このオーナーの創業オーナーはね、ほぼ引退している感じなんですよね。もう息子や娘に渡しているみたいな状態が多いので、基本的にはオーナー社長を押さえつつも、跡継ぎ息子、跡継ぎ娘としっかりとコミュニケーションを取っていくということはすごく重要で。もうファミリーツリーをしっかりと理解しないと駄目ですよね。ファミリーと言っても親戚のファミリーもいれば、直系のファミリーもいるし、いろいろいるので、どれがどういうふうにオーナーお父さんとの2代目候補なのかということをちゃんと理解をしながら、誰がそれを支えているのか、誰が反対勢力とも言わないけども、ちょっとネガティブなんだみたいなことをね、ファミリーツリーを理解しながら付き合っていくということが非常に重要ですよと。

当然ながら、異文化なので、いろんなことが違う中、しっかりとコミュニケーションを取っていって、決め事は全部契約書に起こすということがすごく重要です。契約書ベースで会話をする。「何となく分かってくれているだろう。まあまあ、言わなくても大丈夫だよね」みたいな話は一切なし。言いにくいとかそういうのはもう、日本だとね、「あまり言いにくいから、契約書にこういうふうに書くのはやめよう」とか、「言わなくても分かっているよね。敢えて言うと、敢えて書くといやらしいし」みたいな、こういう感覚は一切捨てる。「敢えて書くし、敢えて言う」みたいなところを非常に重要視をして。それで嫌われるなんてないので、そんなのは日本だけですから、基本的にはそんなのは考えないと。むしろ、そこをあいまいにしてしまったほうがあとでトラブルになりますよと。向こうもね、必死で日本に合わせています。最近は難しいかな、日本のこのプレゼンスも下がってきてしまったので、日本に合わせてくれていた、完全に合わせてくれていた80年代90年代2000年代ぐらいまではそうでしたけど、2010年代ぐらいから日本がどんどん、どんどん、本当に変な方向にいってしまいましたけど、プレゼンスが下がっていってしまいましたけどもね、まあまあ、ちょっと話が逸れましたけど、しっかり書くと。

あと、ディストリビューターの役割が日本とは異なりますよということで、これは日本だと「言わなくても何でもかんでもやる」ということなんですけど、そうではないよと。また、あとで、あとでと言うか、次の回で説明しますけど、ディストリビューターの機能がそもそも違う。ディストリビューターというのは、セールスをしてデリバリーをするというのがそもそもの機能ではないですか。むしろ、デリバリーよりもセールスでしょうというのが、たぶんディストリビューターの機能としては非常に重要で、日本だとデリバリーなんていうのは佐川やヤマトがやったらいいし、物流会社がやったらいい話なので、基本的にはディストリビューターはセールスだよねと。ただ、ベトナムなんかへ行くと、ディストリビューターというのはデリバリーボーイから始まって派生しているので、デリバリーが主の業務であって、セールス機能を持っていないディストリビューターなんてごまんといるわけですよね。だから、こういう機能も違いますよと。

あと、甘え上手、言い訳上手というか、何て言うのかな、男に二言はありませんみたいな、そういう文化はないので、基本的に言い訳がすごいですよね。これは別に偏見とかではなくて、言い訳ですと。とにかく「為替が悪い」「景気が悪い」「おまえたちが協力しないから悪い」という言い訳、予算、プロモーション費用を出してほしいときだけ甘えてくるというようなのが非常に多いので、そこも非常にあります。認識をしておいたほうがいいですよと。

皆まで言わなくとも分かっているなんていうことはないので、皆まで言わねば伝わらないし、皆まで言っても伝わらないというね。同じことを3回ぐらい言わないと伝わらないし、違うことを3つ言ったら2つ忘れるみたいな、そういうこともあるわけなので、本当にシンプルに管理していかないといけないし、何か定期的にね、何カ月に、半年に1回、1年に1回出張して会っていますみたいな、飯食っていますみたいなね、一緒に同行していますみたいな、こういうレベルだとやっぱりなかなか難しくて、同行と言っても彼らが見せたいところにしか連れて行かれないのでね、メーカーは、本当に見なきゃいけない、本当に課題があるような小売には全然連れて行ってもらえないわけだから、やっぱりそういうレベルのコミュニケーションじゃなくて、もっと密なコミュニケーションを取っていかないといけないし、戦略共有みたいなこととKPIの共有はやっぱり非常にしっかりやらないといけないので、ディストリビューターよりもむしろ市場のことを理解していないと、なかなかちょっと彼らを管理育成していくなんていうのは無理なので。KPIの共有と言ったって、市場に何に問題があって、どうそれをクリアしていけばいいのかみたいなことが分からないわけですよね。だから、やっぱり市場を理解する。任せて、あとは「自分たちはつくるので、あなたたちは売る人ですから任せます」みたいな、そういう世界観だとなかなかちょっと難しいので、ディストリビューター以上に市場を熟知するということが重要かなというふうに思います。管理育成なくしてうまく継続的に売れていくということはないので、しっかりと管理育成をしていかないといけないというのが大変重要ですよというお話でございます。

それでは皆さん、今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。