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第489回 【本の解説】「出ない戦略」を徹底する

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この『グローバル・マーケティングの基本』 日本実業出版社から私が出している本ですが、この本の解説をしていきたいと思います。

今日は、だいぶ来ましたね、223ページ、「5-2 「出ない戦略」を徹底する」ということで。前回からですかね、中堅中小企業向けのお話をしていますと。この番組ではなかなか珍しい中堅中小企業向けの話なんですけど、この本も第5章は中堅中小企業向けの話なので、今日はその中堅中小企業にとっての「出ない戦略」の話をしたいなというふうに思います。

これは何を言っているか、「出ない戦略」って何を言っているかと言うと、海外展開のやり方って大きく分けて2つあって、現地に進出をして法人を構えて展開をするパターンと、日本から輸出で展開をするパターンのこの2つのパターンがあるんですよね。1つは出てやるパターン、1つは出ないでやるパターン。輸出の場合はね、逆に言うとインバウンドと、輸入もこれ、出ないでやるパターンなので、リスクは非常に小さいですよと。

海外展開のリスクって、何がリスクかと言うと、コストなんですよね。リスクは2つあるんですけど、1つが自分たちの固定費のコストが1つ。もう1つは相手からの代金の回収、この2つがあって。基本的に現地に法人を構えるということは、進出をした瞬間から固定費が流れだすと。多くの企業はこの固定費を売上ならびに利益でペイできないから赤字がずっと続いて撤退、最悪の場合は撤退になるわけですよね。撤退のときもまたコストがあると。当面はね、増資増資で日本からの増資を繰り返して踏ん張るんですけども、最終的には最悪の場合は撤退ということになるわけですよね。もう1つの代金回収のリスクというのは、基本的には現地に出ると、当然、日本でもそうですけども、支払いサイトというのがあって、キャッシュ・オン・デリバリーではないわけですよね。モノを販売して、同時にキャッシュを得るというものでもないし、先にキャッシュが入ってくるものでもなくて、最低でも月末締めの翌末払いというふうに与信のリスクが発生すると。

じゃあ、輸出の場合ってどうかと言うと、輸出の場合は基本的には与信に関してはキャッシュ・オン・デリバリーですよね。基本的には入金を確認してから出荷をするというのが、これは輸出の場合は鉄則なので、「モノを先に送って後払いでいいですよ」なんていうのは相当な取引実績がある相手としかやりませんから、基本的にはキャッシュ・オン・デリバリーなので、与信リスクはあまり考える必要はない。もう1つの法人設立した固定費の問題。これも結局、売れば売るだけそれはプラスなので、基本的に固定費って掛からないですよね。日本国内で掛かっている固定費の中でやるわけですから、現地に出て何か特別な費用が掛かるかと言うと掛からない。そう考えると、この「出ない戦略」、いわゆる「輸出でやれ」というふうに言っているわけなんですけども、まず輸出でやるということが非常に重要で。

じゃあ、ずっと出ないでいいじゃないと、出る必要はそもそもないじゃないという話なんですけど、結局大物を狙おうと思うと輸出では苦しいんですよね。例えば、現地のマーケットシェアを2割3割取っていこうって、これを輸出でやるってなかなかもう難しくて。一時期、短期間、一定期間やれたとしても、結局それは淘汰されちゃう。現地でサービス網を整備していたりとか、現地に営業マンがいたりとか、現地で顧客とのコミュニケーションが非常に密接に行われている企業に結局は取られていってしまうので、一時的に2割とか3割のシェアが獲れるというケースは過去にはインダストリーによってはあったんですけど、基本的には出ないと大きなシェアとか大物を獲るということはなかなか難しい。例えばBtoCでもそうですけど、現地の小売は現地に法人がないのに、直接海外の企業から輸入するなんていうのは本当に大手の企業しかありませんから、基本的には現地の法人、なので、「ディストリビューターを通してください」みたいな話になるわけですよね。そうすると、やっぱり大きなマーケットはなかなか狙えなくなるので、基本的には、自分たちがどれぐらいの時間軸でいくらやりたいかによって、「出る」「出ない」というのは決まるわけなんですよね。

中堅中小企業の場合は、100億やりたいんですか、3年で100億やりたいんですかと、いや、国内で100億もないのに、いきなり海外で100億もやらないですよねと。そうすると、じゃあ、いくらなんですか、いつかは数十億やりたいと。でも、取りあえずは今目の前の数億円、これをまず達成したい。であれば、全然輸出で構わないわけですよね。なので、結局、「出る」という選択肢を最初から入れる必要はなくて、まず輸出で数億円やって、それが10億円になったらどうしていこう、検討していこうという、こういうステップを踏んでいくことで十分間に合うので、まずはこの「出ない戦略」ということが非常に重要ですよということを書いている章になります。

輸出で十分戦えますよ、中小企業はね。今うちで見ている、2割ぐらいが中小企業で、うちもクライアントの8割が大企業、2割が中小企業。2割は、中小企業はだいぶハンズオンのサービスを提供していて、われわれ自身がクライアントの一海外事業部として海外のディストリビューターと一緒に現地で販売を行っていますけども、輸出で数十億なんて全然やれますから、基本的には輸出で十分だということで、「出ない戦略」を徹底してくださいという内容でございます。

では、今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。