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第490回 【本の解説】進出する場所で成功確率が変わる

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この『グローバル・マーケティングの基本』 私が日本実業出版社から出している本ですが、この本の解説をしていきたいと思います。

今日は、226ページ、「5-3 進出する場所で成功確率が変わる」ということでお話をしていきます。この番組、第5章、この本の5章は中堅中小企業向けの話なので、今日も中堅中小企業向けの話ですけども。中堅中小企業の海外展開を見ていると、なぜこの国を選んだろうと、「なぜこの国を選びましたか」と社長さんに伺うと、理由があまり明確ではないケースというのが非常に多くて、例えば、自分のところにその国の出身者がいるとか、その国で生産拠点を持っているからとか、そういう理由が非常に多いんですよね。ただ、自分の国…、その国の出身者が自分の国にいるからその国に出るというのもあまりスマートな考え方ではなくて、それってやっぱりその国が出るべき市場として魅力的だからその国に出るほうが先にあるべきで。だったら、その国の人を雇えばいいじゃないかという話なので、たまたま雇った人の国に出ていくなんていうのは有り得ない選択肢なわけですよね。でも、ひどいケースだとそういう企業も中堅中小企業の中にはいましたし。あと、生産拠点がどこどこにあるから、そのマーケット、その国のことをよく知っていると、精通しているんだと、だからその国で売ることを初めにやりましたみたいなね。

なんですけど、結局ステージがあって、ある一定の所得以上に成長しているステージじゃないと、なかなか売っていくというのは難しいわけで。そうすると、生産拠点というのはある程度安い労働力でコストを安くつくっていくということが目的で出ているので、必ずしも生産拠点がね、イコール魅力的なマーケットかと言うとそうではないわけですよね。ある程度成長しないといけないので。そうすると、生産拠点と販売のマーケットって、実は相反する市場で、生産しているところに出るというのはなかなか難しいし。生産拠点として出ているから、その国のことを知っているという考え方もまた、ちょっとこれは理にかなっていなくて。なぜならば、生産拠点として知り得ることと、マーケットとして知らないといけないことというのはまったく違う次元の話なので、これもまた違うよねと。そうすると、やっぱりこの進出する国の順番を間違えているがためになかなか成功しないという国が結構あって、じゃあ、どういう国が成功しやすくて、どういう国が成功しにくいんですかというのは次回の5-4で話すんですけど、今日は、後進国からどうやって国がね、新興国になっていくのか。この過程を理解すると、自分たちの経営資源を見渡したときに、今どのステージの国に出るべきなんだということが分かるので、今日はこの後進国から新興国にどうやって成長していくのかということをちょっと見ていきたいと思います。

スライドをお願いします。まず、このスライドの通り、後進国というのはどうやって新興国になっていくかという話なんですけど、まず最初にね、政府の開発援助、ODAが始まるんですよね。ODAが入って、そのあと外資系企業の誘致政策みたいなのがその国から出される。例えば自分たちの国に来てモノをつくってくださいと、人を用意します、敷地を用意します、箱も用意しますと、皆さん、設備を入れてそこでつくるだけですよ、工員も全部用意しますよということで、税制優遇も用意しますよと、そういう施策をね、中国なんかはずっとそうですよね。ASEANなんかもずっとそれをやってきて、日本企業とか韓国企業というのが、アメリカの企業もいっぱい出て行ったわけですよね。中国なんかはまさにそれで世界の工場になって、それであれだけ裕福になっているわけで、外資企業の誘致政策というのがだいたい始まりますよと。3番目として、政府と民間、だいたい商社とか銀行などが官民インフラ整備プロジェクトみたいのをやって、インフラをどんどん整備していく。そうしないと一般企業は出てこれないので。4番目の民間進出第1号ということで、インフラ事業者などが最初に出ていくんですよね。海外展開するので一番最初に出ていくのってね、インフラ事業者なんですよね。インフラ関係の事業者が最初に出ていって。5番目の民間進出第2陣、これが自動車メーカーなんですよね。だいたい自動車メーカーが入る。自動車メーカーが出ていくと、今度は6番目、民間進出第3陣として家電メーカーなどが出ていって、7番目の第4陣で消費財メーカー、FMCGのメーカーなどが出ていきますよ。そうなってくると、だいたい新興国になっていくという、こういう流れになっているわけですよね。今、ベトナムなんかはまさに民間進出第4陣が出ていて、これからもっと出ていくのかもしれませんけども、新興国になっていっているという、こういう流れなので。

この流れを理解すると、今、このステージだな、あのステージだなということを見ながら自分たちが進出をしていく国を決めていく。結局、成功確率なので、できる限り成功確率の高いところに経営資源を集中させないと。中小企業の場合は、ふんだんに経営資源があるわけでもないし、何回も何回も多額の勉強代だと言って海外で失敗を繰り返すこともできないので、やっぱり確率を上げるということをやっていかないといけないということで、ぜひね、この順番を学んでもらったらなというふうに思います。
皆さん、それでは今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。