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第496回 【本の解説】日本で負けて世界で勝つ

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この『グローバル・マーケティングの基本』 日本実業出版社から私が出している本ですが、この本の解説をしていきたいと思います。

今日が5-8、245ページです。「日本で負けて世界で勝つ」ということで、この5章に関してはこの本の中でも唯一中小企業向けに書いているパートで、「日本で負けて世界で勝つ」ということで何の話をしているんだということですが、その話をちょっとしていきたいなというふうに思います。これは言葉尻だけ取ると、中小企業は日本で負けても海外で勝てるんじゃないかみたいなね、希望観測的な印象を与えてしまうかもしれませんが、決してそうではなくて、中小企業と大企業で何が絶対的に違うのかと言うと、経営資源の量と質が絶対的に違いますよと。そんな中で海外に行くということは、より多くの経営資源を使わないといけないので、基本的には中小企業にとっては不利な市場になってくるんですよね。国内の市場のほうが圧倒的に戦いやすい、難易度が低い。なぜならば、皆さんの事業基盤というのは日本国内にあるわけなので、当然、日本のほうが事業がしやすいと。その日本で、中小企業の場合、まだまだやれることがものすごくたくさんある。それを通りこえて海外というのはなかなか違うよねというのは1つございます。われわれのところにも中小企業からたくさんご相談が来ると。今、大企業の比率が8割、中小企業の比率が2割でご支援をさせていただいているんですが、その中小企業の中では海外で戦略をつくるよりも、まず国内の戦略を見直す、ここをしたほうが圧倒的に事業の収益性であったり、トップラインの拡大というのは容易に済むので、それをまずやってから海外のグローバル戦略、いわゆるアジア新興国市場向けのグローバル戦略を描いていきませんかということで、国内から始めている企業もあるんですよね。国内だと、極端な話、非常に多くの無駄があったりとか、顧客開拓がまだまだできていなかったりとか、そこをやらずしていきなり海外というのは当然順番が違うよねと、本末転倒ですねということなので、そこは誤解なきようにしっかり理解をしていただきたいなと。

ただ、1つだけ、大企業と比べて海外、アジア新興国市場でもあるのは、欧米の市場はね、もういわゆるマーケットもでかいし、過去から、かつてからマーケットも大きいので、基本的にはもう大企業ももう進出しているし、そこの市場ではスタートラインは違うんですけど、こと新興国市場になると、大企業と中小企業ってスタートラインは一緒なんですよね。今これから、じゃあ、走りだしますと。ちょっと前、10年15年ぐらい前から大企業のほうが先に出ていると言っても、生産拠点として出るのと、これはマーケットを獲りにいくために出るのでは全然意味合いが違うし、大企業もそんなに新興国では大したことはできていないので、基本的にはどんぐりの背比べ状態になっている状況があると。大企業の最大の魅力、魅力というかメリットであった経営資源の量と質、これを新興国市場でふんだんに使えていないというのが今の現状なので。そういうことを考えるとね、中小企業の経営資源で比べたら中小企業のほうが圧倒的に負けているんだけど、もう1つ強みとしてあるのがね、中小企業の強みはスピードの速さなんですよね。この1点に限ってくる、極端なことを言うと。トップダウンで社長が決められる、今その瞬間で判断ができるというのは、これは中小企業の非常に良いところで。新興国市場ってそういうことが問われるシーンがたくさんあって、このスピードの速さをうまく「てこ」として使っていけば、仮に国内でマーケットシェアが低くても、新興国を中心とした市場で大きなマーケットが、大きなシェアが獲れれば、新興国市場というのは今後大きくなって、RCEPでも言われているように、アジア経済圏だけで世界全体のGDPの3割、人口世界の3割そこにいて、GDPも3割そこにあるということなので、日本で負けても世界で勝てる可能性が実はあるんですよというお話をしています。

ちょっと図を出してもらうと、この図の通りなんだけども、中小企業の弱点って、何が弱点なのか、経営資源の少なさ、これは質と量なんですけど、人・モノ・金・情報ですよね。これが圧倒的に少ないし、程度が低い、レベルが低いということなので、同じ土俵で戦ったら絶対負けるんですよ。だって、持っている武器が少ないし、古いので。大企業が持っている武器は量もあるし最新の武器ですよと。そうすると、じゃあ、何が中小企業の強みなの?というのはスピードの速さ、それと小回りの利き方、これだけですということになると、パワーゲームをするような市場ではなかなか勝てないよねと。じゃあ、例えば日本で大手がもう市場の大半を握っているようなところを中小企業が今さら何をどうやったって、生産設備に投資する経営資源少なくて、結局ものづくりって生産設備への投資で、そこで大量につくれるほうが安く原料を買えるわけですから、そうするともう絶対追いつかないんですよね。そういう意味では国内では負ける。

でも、一方で新興国、まだ大手がそんなに目を付けていない新興国に先立って投資をする。例えば、そこでね、売上3億にしかならない、5億にしかならないと、当面ね。どんなに頑張っても10億ですと。これ、大手は10億のためにわざわざ出ないですよね、なかなか新興国市場に。仮に出たとしても、持っている経営資源を投下してこない。ふんだんには投下してこない。そうなってくると、中小企業にとって3億5億10億って、別に十分な数字なわけで、そこで彼らが最速で最大限の投資をすれば、まだまだやりようもあるので、そこの誤解がなきように。あまりタイトルだけ見るとね、新興国市場に中小企業が行って勝てるのではないかと。そうじゃないですよと。日本国内のほうが圧倒的に難易度は低いんだと。難易度は低いんだけども、もう1つの物事の考え方としてはそういう考えもありますよということが書いてある項でございます。

それでは今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。