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第497回 【本の解説】「今は海外に出ない」も立派な経営判断

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この『グローバル・マーケティングの基本』 日本実業出版社から私が出している本ですが、この本の解説をしていきたいと思います。

247ページ、「5-9 「今は海外に出ない」ということも立派な経営判断である」ということで、武器を持たずして戦うぐらいなら戦わないほうがマシであるということでね、前回の5-8の「日本で負けて世界で勝つ」みたいな話とはもう真逆の話。前回も少し話したと思うんですけど、中小企業の海外に出ないというのも立派な判断ということで。最近はだいぶ少なくなったと思うんですけど、20年ぐらい前…、20年ぐらい前までかな。20年ぐらい前まではね、出ちゃいけない企業が出ているんですよね。中小企業の海外展開で、この中小企業もまた定義がまちまちで、いや、零細企業でしょうと、中小企業じゃないよねと、零細企業が出て失敗しているというのは結構例として多くて。それは中小企業だというふうに認識しているんだけど、それは中小企業じゃなくて零細企業だと。零細企業の経営資源の少なさとか質の低さで考えたときに、アジア新興国市場に無駄な経営資源を割くぐらいなら、国内の市場に徹底的にフォーカスすべきなんですよね。国内の市場でまだ取りこぼしているところなんてたくさんあるし、やれる改革なんていうのは山ほどあって、それをやらずして、なんか三段跳びして海外みたいなね、これはやっぱり間違っていて。私もたくさんそういう企業の社長さんのご相談を受けて過去きましたけど、全部止めていると。なぜならば、勝てる根拠が見いだせないから、戦略策定の前の段階で。社長さん、怒っちゃうんですけど、怒っちゃうんだけども、でも、出て死期を早めるよりも全然よくて。だって、その中小企業はもし出なければ、その経営資源を国内に投下して、もっと成長できたかもしれないし、もしくはもっと長く生き延びたかもしれないと。国内市場が衰退しているとかってよく言うんですけど、衰退しているんだけども、じゃあ、マーケットシェア何%獲っているんですかと、国内でね。国内で5割のマーケットシェア獲ってて、マーケットが衰退しているんだったら、それはかなり直接的に自分たちの売上とか利益に関係してくるけども、多くの中小企業の場合は、自分たちが持っているマーケットシェアと市場の衰退の度合い、スピードを考えたら、市場が衰退していようが何しようが、自分たちはこれだけのマーケットシェアしか持っていないんだから、まだまだマーケットシェアを上げるほうがよっぽど早くて。あまり衰退の影響を受けていないのに「衰退、衰退」と意識している、そういう企業さんも結構たくさんいて。

われわれ、前回も少しお話ししましたけど、中小企業の中で海外のご相談で来たんだけど、もともと銀行の紹介ですよね、銀行が融資をしている先で「この企業の支援をできませんか」ということで銀行経由で紹介をいただいて、その会社は非常に経営者が素晴らしかったというのもあって、「海外やめましょう。まず国内の立て直し、改革をしましょう」ということで、改革をしまして、それが効果が出て、そこでしっかりと内部留保をつくってから改めて海外に出るという、そんなことをね、中長期で描いて、今、やっていますけどもね。

やっぱりそういう国内での戦い方を変えるだけで、海外やるんですよ、やるんだけども、今は出ないという判断、この章でも書いています。今は出ないということも立派な判断で、本当に流行ったんですよ。10年15年ぐらい前に、海外に拠点を持つことが良いことみたいなね、そういうのはかなり流行って、みんなぼこぼこにやられて帰ってきて、今そういうこともだいぶ減ったんだけども。やっぱりそれは駄目ですよと、今は出ないということも立派な経営判断ですよということ。圧倒的に少ない経営資源で戦う、強みというのはスピードしかない、そう考えると、国内でやりつくす、すべてをやり尽くすということはやっぱり先で、国内をまずやりましょうねということが1つですよと。

もう1つが…。スライドをお願いしようかな、5-9のスライド。この通りで、出ない戦略を徹底しましょう、基本的には出ないよねと。今はやらないということが大前提としてあるんだけども、じゃあ、実際にやったとしても、いきなり拠点をつくるとか、そういうことはやめましょうねと。2番目の攻めやすい国とか都市をしっかり狙っていくと。どこをやるかで圧倒的に勝算が変わってくるんですよ。中小企業の場合は複数の国を同時に叩きにいくということができないわけなので、基本的には国を選ぶ。もっと言うと都市を選ぶと。この都市を落とすんだったらバンコクを落としますみたいなね。バンコクもクアラルンプールもジャカルタもシンガポールもマニラもなんていうことはできないわけで、ホーチミンもハノイもみたいなね。そうするともうバンコクをまずやるみたいな、フォーカスをして選択をするという、選択って戦略そのものですから、それが非常に重要ですよと。3番、狙うべきターゲットを明確にする。「誰に」売るんですかと。「誰と」売るじゃなくて、「誰に」売るのということを徹底的に明確にする、具体的にすると。それが具体的になればなるほど戦略は具体的になりますから、3番の狙うべきターゲットを明確にすると。1番の出ない戦略を徹底するということは、ディストリビューター、これが非常に重要になってくるわけですよね。現地で皆さんに代わって売ってくれる人たち、この選定には労力をかけましょうね、お金を掛けましょうねと。出会いで決めちゃ駄目ですよということが4番ですね。この番組でも散々お話しているかな。5番、ディストリビューターの管理育成なくして継続なしと。ディストリビューターが決まって契約して、あとはお任せでいいかと言うと、そうじゃないよねと。しっかり管理育成していきましょうねと。その管理育成の話もこの番組で散々やりましたけど、こういうことが必要ですよということで、今は出ないということもね、決して中小企業にとっては負けじゃないので、僕は経営資源が整っていない、国内でまだやれることがたくさんある中小企業が海外に闇雲に出るというのはあまりよくないことじゃないかなというふうに思っているので、そこはしっかりと考えていくということを申し上げたくて、最後にこれを書いています。

ただね、「出ないも立派な経営判断」とかって言うとね、海外やらなくていいんだと、やらなくていいんだと勝手に思い込む社長さんも結構多くて、「いや、そうじゃないですよ。いつかは彼らが国内に攻めてきます。攻めてきたときにやられますよ」ということなので、競争はアジア圏の中で、また世界レベルで競争が今後激化して、皆さんの競合は今までは国内企業だけだったかもしれないけども、それがアジアの企業、世界の企業になっていく、そういう流れにどんどん、どんどん、なっていくので、いずれはやっぱりやらないといけないとなると、いち早く国内の市場を攻略するということが先決じゃないかなというふうに思います。

それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。