第501回 【本の解説】Q&A ケース4 現在のディストリビューターでこれ以上シェアを上げられるか悩んでいる
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この『グローバル・マーケティングの基本』 日本実業出版社から私が出している本ですが、この本の解説をしていきたいと思います。今日は257ページ、「ケース4 現在のディストリビューターでこれ以上シェアを上げられるか悩んでいる」ということで、非常に多いですね、この類の問い合わせは。「20年以上お付き合いしているディストリビューターですが、最近本当にそのディストリビューターでこれからさらにシェアを上げていけるのかが不安です。こういった課題に直面している場合、どうすることが適切なのでしょうか」ということで。これは非常にセンシティブな話で、20年付き合っていると、20年以上、20~30年付き合っているところなんて結構あって、これはASEANだと思うんですけどね、ASEANの場合だと今までね、あまり市場として重要視してこなかったので、基本的にはあまり手を掛けてこなかったというのが日本側の、メーカー側の問題、プリンシパル側の問題として大前提としてあって、こういう問題が露呈するまでにね、そういうことを何となく感じている人たちというのは駐在員さんの中とか本部の担当の中にもいろいろあるんですけど、やっぱり4~5年でローテーションされるので、どんどん、どんどん、ローテーションがされていって、過去にいろんな改革をトライした片鱗みたいなものが見えたりするケースが結構多くて、その中でじわじわとディストリビューターに対する不信感が募っていくというケースが非常に多い。ただ、やっぱり日本企業って何かを判断するって、今までA社を使っていたものをいきなりB社にするということはなかなか不得意な企業なので、中途半端な状態がだらだら続くというケースが非常に多いんですけど。
これはやっぱり数字で見るということはすごく重要で、こういう手の話で感情論で物事が進んでいくと、結局、現状から大きく変わるということはなかなか難しいので、判断する人も判断できないんですよね。「このディストリビューターは絶対に駄目なんです。あまり良くないんです」と現場から聞いても、「こういうところが良くないんです。ああいうことが良くないんです」と言っても、それは変えるという大きな判断にまでは至らないので、やっぱりここは数字で見せていくということはすごく重要で、同じ同一インダストリーとかカテゴリーで自分たちのディストリビューターの競争力を診断をするということはすごく重要で。例えば競合のディストリビューターの競争力を100とした場合に、自分たちが今使っているディストリビューターの競争力って70なの?50なの?30なの? そういうふうに見ていくんですよね。競合よりも超えているということはまずないので、そうしたときに、7~8割ぐらいじゃないの?だから20~30頑張れば同じじゃないと、もっと頑張れば超えられるじゃないと、そういう感覚でいるケースは結構多いんですけど、日本企業のこういううまくいかないと言って認識しているディストリビューターを見るとね、あと20~30頑張ればじゃなくて、いやいや、競合が100だったら、皆さんのディストリビューターは20とか30ですよというレベルが本当に非常に多かった、過去。それだけ差が開いていることにも気付けていないというケースが非常に多くて。この競争力を可視化すると、言ったら自己診断をしていくということなわけですけども、それをやっぱりやらないといけない。
うちの僕の代表を務めるマーケティング会社SPYDER INITIATIVEでもそんな調査ばかり、診断ばかりやっていますけど、その診断をやると自分たちには何が足りていて何が足りていないのかということが明確に数値で見えるので、それを並べていかないと駄目なんです。例えばディストリビューターの数とかね、簡単に言うとディストリビューターの数が足りていない。競合はこれだけ使っています、御社はこれしか使っていません。質もそうですよね。ディストリビューターの質も足りていません。あと、組織の体制も脆弱です。それから、その組織が日々行っているデイリー、ウイークリーのアクションにもこれだけの差があります。こういうことを全部開いていくと、非常に明確にその差が数字で分かって、何が足りていないのかが見えてくる。ここを埋めるためには、じゃあ、今のディストリビューターで埋まるんですか、それとも変えなきゃいけないんですか、こういう議論になっていくんですよね。変えるのには当然リスクがあるので、どうやって、じゃあ、それを滑らかにスイッチングしていくのかということも必要になってくるので、とにかく自社の競争力をしっかりと診断をしていく。本当にこのディストリビューターでいいの?と、いいのかな、いいのかな、いいのかなとずっと考えていると、もう10年15年すぐ経ってしまうんですよね。だから、明確に診断をする。この20年見ていても、新興国、中国もそうですけど、ASEANもディストリビューターの序列ってかなり変わってきているんですよね。20年前に1位だったところがそうではなくなっていたりとか、あと1位だった会社の主要メンバーがこっちの3位だった会社に移って、この3位だった会社が1位になっているとか、そういうケースが非常に多く見られるし、財閥系が強いところでも、このカテゴリーに関してはこの財閥系のディストリビューターが非常にこの10年間投資を続けて上位に上がっているとか、こういう違いがあるので、やっぱり最新の診断をしていくということが大変重要かなというふうに思います。
それでは今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。