第512回 海外展開に失敗する企業の3つの思考パターン その1
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。遂に『グローバル・マーケティングの基本』 これが終わって、この解説だいぶ長くやりましたけど、これが終わって、今日から新しい題材ということでお話をしていきたいなというふうに思います。パンデミックも明けて、コロナも終わって、セミナーをする機会も非常に多くなってきて、その中でいろんなお話をしているので、公開のセミナーもあれば、クローズドのセミナーもあって、そういったセミナーを通じてお話をしているような話をこれからしばらくちょっとやっていきたいなというふうに思っています。全部ここでお話することはできないと思うので、少しかいつまんでお話をしていきたいなというふうに思います。
今日はね、思考パターンについてちょっとお話をしていきたいなというふうに思っているんですけど、思考パターンって何の話だよというふうにお思いかもしれませんが、海外展開に失敗をする企業は必ずこれからお話をする3つの思考パターンに当てはまっているケースが多々あるというか、ほぼそういう状態。私が過去20年以上見てきた中でも、ほぼ失敗をする企業というのはこの3つのパターンに当てはまっていて、それを自ら認識していないというケースが非常に多いんですよね。1つに当てはまっているパターンというよりかは、3つのパターン、複数、2個3個ということで当てはまってしまっているケースが非常に多いかなというふうに思っています。
早速スライドを使ってお話をしていきたいんですが。スライド1枚目をお願いします。この図の通り、プロダクト依存型、パートナー依存型、パーソン依存型ということで、この3つの思考パターンに陥っているよと。思考が戦略に与える影響って非常に大きくて、この思考に陥っている企業というのは、この思考をベースに戦略を組み立てるので、戦略が間違ってしまうんですね。日本企業って戦略づくりが下手なんじゃなくて、実は戦略づくりそのものは非常に優れているし、戦略の実行能力も非常に優れているんだけども、そもそも戦略をつくる前提にある思考のパターンが間違った方向を向いて固まってしまっているので、戦略、結果として戦略、つくった戦略が間違ってしまう。そして、それを実行する戦術でいくら頑張っても、戦略とは方向なので、右に行くべきところを左に行けという戦略を描いてしまったら、いくら左の方向で戦術、現場の社員が頑張っても、永遠に右には行けないので結果が出ないということになってしまうんですよね。この思考パターンと言うのは非常に重要で、この思考パターンに失敗する3つの思考パターンをそれぞれ説明をしていきたいなというふうに思います。
まず、最初のプロダクト依存型でございますが、次のスライドをお願いします。このスライドの通り、プロダクト依存型の企業の4Pの思考回路というのは、基本的には日本で実績のある商品を、できればあまり変更せずに、仕様変更等はもう大変なのでそのままやりたいんだよというものを、プライスに関しては、少しは安くするけどできれば日本と同じ価格でやりたいよねと。もしくは手間がかかるからちょっと高めに売りたいなというのもあるかもしれない。そして、プレイスに関しては、日本で慣れ親しんだ近代小売を中心に、これはB2Cの場合は近代小売、これはB2Bだったら日本で慣れ親しんだ日系企業ないしは外資のユーザーを中心に、ローカル企業はお金も出せないし、難題も多いからあんまりというケース。できれば実績が出るまでプロモーションなんかはしたくないよねと。必然的に中間層には売れず、ターゲットが牌の少ない富裕層になると。これはB2Cの話ですよね、中間層とか富裕層。B2Bだったら日系企業にしか売れないとかね、企業、言うと0.何%しかない大企業にしか売れないとか、そういう話になってしまって。
そもそもこの図の最大の間違いは、4Pありきでターゲットが決まっているという話なんですよね。ターゲットというのは、常に4Pの先にないといけない。ターゲットが明確にあって、そこに対して4Pをぶつけていくわけなんだけども、この図を見てもらうと、日本でやってきた4Pありきのまま、その4Pに当てはまるターゲットを選ぶというか、必然的にそうなってしまうということなので、4Pとターゲットの順番が逆になってしまっているんですよね。本来あるべき姿というのは、次のスライドをお願いします。ターゲットがまず明確にあって、そこに対して4Pを当てていくんだけども、4Pも4Cの観点で考えないといけないので、プロダクトじゃなくて顧客価値、顧客が求める商品は何なんですかと。プライスじゃなくて、顧客にとってのコスト、費用は何なんですかと。顧客が賄える価格。プレイスに関しても、顧客の利便性、顧客が買いやすい方法って何なの?近代小売だけじゃないよねという、顧客が買いやすい方法で提供をしないといけない。じゃあ、プロモーション、これも顧客とのコミュニケーションなので、顧客が選びたくなるような仕掛けをしないと駄目でしょうということで、基本的にはターゲットが先にあって、そこに4Pではなくて、4Cの観点をぶつけていくということをやらないといけない。
なんだけども、結局プロダクト依存型の企業というのは、プロダクトがよければということで、また、これを僕は1P戦略というふうに呼んでいるんだけども、1P戦略。プロダクトがプレミアムで、ここがよければ全てよしみたいな感じになってしまうので、ほかの3つのPが置き去りになってしまうんですよね。こういうかたちで進むというケースが非常に強くて。でも、プロダクトがいいのは分かっているので、プロダクトを戦略の中心に置くのはもうやめたほうがよくて。プロダクト、製品の優位性、製品の品質というところの優位性以外の優位性を見い出さないといけないし、品質がいいことは必ずしも優位性にならないケースだって昨今多々あるわけなので、プロダクトをちょっと退けたときにね、一旦どこかに寄せたときに、どれだけの優位性がありますかというところで戦略を組んでいかないと駄目で。プロダクトにすがっていく、なおかつ、このプロダクトにすがるも、市場が求めているプロダクトというよりかは、品質のいいプロダクトにすがる戦略というのは必ず失敗するので、新興国は。だから、ここをやっぱり変えていかないといけないということで、1つ目はプロダクト依存型というお話でございました。
それではまた次回はね、パートナー依存型についてお話をしていきたいと思います。今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回、皆さんお会いいたしましょう。