HOME » 動画番組 スパイダー・チャンネル » 第535回 B2B製造業−獲得すべき顧客カバレッジ

動画番組 スパイダー・チャンネル

第535回 B2B製造業−獲得すべき顧客カバレッジ

新刊はこちら » https://www.amazon.co.jp/dp/449565019X
定期セミナーはこちら » https://spydergrp.com/seminars/

テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、B2B企業の新興国市場における参入戦略、販売チャネル戦略のお話をしていきたいと思います。

前回まで基準値の重要性のお話をしてきました。基準値を持つことが大変重要で、この基準値なくしてなかなかシェアを伸ばしたり、売上を上げたり、競合に勝ち抜くことはできませんよというお話を3回に分けてやったんですかね、やらせていただいて。

今回もその基準値に関連するようなお話で、多くのB2Bの日系企業で現地に、B2Bの場合、輸出でやっていくというところ、もちろんあるんですけど、ある一定のところまでいくと、やっぱり現地法人を持たざるを得ない。なぜならば、B2Bなので、売って終わりじゃないですよね。そのあと、例えばアフターサービス、メンテナンスを含めてやっていかないといけないとなると、ある一定の規模以上に拡大をしていこう、本格的にやっていこうと思うと、当然ながら現地法人が必要になってきて。もちろん現産現販でやるというのがベストなんだけども、その国で必ずしもつくっているというわけではないので、近隣諸国でつくったものを輸入して、現地法人が販売をすると。直販をする場合もあれば、ディストリビューターを通してやる場合もあるという中で、なかなか思ったように売上が上げられない、もしくはシェアが上がっていかないという多くの企業の中に、これからお話をするような、顧客の分類がやっぱり日系で止まってしまっているというケースというのは非常に多くて。これを広げていかないと、なかなか赤字のゾーンから脱出できないという、そういうお話をちょっとしたいなというふうに思うんですが。

図を見てもらうのが速いので、ちょっとこの図をまずはご覧くださいということで…。この図でございます。これね、縦軸が1顧客あたりの販売数で、横軸が顧客のカバレッジ。顧客のカバレッジというのは、一番左の日系顧客から外資系顧客、それからローカル顧客というふうにあって、新興国市場に展開をした場合に、日本のB2Bの製造業にとって一番獲りやすい顧客ってやっぱり日系顧客なんですよね。なぜならば、なんとなく日本で売っているような、日本で買っている、日本でそもそも顧客であるということは前提にあって、日本基準、日本品質を好む傾向があるし、相手は日本人ですと、決定権者は日本人ですと。最近ね、ローカルに権限移譲が進んでいるなんていうのはありますけども、やっぱり重要なところは日本人同士で話ができるメリットがあって。次がやっぱり外資系企業で、当然、欧米の外資の企業。グローバルでね、一括購入しているところもあるんでしょうけど、やはりローカル企業によってはね、B2Bって本当にモノによるので、どういうインダストリーというか、どういうプロダクトかにもよってくるので、皆さんのプロダクトに合わせて考えていただいたらいいと思いますけど。次にやっぱり価格的に日系企業がやりやすいのが欧米を中心とした外資系の企業と。これももちろんグローバルでもお付き合いをしている人。一番やっぱりやりにくいのが、価格がどうしても重要視されてしまうローカル企業にどうやって到達するのかということがなかなか難しくて。

この赤字ゾーン、黒字ゾーンというのはどういうことかと言うと、B2Bの場合、現地法人、輸出でやれば基本的にはキャッシュオンデリバリーなので、輸出すればするほどプラスなわけですよね。マイナスは一切ないですよと。ただ、輸出の不利な部分は、ある一定の水準まで売上がきてしまうと、それ以上はやっぱり現法を出さないと伸びないと。現地に拠点のない会社からモノを買わないよという、そういうステージになるわけですから、シェアがやっぱり何十%とかっていうふうになってくると、絶対に現法を持たないといけない。ちょろちょろ輸出しているようなレベルでやるんだったらば現法は必要ないので、赤字ゾーンというのは存在しないんですが、基本的に現法を出すと固定費が掛かってきますから、赤字ゾーンが必ず出てくるわけですよね。これは工場設備なんかを持ってしまうと確実にそれが増えてくると。そんな中で、赤字ゾーンから黒字ゾーンにグッと突き抜けるには、やっぱり1社あたりの平均販売数ってだいたい決まっているわけですよね。いわゆる大型案件・中型案件・小型案件ってあるように、大型顧客・中型顧客・小型顧客というふうにあったら、だいたい大きい顧客は1社あたりこれぐらい買って、中型がこれぐらい、小型がこれぐらいと、それを大きく上回る特需なんていうのはめったにないので、ある程度、大・中・小の企業規模で、基本的には1社あたりの平均販売数を切っていくと、残念ながら日系企業だけではこのブレークイーブン、緑のちょうど線のところの赤の丸のところですね、ここに到達しないので、どうしても外資系顧客のほうにやっぱり入っていかないといけない。

もっと言うと、ローカルまで入っていかないとプラスにならないよというような商品をつくっているB2Bの製造業だっているわけですよね。例えば大型の超ハイテク設備をつくっているような会社は、世界でプレイヤーが決まっているので、日系と外資の数社にズドーンと納めたら、あとはもうおしまいですというところもいればね、B2Bと言うと、オフィスで使われているようなものをつくっているような会社だってあるわけですから、そうなってくるとやっぱりローカル顧客まで売っていかないとなかなか難しいよということになるので、本当にB2Bって、B2Cと比べて、消費財なんかはもう、いいですよね。コンビニ、スーパー、近代小売、伝統小売にみんなが売りたいって、みんなそこにズドーンとはまるので基本的には一緒なんですけど、B2Bというのは本当にいろいろなもの、ネジから、部品から、完成品から、装置まで、いろんなものがあるので、基本的には皆さんの状況に合わせて解釈をしてもらったらいいと思うんですけど。ただ、こういうことになっていて、ここの、いわゆる顧客カバレッジをどこまで伸ばせればブレークイーブンするのか、もしくはどこまで伸ばせれば自分たちの目標のシェアなり売上なりに到達できるのか、もしくはどこまで伸ばせれば競合に勝てるのかという、この基準値もしっかり持つということが大変重要になってくるので、こういう図を見ながら、自分たちがどこまでの顧客カバレッジを持たなきゃいけないのかということを、また1つ考えてみていただけたらなというふうに思います。

今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。