第538回 B2B製造業−競争力比較から分かること
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、B2B製造業向けのお話をしていきたいと思います。今日はね、競争力比較についてお話をしていきたいなというふうに思っております。日本企業と欧米の先進的なグローバル企業とローカル企業の競争力を比較したときに、どのように競争力が変わってくるのかということについてお話をしていきたいなと思います。もちろんASEAN、グローバルサウスを中心とした新興国市場におけるB2B製造業のマーケティングの観点でのお話になります。では、早速スライドをお願いします。このスライドの通りなんですけども、前回ね、B2Bの製造業の問題のほぼすべては4Pの中にありますよというお話をして、4Pを4Cの観点で考えましょうねということをお話をしました。この4Pとか4C、プロダクト・プライス・プレイス・プロモーション、製品・価格・チャネル・プロモーションを1つの競争力として見たときに、これ、B2Bの場合ね、ネジからいわゆる製造装置まで、いろいろなものがあるので、一概には言えませんが、だいたい大まかに競争力を見ていくと、これ、上に行けば行くほど競争力が高くて、下に行けば下に行くほど競争力が低いということになるので、例えば価格のところが大きくスペースが取られていても、これは価格が高いということではなくて、価格競争力が高いですよということなので、ちょっと間違えないように見ていただいて。
日本企業の競争力の値を100とした場合に、やっぱり先進的なグローバル企業と呼ばれるようなところって、競争力が倍ぐらい違うというのが今の新興国市場の現状かなと。参入している時期も違うので、彼らとしては積み上げたきたノウハウや知見が全然違いますよと。特に中国を始めとしたローカル企業ですよね、アジアの企業、こういった企業も競争力が増してきていて、なんならこれもローテクに行けば行くほどローカル企業の競争力というのは圧倒的に高いので、150とかでは済まない、もう300、400ぐらいの競争力になっている。その競争力を占めている大半が、昔は価格だったんだけども、製品そのものの競争力ももう変わらなくなってきているというのが現状なので、本当にこれは、ローテク、ハイテク、どのインダストリーのどういう商品によって、どれぐらいの比率があるのかというのはもう本当にまちまちなので、一概には言えません。ただ、今回図を使って皆さんに説明する上では、おおよそざっくり100、200、150というふうに競争力を分けて書いているので、そこはもう、皆さんの事業に合わせて考えていただくと。
まず、製品の競争力から見ていきたいんですけど、実は日本企業と先進グローバル企業の競争力、プロダクトにおいての差って、そんなに、じゃあ、大きくあるかって言うと、そんなにない。むしろ、製品の品質とか機能面の高さとかっていうことで言うと、日本企業のほうがもしかしたら高いかもしれない。より小さく、より静かにとかね、より良く、そういう意味では全然日本企業のほうが優れているかもしれない。なので、ここの競争力ってあんまり変わってこなくて。製品の競争力で脅威なのって、やっぱり中国とかローカル企業で、彼らの製品の品質の競争力が圧倒的に上がってきている。ローテクな商品になってきたら、ほぼ変わらないよねと。変わらないのに、日本企業のほうが価格が高くて、「じゃあ、どうやって戦うんですか」と、「いや、そこをなんとか」みたいな、B2Bの製造業って結構まだまだいて。「いや、そこをなんとかって、それは無理あるでしょう。根本的に戦略の見直しをしないと、難しいですよね」「いやいや、そこまで大がかりなことはできないので、そこをなんとか…」という会社は結構いらっしゃって。でも、それはなかなか難しいよねと。
次に価格なんですけど、価格はやっぱり日本企業、そんなに高過ぎないけど、ローカル企業に比べたらやっぱり圧倒的に高いよねと。実は欧米の先進的なグローバル企業の価格のほうがさらに高かったりするので、基本的には価格面での優位性、競争力を高めていくということをやりつつも、その高いという理由付け、「製品の品質が変わらないのに価格だけが高い、これは何なんですか」と、「いや、日本製なので、Japanブランドなので」と言うんだけども。そう考えたときにやっぱりうまいのは、ヨーロッパのB2B企業とか、非常にブランド力を持っている。B2B企業なのにブランド力を持っていて、ここの企業の商品を使っているということが、もうブランドになっている。使う側の誇りになっていたりするわけですよね。それが1つ非常に大きかったりもするので、そこはね、B2Cなんかは特になんですけど、B2Bでもそういう面が多く見られるので、やっぱり日本企業はこれから考えていかないといけない。
もっとも大きく競争力の差が出ているのっていうのは、やっぱりチャネルとプロモーションなんですよね。特にチャネル。チャネルとプロモーションって両輪で、チャネルがないのにプロモーションしたって意味がないので。B2Bのプロモーションって、まさにB2Bマーケティングの領域の話なので、何かCM打って、宣伝打ってとか、そういう話ではなくて、チャネルそのものがプロモーションになっている、顧客とのコミュニケーションになるというケースだってあるわけなんですよね。なので、プロモーションというふうに、4Pで分けると書くわけなんですけど、どちらかと言うと、B2Bマーケティングというふうに言ったほうがよろしいと思います。
それを機能させるためには、やっぱりチャネルの優位性が非常に重要で。日本のB2Bの製造業と、先進グローバル企業、欧米の先進グローバル企業のチャネルを比較した場合に、チャネルの質、ディストリビューターの質と数で全然競争力に差がある。例えば、自社営業の組織の体制、人員の数、質、自社のセールスの体制と質においても非常に大きな差があって、さらにディストリビューター経由の場合でも、そもそも1カ国1代理店制度でやっていますみたいなね。いやいや、どう考えても、これはインダストリー別にディストリビューターを分けるべきでしょうとか、地域別にディストリビューターを分けるべきでしょうとか、企業規模別にディストリビューターを分けるべきだよねと。でないと、物理的にリーチしないのに、なぜここに独占的にすべての権限を与えてしまって、理由なき1カ国1代理店制を貫いているんですかみたいな、そういうケースって非常に多くて。
一方で、欧米の先進的なグローバル企業の販売チャネルって非常に戦略的なので、しっかりと顧客にリーチをするチャネル構造をメーカーが戦略的につくり込んでいる。B2Bの場合はアフターサービスも同時に必要になるケースというのが非常に多々あるので、チャネル=アフターサービスの生命線みたいなところもあるわけですよね。メンテナンスができない会社に売らせることはなかなか難しかったりする商品だというのはあるので。それをすることが顧客とのコミュニケーション、つまりはそのプロモーションの領域の競争力にもつながったりするので、このチャネルを見直す、再構築するというのは本当に日本企業にとっては重要で。
商品を高く売るのは僕は全然構わないと思うと、1円でも高く売ったらいいと思うので。商品の品質や機能に関しては、これは胸の張って自信があると。そうすると、今、日本のB2B製造業に足りないのはチャネルの戦略性で、こんな脆弱なチャネルじゃ勝てないのは当たり前じゃないですか。価格の高い分の付加価値をいかにチャネルに反映させるか。チャネルに反映させることで、イコール、プロモーションの領域、顧客とのコミュニケーションの領域が伸びて、それがその企業が選ばれる、その企業を選ぶことが誇りになるというブランドにつながっていくわけなので。やっぱり個々のチャネルをしっかりと比較して基準値を掴んで。基準値というのは、自分たちのチャネルが100だった場合に、欧米の先進的なグローバル企業は200のチャネル、倍の競争力があったら、日々、今こうしている間も倍の差がついていっていると。一方でローカル企業、決して競合ではなかったローカル企業が、中国をはじめとしたローカル企業が今では競合になってきていて、彼らも、欧米の先進的なグローバル企業のチャネル構築を学んで、非常に戦略的なチャネルを昨今つくり込んできていると。そうなってくると、やっぱり日本の企業のB2Bの製造業のますますのこのシェアの遅れ、競争力の低下みたいなものに繋がっていってしまうので、ぜひこのチャネルをね、競争力を比較して可視化して基準値を掴むということをやっていければなというふうに思います。
今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。