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【本の解説】競争環境の可視化なくして勝利なし

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この『ASEAN6における販売チャネル戦略』 同文舘出版から私が去年出した本ですが、この本の解説をしていきたいと思います。

今日はね、41ページ、「2 競争環境の可視化なくして勝利なし」というところについてお話をしていきたいんですが、ここね、もしかしたらこの本の中で最も重要なパートに入るかもしれないなというふうに思うんですが、ここでお話しているのは基準値のお話なんですよね。長年、日本企業の新興国市場の展開、ASEAN市場の展開を見てきて思うのは、成功している企業と成功していない企業の差って何かって言うと、もう1つしかなくて、自分たちのやろうとしていることに対して基準値を明確に持っているか否かっていう、ここ1点なんですよね。例えば、シェアを2割にまで上げていきたいっていう目標があったときに、2割上げるためには何が必要なのかって、これがまさに基準値で、要は自分たちは、どういう商品が、どういう価格で、ここはある程度あって、特にチャネル周りのプレイスのところですけども、どういう販売チャネルがあって、そこに対してどういうプロモーションをすると2割までいくんだという、この基準値がすごく重要で。チャネルだけを抜き出して考えても、何店舗のストアカバレッジを獲って、1店舗あたり平均どれぐらい売らなければいけないのか、B2C向けに書いている本ですから、例はB2Cの消費財でお話をしますけども、そこがまさに基準値になるんですよね。もう1つの観点で言うと、競合の競争力に対して自分たちはどうなのかっていうことも見ていかないといけない。シェアというのは勝手に上がっていくものではなくて、必ず競争環境の中でシェアというのが存在していて、競合からシェアを1%獲るから自分のシェアが1%上がるということなので、1人よがりでシェアって上がっていかないわけですよね。そうなってくると、競合の競争力を100とした場合に、自分たちの競争力ってどれぐらいなの?と、ここが基準値なんですよね。100なのに、自分たちが80とか70とか50とかっていう競争力しかなかったら、その差分、毎日、毎月、毎年、差が開いていくわけですよね。そうすると、競合に勝つとか、シェアを2割獲るとかっていう目標を掲げても、そもそも競合の競争力に対して自分たちがどうなのかという基準値を持っていなかったら、何をどれぐらい高めたらいいのかが分からない。自分たちには何が足りていて、何が足りていないのかが分からないので、そうすると、とてもじゃないけど競合に打ち勝ったり、シェアを上げていったりということは難しくて、ここがぼんやりしてしまっているというのが実際なんですよね。

じゃあ、なぜ基準値を持てないのかというところのお話をしていくと、やっぱりそれはインプットの少なさだと思うんですよね。うまくいっている企業とうまくいっていない企業、もう明らかに違うのは知識量の差、インプットの差。インプットというのは知識ですよね。調査をして得られた情報、知識をインプットしていくと。その情報や知識に対して、自分たちの経験値であったり、ノウハウで化学反応を頭の中で起こしてアウトプットという戦略を出していくわけですよね。その戦略が少ないインプットでどれだけ頑張って化学反応を起こしても、やっぱりアウトプットってチープになってしまうんですよね。だって、根幹となる情報が入っていないわけですから、基本的には表面的ななめるような情報で自分たちの仮説をつくる。だから、失敗する企業って仮説がほんとに甘い。一方で成功する企業は仮説が非常に現実的。だから、仮説から必ず新興国で事業をするとずれるんですけど、そのずれ方が若干のずれなので、また修正をして、また走って、また修正して…、仮説を修正して走ってということが繰り返しできるんだけども、インプットが少ない企業の仮説って、そもそも非常に程度の低い仮説なので、大きくずれてくるんですよね。大きくずれてくると、修正に時間がかかる、もしくは修正が困難ということになるので、結局、走れなくてそこで立ち止まってしまうということを過去にさんざん見てまいりました。

結局、じゃあ、どういうふうにして情報を収集することが、インプットがなぜ少なくなるのかって、調査をする癖がついてないんですよね。消費者調査とか何とか調査というのはいいんですけど、ここで言っている調査というのはいわゆる競合調査であったり。競合調査も金融機関や証券会社や広告代理店が無料で提供してくれるような競合の情報なんていうのは誰でも手に入るので、そういうレベルのものではなくて、しっかりとしたインタビューをベースにした競合調査であったり、それから産業、流通、こういったことで情報をやっぱりしっかりとインプットしないとアウトプットは出ないし。戦略のアウトプットがチープだと、仮説がチープだと、今度はその戦略や仮説を実行するという、実行することによって成果や結果を出していく、アウトカムを出していく、ここがまた当然低くなるわけなので、僕はもう、すべてはインプットだと思っています。基準値を持つ、勝つための基準値、勝つためには何が必要なのか、自分たちには何が足りていて、何が足りていないのかというこの基準値を持つことが必要。でも、この基準値を持つためには、しっかりと調査をして、ここにしっかりと投資をして、費用をかけて、そして情報を収集して、基準値をつかんでいくということが必要だというふうに思います。

もう1つ、この基準値を持ったり、情報を得たりするというのは、客観的に見るというのも1つ忘れてはいけなくて、自分たちだけでこれをやっていくと、当然ながら客観性に欠けてしまうので、いかに客観的に物事を捉えられるかというのも1つ重要なポイントになってきます。そんなことを書いているのが、この41ぺージのところ。

次回、具体的に、じゃあ、競合からどういう情報を収集するのかということについてお話をしていきたいと思います。それでは皆さんこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。