新興国市場とイノベーション その4
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、新興国市場とイノベーションということでお話をしていきたいなというふうに思いますが、今日で4回目、最後にしたいなというふうに思います。ちょっとね、1回目から振り返りをしていくと、1回目はイノベーションの定義の整理をしたんですよね。イノベーションは決して技術革新だけではないですよと、新結合というのがイノベーションの本来の意味で、イノベーションの5分類のお話とか、ディスラプティブ・イノベーションのお話とか、あと、イノベーションのジレンマのお話なんかをしました。定義の整理が終わったタイミングで2回3回は、B2C、B2B問わずイノベーション、新興国市場でイノベーション、結果としてイノベーションを起こした企業の事例の紹介みたいなことをさせていただいて、簡単に事例紹介。どういうところにイノベーションのポイントがあったのかみたいなことをちょっとお話させてもらって。今日、4回目は、これからのイノベーションを考えるということでちょっとお話をしていくと、これからね、われわれ日本企業が新興国市場で成功していくためにどんなイノベーションが求められていて、イノベーションをどういうふうに考えていけばいいのかということをちょっと皆さんと一緒に考えていけたらなと。僕も結論があるわけではないので、ちょっとスライドを見ながら考えていきたいなというふうに思います。
じゃあ、スライドをお願いします。これは一橋大学の名誉教授の米倉誠一郎先生の受け売りなんですけどね、米倉先生は、「イノベーションは手段であって目的ではないですよ」ということをすごく授業でおっしゃっているんですよね、いつもね。まさにそうだよなというふうに思うんですよ、僕もね。「何のためにイノベーションが必要なの?」って、目的を達成させるためのイノベーションなので、少し日本企業はイノベーションね、特に大企業なんかは、「イノベーションを生まなきゃ、イノベーションを生まなきゃ」って、イノベーションを生むことが目的になっているような傾向が見受けられるので、「イノベーションは手段であって目的ではないですよ」ということを1つあらためて言っておきたいなというふうに思います。
2つ目ね、これも米倉誠一郎先生がすごくよく授業でおっしゃっているんだけども。僕はなぜ米倉先生の話をこんなにするかと言うと、彼の助手をね、法政大学の大学院で5年か6年かやっていたのである程度のイノベーションの理解はあるのかなというふうに思うんですが。その米倉誠一郎先生が「イノベーションって計画できないよね」っていうことをすごくおっしゃっていて。起こそうと思って起こせるものではないんですよと。例えばAmazonもUberも「イノベーション起こすぞ!」と言って起こしたのではなくて、誰かが今まで実現したことないようなことを、ものすごい大きなことを実現してね、それを学者や何やらがあとで振り返ってみたら「あれはイノベーションだったね」っていうのがイノベーションであって、イノベーションは計画できないし、イノベーションは起こそうと思って起こせないし、イノベーションは目的ではないので、あまり「イノベーション、イノベーション、イノベーション」って言うのはね、僕はどうかなと思うんですよね。新興国市場で高いシェアを獲ったネスレとかユニリーバとかシャオミーもそうだしね、タタもそうだしね、シーメンスもABBもGEもキャットもね、こういう企業って別にイノベーションを起こそうと思ってやったのではなくて、結果としてそれがイノベーションになったということで。
じゃあ、「どうしていくとイノベーションが起きやすいの?」ということなんだけども、次のスライドをお願いします。これも米倉先生から教えてもらったんですけどね、やっぱり日本って30年間のグループシンクにものすごく引っ張られていて、ここと決別しないといけない。グループシンクというのは集団内での合意形成を重視し過ぎるので、個々のメンバーの独自の意見とか批判的思考がコントロールされてしまって、結果として非合理な決定とか誤った判断に至るというね。まさにその通りで、ダイバーシティなんですよね、イノベーションってね。結局、「いやいや、そうは言っても」みたいなことが必ず起きるわけですよね。伝統小売をすごくフラットにね、合理的に考えたときに、ユニリーバやネスレがね、この国でシェアを獲るには、人口は確かに多い。でも、1人あたりが出せるお金は少ないと。でも、これは伝統小売を制覇したらシェア上がるじゃないと。確かにそうなんだけど、伝統小売って大変じゃんみたいなね。もしくは、やっぱり伝統小売ってそのうち近代化するんだから、近代化するまで待ったほうがいいんじゃないかって、これが日本の消費財メーカーがずっとしてきた議論なんですよね、今まで。でも、こうして蓋を開けてみると、「伝統小売、えっ、近代化しないじゃん」と、「デジタル化によって伝統小売ってさらに進化してしまうじゃん」みたいな、「もしかして僕たち出遅れた?」みたいな話になっているわけで。やっぱりそのときに、みんなが行くね、人と変わったことを受け入れていくっていう、人がまったく想像しないところの延長線上の先におそらくたぶんイノベーションってあって、この目的を達成する、その方法を考えるときに、今ある選択肢の中から方法を考えるのではなくて、まったく別次元のね、今の常識にとらわれない世界から合理的にそれを考えていくっていうことがすごく僕は重要なんだなと。その後ろにきっとイノベーションがあるので。一言で言うと、今の常識にとらわれない発想が、きっとその先にイノベーションがあるんじゃないかなというふうに思います。
新興国市場とイノベーション、今日で終わりにしたいなというふうに思います。今日はこれで終わります。また次回お会いいたしましょう。