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第91回 海外販売 − メーカーが行うべき3つのこと

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皆さん、こんにちは。スパイダーの森辺です。今日は、日本の消費財メーカーがアジア新興国市場を攻略する際に行うべき三つのことについてお話をします。今回のお話も、前回の引き続きになります。より分かりやすくお話をしたいと思います。この三つのことが、日本の消費財メーカーが現地で高いマーケットシェアを獲得するために必要なことであって、この三つが狂ってしまうから全ての戦略が狂っていくという悪循環を生んでいる。今日はこの三つのことについて、一緒に学んでいきましょう。
まず最初に申し上げたいのは、海外に展開をしていく際に、さまざまなことをクリアして、さまざまな課題がそこには存在をしている、それは十分理解はしているんですが、現地で売り上げあげて、高いマーケットシェアを獲得していくためには、やはり重要視しなければならないことを、もう少しシンプルに見ていく必要がある。消費財メーカーが向こうで勝ち抜くために重要なのは、結論から申し上げるとこの三つです。
一つは商品開発、もう一つがチャネル構築、そして三つ目がプロモーション投資。この三つをしっかりやっていかないと、マーケットシェアは絶対に上がらない。例えば商品開発なんだけども、これ別に日本の1億2000万人に合った商品を開発してくれと言ってるんじゃなくて、アジア新興国の現地の中間層が求めている商品を、現地の中間層が買える価格で開発をしなさい、ということを申し上げていて、決して私、安いものを売れと言ってるわけではない。高いものが売れるんだったら、いっぱいいっぱい高いほうがいいに決まってます。ただ現地の人たちが求めているものと、現地の人たちの手の届く価格というのはやっぱり存在して、それは日本の消費者が求めているものとは全く違う。ここまでの品質や機能は要りません、というものは多くある。われわれの常識で、日本で生まれ育ってきた常識で考えると、どうしてもいいものができあがってしまう。いいものはいいものでいいんです。このまま売れるんだったら一番いいけど、やっぱりいいものをつくってしまうと、一方で価格が上がってしまう。この価格が非常に重要で、これが下げられないんだったら、品質を調整するしかない。もしくはサシェットのような、小分け売りというのはASEAN、新興国では非常に一般的ですけど、薬を1錠から売るとか。こういうふうにグラムや量を減らすことによって、品質はそのままであると。ただ入り数やグラムを減らすことによって価格を変えていく、というのも一つだし、そういうことも含めて商品開発をしなきゃいけない。これがマーケティングミックスでいうと、プロダクトとプライスになるわけです。現地の中間層が求めるプロダクトと、現地の中間層が買いやすいプライスにしていく、ということを含めて商品開発。決して安いもの、品質の悪いものを新興国向けにつくれと言ってるのではないです。いろんな工夫をすることで、商品開発をすることでそれを実現しないと、日本の消費者とは違いますよ、というのが一つ。
二つ目のチャネル構築というのは、三つ目のPになるんですがプレイスですよね。結局中間層の人たちが買いやすい場所にそれを並べなければ、せっかくいいものを商品開発しても、全く意味がない。アジア新興国の主たる小売りは伝統小売りなんです。確かに小売りの近代化は進んでいるものの、いまだにベトナムですら50万店の伝統小売りが、フィリピン80万店、インドネシア300万店、それに対してベトナムなんていうのは、1300店舗しか近代小売りは存在しない。インドネシアが一番多いんですが、そこで3万店ぐらい。そうすると伝統小売りの時代が、まだまだ数十年続くと。伝統小売りで慣れ親しんだものを、小売りが近代化されても消費者は買うので、その数十万の伝統小売り、最低限並べないと大きなシェアは叩き出せないので、それを実現するためのチャネル構築なわけですね。ディストリビューション・ネットワークをつくらないといけない。1カ国1ディストリビューターなんかでやってたら、数万店、数十万店に並ばない。そのチャネル構築の投資をしなさいと。ここはすごく時間がかかる。欧米のグローバル消費財メーカー、P&G、ネスレ、ユニリーバは、それに10年、15年、20年かけてきた。ここに投資をするというのが一つ。
最後は、並んだものというのは当然競合の商品と売り場で争うわけですね。そうするといかに競合の商品よりも多く取ってもらうか。5回に3回選んでもらう。いわゆる選ばれる仕掛けをしていかないといけない。それがプロモーションであって、プロモーションしないもので売れるものなんて、めったにないわけです。そうするといかに競合と同じようなカテゴリーで並ばれるわけです。ガムはガム売り場に置かれる。菓子は菓子売り場に置かれる。そうすると競合の商品と横並びになる。そのときに、いかに競合の商品ではなくて自社の商品を選んでもらうか。これがプロモーションの投資であり、BTL、ATLの仕掛けなわけです。これが四つ目のP、プロモーションです。
この三つが4Pにつながっていて、メーカーがやるべきはこの三つです。商品開発は長くても数年です。10年かける商品開発なんてめったにないでしょうから、長くても数年。早く取り組まないと難しいですよ。ただグラム数を変える、入り数を変えるというような開発はすぐできるわけで、あくまで現地の中間層のことを考えて、日本人が何を求めてきたか、求めているかじゃなくて、現在の現地の中間層が何を求めているかで考える。チャネル構築は時間がかかります。すごく時間がかかる。いまさら自力でやっても、どんどんどんどん今この説明を聞いている現時点でも、欧米の先進グローバル消費財メーカーとは、このチャネル力の差が開いていってる。ここに関しては、すぐにわれわれのような専門家を使って構築をしていく、ということをしたほうがいいと思います。プロモーションの投資に関しては、現地にもプロモーションの専門会社というのは既にたくさんいるので、そういったところを使っていくということになるのではないかと思います。
それでは皆さん、また次回お会いしましょう。