第165回 海外ビジネス 革新的な戦略はインプットが基本
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、「革新的な戦略はインプットが基本」であるということについて、お話をしたいと思います。こういう仕事をしていると、どうやって戦略をつくるんですかとか、どうやったら革新的な戦略を生み出せますかという質問を非常に多く受けるんですが。もうこれは当然なんですが、革新的な戦略を生み出すために最低限必要なのは情報なんですよね。なぜその高度な戦略が生み出せるのか、なぜ人よりいい戦略が生めるのか、なぜ革新的な戦略が生み出せるのかって、これ、最低限、やっぱり人より多くの粒度の細かい情報を持っているから革新的な戦略というのは生み出されていて、全くインプットという情報がないのに、戦略ってアウトプットなんですよね、情報ってインプットで、このインプットが少なければ少ないほど、生み出されるアウトプットって非常にチープなものになってしまう。多くの日本企業はこのインプットがあまりにも少なすぎて、戦略が非常にこのチープで今までアジア新興国市場、海外展開を進めてきた。
一方で、じゃあ、何が長けていたかと言うと、製品や商品が長けていたのでそれでも何とかなったという時代が確かにあった。製品がよければ戦略なんて。なぜならば、日本企業しかつくれない、日本企業の製品が他国に比べて圧倒的に優れていたので、結局、買い手側、流通側やユーザー側、小売側、消費者側がそれを求めたという時代があったと、「Japan as No.1」と言われたような時代ですよね。従って、それ以外のことというのは、むしろ、製造業側じゃなくて、その先側でつくられていっちゃった、だから、いいものさえつくれば売れるんだという時代が確かにあったんですよね。
ただ、今、じゃあ、世界を見渡したときに、中国企業でも台湾企業でも韓国企業でもアジアの企業でもつくれるような時代になってしまったときには、もう戦略がないと、なかなか売れなくなってしまった。日本の製品が、昔、かつてより、かつてほどの、いわゆる競争優位性を製品だけでは出しにくくなってしまったというのが今の時代で、中国や韓国や台湾の製品のほうが安いし、機能も品質もそんなに変わらないじゃないかということになってしまった。そうなってくると、革新的な戦略を生むためには、情報収集をして、分からないことを可視化をして、インプットを増やして、その中で戦略をアウトプットしていくということが重要になってくるというのが今の時代で。考えてみたら、そうですよね。だって、インプットが少ない人が、いいアプトプットを出せるかと言うと全然違うし、もちろん、じゃあ、インプットをいっぱい入れれば素晴らしいアプトプットが出るのかって、インプット=アウトプットなのかって言うと、それも違うと。この入ってきたインプットを知識と経験、この図にはないですけども、センスというものがそこにはしっかり入ります。その3つを付け加えて、革新的な戦略というのはアウトプットされるわけなので、必ずしもインプットを増やせば=いいアウトプットになるかと言うと、そうじゃない。但し、間違いなく言えることは、最低限インプットがないと、どれだけ知識と経験とセンスを組み入れても、インプットがそもそも少ないので、なかなか革新的なアプトプットというのは生み出しきれない。
じゃあ、どういうインプットを入れたらいいのかということなんですが、私はこの1~5を市場環境の可視化、いわゆるマクロ経済にまつわるファンダメンタルズに関係するような、いわゆるマクロの情報をしっかり可視化していく。どういう市場で、どういう人口動態で、どういう経済規模で、都市別にどうなっていて、また、レギュレーションなんかもこの市場環境に入りますね、外資規制が非常に多い国なので、海外に行くと、外資規制というものが存在するので、どういう規制があるのかないのかということを見ていったりするのが市場環境。簡単に言うと、「その出ようとしている国が儲かる市場なんですか、どうなんですか」「じゃあ、儲かるんだったら、具体的にどれぐらい儲かるんですか」ということが数字で出せる、そういう情報をマクロ、僕は、市場環境というふうに言っていて、それの可視化をする。2つ目が競争環境の可視化。これは、じゃあ、それだけ旨みのある市場なのであれば、世界中の競合がもちろん参入をしているし、日本企業の場合、アジア新興国は、もう出遅れた、出遅れているという現実があるので、自分たちよりも先に出ている先駆者が必ずいるんですよね。その先駆者をベンチマークすることで、自分たちがどうするべきか、どういう戦略をとるべきかということが見えてくるので、この競争環境の可視化というのは、僕は、この1~5まである中で最も重要な、革新的な戦略をつくるうえで最も重要な可視化だと僕は思っているので、この競争環境の可視化をする。次に、流通環境の可視化、この流通環境の可視化なんですけど、特にB2Cは、先進国と新興国では流通の環境が全く違います。例えば、分かりやすく言うと、近代小売だけじゃなくて、伝統小売が存在をしていたり、昨今ではインターネットの流通が介在していたり、非常にめまぐるしく変わっているので、こういう流通環境を調べる。あと、4番の消費者の可視化。B2Cだったら消費者の可視化ですけど、B2Bのような製造業の場合はユーザーの可視化ですよね、こういったものをやっていって。また、5番、これも非常に重要ですけど、ディストリビューターの可視化。いわゆる大きな装置とか設備なんかは直販をすることもあるんでしょうけど、多くのものがディストリビューション・チャネルをつくって、ディストリビューション・ネットワークをつくって、ディストリビューターを経由して、消費者に対して、もしくはユーザーに対して販売がされていくという前提があるのであれば、このディストリビューターの可視化ということもしていかないといけない。こういうインプットが入って、そこに知識と経験を組み合わせて、センスを混ぜ込んで、初めて革新的な戦略というアウトプットがなされるわけで、このインプットの少ない人は絶対に高いアウトプットなんて生めないし、競争環境の可視化を実はやっていくと、市場環境も、流通環境も、消費者・ユーザーの可視化も、ディストリビューターの可視化もある程度できたりするんですよね。なぜならば、競合が、自分の競合がある程度過去どういうことをやって失敗してきたのか、どういうことをやって失敗してきたのか、どういうことをやって成功してきたのか、そのうえで今、何をやってきているのかということが分かるので、それを可視化すると、それをベストプラクティスとして自分たちの最初の戦略にしてしまうことができるので、僕はこの競争環境の可視化というのを非常に重要視をしています。
ペラペラといろいろ話しましたが、重要なのはインプットを増やすということで、インプットがないとアウトプットは絶対に出ないし、もちろん、インプット=アウトプットじゃないし、そこには知識と経験とセンスを織り交ぜる必要があるんだけども、ここの知識と経験とセンスというのはすぐに備わるものではないので、外部の専門家の力を借りる、コンサルタントの力を借りるということをやるわけなんですけども、最低限情報がないと、この外部の力を借りるときも、いいように使われてしまったり、外部の力を100%使いきれない、専門家の力、コンサルタントの力を100%使いきれなくなってしまったり、あと、こういった専門家やコンサルタントに逆に無駄な提案をされてしまうということにもなりかねないので。とにかく皆さんがやるべきは、調査をして情報を収集すると、そして、可視化をするということが非常に重要だと思います。それが革新的な戦略を生む最短だと思います。なので、皆さん、大変いい商品や製品をいっぱい持っているので、ぜひこれからは可視化・調査に時間・労力を割くということをしてみてください。もちろん、自分たちでできる調査と、これ、もう、餅は餅屋でわれわれのような専門家に依頼をしないとできない調査というのは当然あるんですが、それをしっかり切り分けて、あんまりできない調査にダラダラと時間をかけても、時間もお金も労力も無駄になるので、しっかりと切り分けて調査をするということに気を付けてみてください。
それでは、今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。